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  • 土. 7月 27th, 2024

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岡田准一に「かわいい」と言えない――男性ジャニーズファンの苦脳を研究者に聞いた

ジェンダーや人権をテーマに取材をするライター・雪代すみれさんが、アイドルに関する“モヤモヤ”を専門家にぶつける連載「アイドルオタクのモヤモヤ」。今回のテーマは、「男性ジャニーズファンの苦悩」についてです。

 ファンの大多数が女性であるジャニーズアイドル。珍しい存在である男性のジャニーズファンは、コンサートでアイドルから積極的にファンサをもらえることもしばしば。そんな男性アイドルファンをうらやましがったり、男性ファンをありがたがるアイドルにモヤモヤするという女性ファンも少なくない。一方で、男性が男性を推すということは、時に偏見の目を向けられることもあるという。

 そこで今回、自身もジャニーズファンで、男性ジャニーズファンの研究をしている東京工業大学大学院博士後期課程の小埜功貴さんに、「男性が男性を推すこと」で生じる苦労について話を聞いた。

ジャニーズアイドルが、男性ファンにファンサをする心理とは?

――ジャニーズファンは大多数が女性です。それもあってか、コンサートでは、少数である男性ファンがファンサをもらいやすいという話を聞くこともあるのですが、女性ジャニーズファンの中には、「ファンサを多くもらえてズルい、うらやましい」と感じる人もいます。男性ファンに対し、積極的にファンサを送るアイドルの心理について、どう思われますか。

小埜功貴さん(以下、小埜) ジャニーズアイドルが男性ファンを喜ぶことは、ジャニーズ自体が女性をメインターゲットとしている中で、男性からも評価を得ていることや、同性として共通項のある人から好かれていることが「うれしい」といったシンプルな理由からではないでしょうか。

 確かに、女性だらけのコンサート会場で男性の存在は、身長や服装の違いもあってビジュアル的に目立つので、ファンサをもらえることもありますが、男性ファンならではの苦労もあるのが現実です。

岡田准一に「かわいい」と伝えることにハードルがある

――男性ファンの苦労もあるんですね。そもそも、小埜さんはどのようなことがきっかけでジャニーズファンになったのでしょうか。

小埜 幼少期に、録画していた『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)をよく見ていたことが始まりです。コントも料理もパフォーマンスもできるSMAPを「かっこよくて面白いお兄さんたち」と感じ、好きになりました。特に香取慎吾くんが好きで、小学4年生のときから、彼の金髪に憧れていて、大学院に入ってバイトなどの髪色の制約がなくなってからは、ずっと金髪にしています。

 KinKi KidsやV6も好きだったのですが、小3の頃からパソコンを使い始め、そこで初めて、これらのグループには「ジャニーズ事務所」という共通点があることを知りました。

――小埜さんの周囲にいる男性ジャニーズファンはいかがでしょうか。

小埜 プライベートでは、男性ジャニーズファンに出会ったことがないのですが、研究としてインタビューした人たちは、お母さんやお姉さん、もしくは仲の良い女友達から影響を受けている人が多いですね。また、SixTONESファンの中には、偶然、ある曲のピアノ演奏に惹かれて調べたら、SixTONESというジャニーズグループの曲だと知り、YouTubeなどで彼らの映像を見るうちにハマったという男性もいました。

――SixTONESはワイルド・青春感といったことも売りにしていて、男性ファンも多いイメージがあります。一方で、なにわ男子のような、キラキラした王道アイドルが好きな男性もいますよね。

小埜 確かに男性ファンがつきやすいグループはいると思うのですが、アイドルのキラキラ感といった、いわゆる「男らしさ」に当てはまらない「かわいい側面」に惹かれるという男性ファンもいます。アイドルが見せる、「男らしさ」から外れつつも魅力的であるという姿は、男性ファンに「“男らしく”しなくてもいいんだ」と自己肯定感をもたらす効果もあります。

 例えば、V6の岡田准一くんを推している40代の人は「映画ではたくましくかっこいい姿を見せるけれども、グループでは末っ子扱いされているところがかわいい」と話していました。ただ、それをストレートに表現することは、周りの男性の友人からはばかられそうなので、「この曲は有名な人が作曲していて」「カッティングの技術が良くて」など、楽曲の技術面からメンバーへの愛を語るようにしているそうです。

――男性が男性に対して「胸キュン」「かわいい」のような感情を抱くこともあると思うのですが、それをオープンにすると、「周りから引かれてしまう」と躊躇し、あくまで評論している体を取るということでしょうか。

小埜 そうですね。男性から男性への「かわいい」は語りづらいという感覚はあります。まず、安易に同性愛と結び付けて“イジり”の対象にしてくる人もいるので。また「かわいい」という言葉は、そもそも未熟性や不完全さを愛でる、古くから続く日本の伝統的な感性ともいえます。なので、男性に対して「かわいい」と言うと、それは既存の「男らしさ」からは外れてしまうため、相手の男性としてのランクを下げてしまう感覚になり、口に出して言えないという面もあるのではないでしょうか。

 でも、人間はみんなどこかしら「かわいらしい」側面を持っていますよね。男性同士であっても、それを慈しみ合える関係性を持てることは、今あるジェンダーバイアスや価値観に変化を与える点でも重要ではないでしょうか。

――ほかにも、男性ジャニーズファンならではの悩みはありますか。

小埜 コンサートでも悩みはあります。僕は身長が174cmなのですが、コンサート会場にはほとんど男性がいないので、自分のせいで後ろの女性ファンが、ステージが見づらいのではないかと気を使いますね。ある空間で少数派になるというのは何とも言えない不安感のようなものがあって、100%心からコンサートを楽しめないという男性ファンからの声も少なくありません。

 声援を送る際も、女性のように高い声を出せないので、「声を出すと浮いてしまうから、感情を抑え込んでいる」という話は、男性ファン同士で共感を得るテーマです。最近、さまざまなセクシュアリティへの配慮から、アイドルが「男性/女性」を特定して掛け声を求めることへの疑問が、一部のファン界隈で上がっていて、もちろんそこは検討されるべきだと思います。でも一人の男性ファンとしては、現状アイドルに「男性!」「メンズ!」などと声をかけられたとき、安心して声を出せるというのも本音です。

 また、「コンサートでトイレに並ばないこと」は男性ファンのメリットとしてよく挙げられていて、確かにその通りなのですが、全体数が少ないゆえに、男性トイレも女性用として使用されていることがあって。以前とあるライブ会場の男性トイレをパーテーションで仕切って、小便器だけ男性に開放されていたこともあったんですよね。変な話、お互い音も聞こえてしまうような状況だったので、さすがにもう少し配慮してほしいと思いました。

 それから、書店でアイドル誌を買うときのハードルが高いという話もよく、僕がインタビューさせていただくときに聞きます。本当は少し中身を確認してから買うか決めたくても、恥ずかしいからなるべく売り場に女性客がいないときを狙うとか、素早く手に取ってレジに向かうとか、男性の店員さんを選んで会計するとか……。男性ジャニーズファンの多くは、過去に「男性でジャニーズが好き」ということで、イジられるとか引かれるとか、何かしら傷つく経験をしているので、また嫌な思いをしたくないという防衛的な心理が働くのだと思います。

――大変なことも多々あるのですね。やはり男性限定コンサートがあればうれしいでしょうか。

小埜 過去には嵐が『Music Lovers』(日本テレビ系)で男性ファン限定ライブを開催したことがあって。いつもと雰囲気が違うのも新鮮だとは思うものの、雰囲気や煽り方がアイドルというよりロックバンドのような感じだったんですよね。自分もそうですが多くの男性ファンは「アイドル」の彼らが好きなので、通常通りのコンサートで、男性ファンも過度に気を使わなくて良い状態で参加できるようになるのがうれしいです。

(後編につづく)

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