日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月16日の放送は「ボクらの丁稚物語 2023 後編 ~ふたりぼっち 夢の行方~」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。
しかし秋山木工では、高級ブランドショップやホテルなどに納品される一点ものの高級家具を作る技術を丁稚生活で身につけることができる。ただ、その過酷さから丁稚のほとんどが途中で脱落してしまい、2022年春に至っては新人の丁稚すら来ない状況だ。
現在の丁稚は、17年に秋山木工に入社した2名のみ。名門・京都大学に入ったものの学校に通えなくなり中退した、実家が家具製造会社の内藤と、京都で8代続く造園会社の跡取りの加藤だ。加藤の場合、木工は異業種なのだが、跡取りとして造園会社で職人たちをまとめるリーダーシップとマネジメント力を学びたく秋山木工入りしたという。
2人は丁稚6年目。本来1年の見習い期間を含め5年で丁稚を修了し、そこからは2年間の秋山木工への「お礼奉公」期間になるはずなのだが、技術力がまだ足りず、それでいて積極的な姿勢がどうにも見えない2人の態度に、修了は早いと秋山社長から「待った」がかかった形だ。
一方で、秋山社長はあまりに離脱者が多い丁稚制度の改革も進める。内藤と加藤の兄弟子にあたり、技能五輪でメダルも獲得した職人・佐藤を教育係に据え、いきなり出先で仕事をさせるのではなく、半年間の教育期間を設けることにした。
そのような中で、内藤と加藤の「丁稚卒業」がほぼ1年遅れの23年2月に決まる。修了式当日、スーツ姿の内藤と加藤は堂々たるスピーチを行い、丁稚から職人となった証の法被に袖を通す。なお番組の最後、23年春には4名の新人丁稚があいさつする様子が伝えられており、その中には前編で中学校を卒業したら秋山木工に入る、と話していた松下の姿もあった。
前編はこちらから
https://www.cyzowoman.com/2023/04/post_428829_1.html
『ザ・ノンフィクション』どうにも頼りない6年目の2人
丁稚修行中の内藤、加藤はともに硬い表情、低めのテンション、少ない口数で、それは「寡黙な職人気質」というよりは、コミュニケーションがとにかく苦手という雰囲気だった。
加藤の調子の悪いカンナの刀を、年下の先輩職人が調整してくれているとき、加藤は先輩の周りをただうろうろしており、 謝罪やお礼を伝えている様子は放送されていなかった。手持ち無沙汰なら先輩がカンナを調整する手元を観察すればいいのにと、見ているこっちがやきもきしてしまう。
過去の秋山木工シリーズから見ても2人はどうもこんな感じで、秋山社長や先輩職人たちから指導を受けても、暖簾に腕押しな様子。2人に悪意があり、ふてくされてわざと消極的な態度を取っているのではないことも見ていてわかるだけに、これは指導する側は大変だろう。
『ザ・ノンフィクション』そんな2人も、丁稚修了式では……
そんな頼りない丁稚の2人だったが、丁稚生活最後となる22年12月に開かれた秋山木工の木工展で、内藤は訪ねてきた加藤の父に「いつもお世話になっています。加藤くんなくしては僕は生活できないんで……」と話し、「大人」な応対をしていて驚いた。そして、木工展を訪れた客にも、マスクをしていても笑顔なのがわかるくらい、にこやかに接していた。
その後の秋山木工の修了式で、蝶ネクタイをつけた内藤は、背筋をピンと伸ばして、はつらつと晴れやかな顔でスピーチ。大学不登校と丁稚生活で暗くなっただけで、もともとは明るい性格だったのか、それとも何かブレイクスルーにつながるような大きな出来事があったのか、人が入れ替わったのではと思うほどの変貌を遂げていた。
一方、加藤の雰囲気はそのままだったが、それまで、阪神タイガースを語るとき以外は感情を出すことがほぼなかった加藤が、修了式でこれまで支えてくれた周囲や家族への思いをまっすぐ伝えるスピーチは感動的で、寡黙な人が絞り出す言葉ならではの重みがあった。
2人は頼りないまま修了するのだろうと思っていたので、修了式で見せた力強さにいい意味で裏切られた。おそらく今後も『ザ・ノンフィクション』で秋山木工シリーズは続いていき、その際は松下など新人丁稚がフォーカスされるのだろうが、その時にちらっとさりげなく出てくるであろう、お礼奉公をしている内藤、加藤を見るのが今からとても楽しみだ。