• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』高齢の親に介護してもらう難病の息子が「普通に優しく」できない理由

 5月28日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「人生ってムズい ~レモンサワーと車いす~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 福岡県北九州市で暮らす39歳の落水洋介は、2016年に大脳から脊髄までの運動神経が徐々に障害されていく難病、PLS(原発性側索硬化症、厚生労働省指定難病4)と診断される。意識ははっきりありながら、体の自由が徐々に奪われていく難病で、発症するのは100万人に1人とも言われている。原因は不明で、治療法も見つかっていない。

 なお、同番組では以前、PLSと症状が似た難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症、厚生労働省指定難病2)の患者とその家族の生活の様子も伝えている。

 洋介の体に異変が現れたのは13年、自身の結婚披露宴の翌年からだった。足がもつれやすく、腕の力が抜け、呂律も回りにくくなり、勤め先にも杖をついて歩いていかねばならない状況になってしまう。

 2人の幼子の育児に追われる妻を慮り、洋介は実家に身を寄せ7年目になる。現在、洋介は自力での歩行は困難だが、電動車いすを使い近所で飲み歩いている。行きつけのバーでは店主が慣れた様子で洋介を抱え、店のトイレまで介助する様子が伝えられていた。

 洋介の日常の介護を行うのは、70歳を超えた父・徹雄と母・仁子。徹雄が洋介にTシャツを着せ、酔いつぶれて帰ってきた彼を仁子がおぶって介護用ベッドに移動させる姿が映されていた。

 番組スタッフや行きつけのバー、居酒屋では饒舌な洋介だが、両親の前では無口。ただ、洋介は番組スタッフに対しては、両親に対する感謝や申し訳なさ、自分へのイラ立ちなど、複雑な思いを口にする。

 洋介はSNSでPLSについての情報や生きる意欲を発信しており、賛同者が集まっていく。18年、洋介は廃屋を借り受け、ボランティアの賛同者と共に合同会社PLS(以下、記事では病名と分けるため「PLS社」と表記)を設立。洋介はPLS社で親の手を借りず1人で暮らすことを目指している。

 一方で、PLS社の運営において、洋介の連絡、通達が十分でないところもあるようだ。洋介を支援している一人で、不動産開発会社を経営している黒谷は、PLS社に金額を融通し紹介した工事について、その後の報告が洋介からなかったことをたしなめていた。

 洋介に対し「(自分は)あんたに容赦せんけん」とフラットに接する黒谷。洋介はそんな黒谷を慕っており「大恩人なのに迷惑をかけまくっている」と話していたのだが、またしても迷惑をかけてしまう。

 PLS社での宴会に参加できなかった黒谷に対し、同社のスタッフが暴言を吐いたというのだ。この件に対する洋介のの謝罪も遅れ、黒谷からのメールには「御社、貴殿の常識は理解できません!」とまで書かれてしまう。洋介はカメラの前でしばらく涙に暮れるほど落ち込んでいたが、その後、黒谷とは和解。番組の最後で、洋介は鰻屋で両親のためにうな重を買っていた。

『ザ・ノンフィクション』親に、普通に優しくすることの難しさ

 日ごろ自身を介護してもらいながらも、ついぶっきらぼうに接してしまう両親への思いを、洋介は番組スタッフに以下のように話している。

「僕が心を閉じてるっていう感じですね。親にお世話になるなんて、この年齢で、恥ずかしいやら申し訳ないやら、不機嫌な態度を取っている自分にもイライラするんだけど。親に、両親に普通に話したり、普通に『ありがとう』って言えば、お互い楽ってのもわかるんですけど、心の深い部分に、もう申し訳ない、なにやってるんだ、もう最悪っていう自分に対する怒りを自分で鎮めればいいのに態度で(出してしまう)」
「親に普通に優しく、普通に接する、わかってるけどできない、できる気がしない、甘えてるんですねえ」

 洋介には難病という大きな事情があるが、甘えからついぶっきらぼうな、ぞんざいな態度を親に取ってしまうというのは、「子どもの、親への態度あるある」のようにも見えた。

 洋介は番組の最後にテイクアウトのうな重を両親にプレゼントしており、そういったたまの感謝もないよりはあったほうがいいが、それよりも大切なのは、洋介自身が一番自覚しているであろう「(両親に)普通に優しく」を日々の生活で実践できるかだろう。

 洋介は恩人である黒谷に対しては、とてもストレートかつ熱烈に感謝の思いや愛情を表現している。この表現の1/10でも両親にしてあげればいいのにと思うが、「他人だから愛情を表現できるのであり、相手が親ならやりにくい」という気持ちも理解できる。私も親に「ありがとう」と言おうと思った回だった。

 次回は「私は何者なのか… ~すべての記憶を失った男」。ある冬の日、横浜駅で目覚めた男は、自分の年齢から名前に至るまですべてを忘れていた。鏡に映った自分の姿すら見覚えのない彼は、横浜市の公的機関に保護され、「西六男」という仮の名前が付けられる。西の自分探しの旅を見つめる。

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