「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
タワマンで暮らすママ友のSNS投稿にモヤモヤ……私とのファミレスランチは“なかったこと”に?
「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
ママ友とSNS上でつながり、交流しているという人は少なくないだろう。それがきっかけでより仲が深まることもある一方、 中には投稿への「いいね!」欲しさに、自慢が過ぎてしまうママもいるなどして、ママ友の間に不穏な空気が漂うケースも あるようだ。
今回は、キラキラしたママアカウントを見て落ち込んでしまうというあるお母さんの話 を取り上げる。
飲食店勤務の彼氏とでき婚……コロナで収入がピンチ
飲食店のパートタイマーとして働いている由香里さん(仮名・35歳)は、5歳になる男児のママ。夫は何度か転職を繰り返した影響からか、収入は同年代の平均を下回るという。
「新卒採用時に、100社近くエントリーしたのですが、結局内定がもらえたのはチェーン系の飲食店だけでした。入社してみると、同期は自分が卒業した大学より、偏差値的には下の大学を出た人ばかり。たいしたキャリアにもならないし、早く転職しようと思っていました 」
由香里さんは数年後、IT企業に転職したが、毎晩終電近くまで働かされるという過酷な職場で、結局、体調を崩してしまい退職した。
「その時に付き合っていたのが、最初の職場で出会った今の夫。彼は飲食業界を中心に転職を繰り返しており、その会社もすでに3社目でした。当時チーフマネージャーに昇格し、バイトのシフトを組んだり、採用面接をしたりと、業務が一気に増えたんですが、ほとんど昇給せず、異業種に転職しようかと話していたんです。そんな折、私が妊娠し、結婚することになったものの 、結局、夫はずるずると飲食の仕事を続けています」
その後、由香里さん夫婦は、新型コロナウイルスという未曽有のパンデミックの影響をもろに受けた。
「夫が勤めていた飲食店は休業しなければならず、本社が経営していた業務用スーパーなどに応援へ行っていました。ほかにも、勤務していた店舗で弁当販売を始めたり、バー営業をするなどして、なんとか危機を乗り越えたんです。私は息子の育児に奔走しながら、夫の仕事に気を揉むという状況で、かなりストレスフルな日々を過ごしていました 」
そんなある日、大学時代の同級生・奈央子さん(仮名・35歳)から連絡があった。
「奈央子は大学時代、同じサークルに入っていた友達です。コロナ禍で外出ができなくなった時、奈央子主催で仲が良かったメンバーとオンライン飲み会をして、再会。画面越しですが、懐かしい話題で盛り上がり、とても楽しい時間でしたね」
奈央子さんは、由香里さんと同じ沿線に住んでいたため、オンライン飲み会をきっかけに、直接会うようになったそうだ。
「奈央子は、息子と同い年の男の子を育児中でした。子ども同士も仲良くなり、よく公園で遊ぶようになったので、会う機会が増えていったんです」
奈央子さんは大学を卒業すると、テレビCMを流すような有名企業に入社。そこで知り合った年上の男性と結婚して、沿線のターミナル駅でタワマンを買ったそうだ。
「奈央子の会社はインセンティブ制度だそうで、30代でも年収は800万円台。この前、会った時には『同業他社からいい条件で引き抜きの話があった』とも言っていました。夫婦で同じ企業に勤めているので、うちより生活にかなり余裕があるのは想像できます」
由香里さんは現在、育児中心の生活だが、パートタイマーとして働き、その収入を家計の足しにしているという。しかし、生活は決して楽ではなく、夫は退職金もないため、夫婦で貯金を心がけているそうだ。
由香里さんは、そんな奈央子さんの境遇をうらやましいと思いながらも、割り切って付き合わなければいけないと思っていたとのこと。 しかし子連れで頻繁に会うようになってから、彼女のSNS投稿が気になりだしたという。
「奈央子は地方の優秀な高校出身。一緒にスキー旅行をした時、高校時代に作ったという学校名入りのTシャツを着ていたのを覚えています。その頃からステータスのあるものが好きな子という印象でしたね。よく遊んでいる人たちは、起業したり、会計士になったりという華々しい経歴の人ばかりで……高級焼肉店などで会食している様子をSNSに上げていたんです」
奈央子さんのSNSを見るたびに、由香里さんはモヤっとしてしまうという。
「奈央子はSNSに、日々の出来事を頻繁にアップしています。でも、経済界の有名人や政治家などに仕事で会ったり、高級ショップのレセプションに行ったり、裕福そうなママ友と子連れで遊んだ際のエピソードや写真は必ず投稿するのに、近所のファミレスで私とランチしていることには一切触れない。子どもを育てながら、パートで働いている身分の私は、そういう華やかな交流やイベントの投稿を見るたび、『同じ大学を出ているのに……』と切なくなるし、私と会っているのは隠したいことなんだなってモヤモヤするんです 」
由香里さんは、現在、子連れで交流している大学の同級生に、奈央子さんのSNS投稿をどう感じているのか聞いてみたそうだ。
「友達に 『SNSで交友関係や仕事をひけらかしているのが気になっていた』と言われ、『あぁ私だけじゃなかった』とホッとしました。よくママ友ルールとして『自慢話はNG』というものがありますが、確かにその通りかも……実際、奈央子は私たちのグループの中で、ちょっと距離を置かれつつありますから 」
学生時代など、ある一定期間を同じ場所で過ごした間柄というのは、つい「みんな同じ」と思ってしまいがちだ。しかし、就職や結婚などで、生活水準や環境は変わるものだけに、いつまでも「みんな同じ」というわけではない。
ブランドアイテムのように、わかりやすい自慢ならば、興味がない場合スルーできる。しかし、SNSを通して可視化される華やかな交友関係や、責任のある仕事を任されている姿を見せつけられるのは、お金で買えるブランド物よりもつらいのではないだろうか。
今は女性の社会進出が進み、子どもがいてもバリバリ仕事をするというのも普通となってきた。しかし、子育て中のママの中には、さまざまな事情により、そうしたくてもできない人が相変わらず多い。バリバリ働きたいけれど、軽作業のパートタイマーや専業主婦をしているという話はよく耳にするものだ。
今回のケースだが、奈央子さんが個人のSNSアカウントの内容を制限する必要はないと思う。由香里さんも気を病むのなら、奈央子さんのアカウントをミュートすべきだろう。SNSでのトラブルは、見ないことで解決することもある。同じママという立場でも、置かれる状況は千差万別。自分の心が病まないように工夫することも手ではないだろうか。
しかし一方で、もし奈央子さんが由香里さんらと今後も仲良くしたいという場合、少しだけ相手が自分のSNSを見たときにどう思うか(特にママ友によってSNS投稿の扱いを変える点)を考えてみるのもアリなのかもしれない。仕事での成果や社会的地位のある人との交流のみを上げていると、周りからはどうしても「自慢」と捉えかねられない。SNSの投稿内容は、大なり小なりママ友付き合いに影響をもたらすもののように思う。