• 日. 12月 22nd, 2024

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中田敦彦は、なぜ粗品を味方と勘違いしたのか? 彼が「愛される悪役」になるために足りないもの

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「一応、社交辞令で『見てます』って言ったよ」霜降り明星・粗品
『霜降り明星のオールナイトニッポン』(6月2日、ニッポン放送)

 オリエンタルラジオ・中田敦彦が自身のYouTubeチャンネルで、ダウンタウン・松本人志に対して、『M-1グランプリ』など、大きなお笑い賞レースの「審査員ちょっと何個かやめてくれないですかね?」と“提言”してから十日あまり。予想通り、中田は多くの芸人から叩かれた。中田がなぜ急に松本批判を始めたかはわからないが、芸能人としては、自分のしたことが世間サマにスルーされるより、騒がれるほうがいいだろう。中田砲第1弾は、成功したといえるのではないか。

 今回の件で、すっかり「悪役」が確定した感のある中田。しかし、悪役というのは独特の魅力があるものだし、かつて悪役レスラーだった北斗晶は『5時に夢中!』(TOKYO MX)において、「悪役がちょっといいことをすると、本当はすごくいい人なんだと思われるからトク」と、そのメリット を明かしていたことがある。悪い部分を強調するほど、いい人の部分が光るという意味でも、やはり悪役はおいしいのだろう。

粗品、中田敦彦への「YouTube見てます」発言は「社交辞令」と断言

 しかし中田は、悪役になるには、ちょっと足りないものがある気がする。

 松本批判の動画の後半、中田は「これ見てる粗品くん、どう思う?」と霜降り明星・粗品を名指しし、「最近ね、俺のトークチャンネルをすごく見てくれてるらしいんですよ。粗品くんが。すごくうれしくて。粗品くんなんて全部獲ってるでしょ。『M-1』も獲ってさ、で、『R-1』も獲ってます? でねぇ大喜利だって強いんだし」「まぁ、言えないよね。吉本から数千万借りてるから言えないでしょ」「だから、粗品くん、俺代わりに言うわ。松本さん、審査員やりすぎですよって」「ごめん、俺の意見だわ(笑)。粗品くんは関係ない。とばっちりでした」とオチをつけた。

 中田はおそらく、粗品は吉本興業系列の金融会社・よしもとファイナンスから借金をしている事情から、同社トップタレントの松本への批判を公言できないが、本当は自分の味方なんだぞと訴えたかったのだろう。

 が、6月2日放送の『霜降り明星のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)によると、真相はちょっと違うようだ。粗品は「それは言ったで、中田さんに。初めて会った時に『YouTube見てます』って。一応、社交辞令で『見てます」って言ったよ」と、よくある初対面のあいさつとして「見てます」と言ったまでで、中田を芸人として面白いと思いつつも、ほかの芸人を敵に回しても応援するほどの思い入れがある先輩ではないことを明かしていた。

 人はオトナになると、社交辞令を言うようになる。初対面で何を話したらいいのかわからない時、雰囲気を和らげるため、また相手を喜ばせるために、それほどその人の仕事について知らなくても「いつも見ています」くらいのことを言うし、言われたほうも「いつもじゃないだろ」と思いながらも、「うれしい、ありがとう」と返す――これは日常的にあることだ。 真実でないことを言うのは、ウソだと言われてしまえばそれまでだが、人を陥れようとか騙そうという意図はないわけだから、これは罪のないウソだろう。

 中田は、こういう社交辞令もしくは罪のないウソと、本気の発言を見分ける能力が足りないような気がする 。愛される悪役というのは、少ないながらも忠誠を誓っている味方がいて、本人が自分自身を犠牲にしてもその味方を守るというセオリーがあるが、社交辞令を真に受けてしまうようでは、本当の味方を見つけることができないだろう。

 それでは、どうして中田は社交辞令や罪のないウソと、本気の発言の見分けがつかないのだろうか。それは、中田自身が“条件”で人を判断しているからではないか。

 中田は粗品について語るとき、『M-1グランプリ』『R-1ぐらんぷり』の覇者であることを挙げている。中田自身がこういう業績にこだわり、そのブランド保持者に “片思い”をしているからこそ、粗品に「YouTube見てます」と言われ、望外の喜びを感じてしまい、「俺も好きだと思っていたが、向こうも好きでいてくれたんだ」とやや自分に都合よく解釈してしまったように思うのだ。

 お笑いコンビ・マヂカルラブリー・野田クリスタルは、中田の松本に対する一連の発言について、「(中田は)誰よりも(松本を)神格化してるのかなって思っちゃったんだけど」と語っていた。誰も傷つけない、いい答えだと思うが、私は、中田はお笑いに興味があるわけでもなく、松本本人に憧れているわけでもなく、ただ、人がひれ伏すブランドが欲しいだけなのではないかと感じる。

 一般人の間では、それは学歴とか年収だったりすることが多いが、お笑いの世界に身を置く中田の場合、賞レースのチャンピオンの座がそれに該当し、なぜ自分はそれが手に入らないのか、そうだ、審査員が同じ人だからいけないんだ、審査員が変われば俺だって認められるのに……というふうに、“逆走”したのではないだろうか。

 誇大妄想が止まらない、ブランドの有無によって人の上下を判断してしまう 、社交辞令などの暗黙の了解がわからないなどで、本気で悩んでいる人は、専門家に相談してみたらどうかと思う。ただ、中田の場合、その性質は芸能人として、メシのタネになり得るから、どんどん前に押し出せばいいのではないか。しかし、どんな人にも、味方は必要だ。家族を大事にして“帰る場所”を確保した上で、大暴れしていただきたいものだ。

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