「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます! 今回は毎度おなじみヘンリー王子とメーガン夫人の近況を眺めていきます。
――前回から、ヘンリー王子とメーガン妃の近況についてあれこれ考察してきましたが、やっぱり雲行きがあやしいようで……。2018年のロイヤル・ウエデイングを頂点にその後は右肩下がり、最近ではついに離婚危機がささやかれるようになりました。
堀江宏樹氏(以下、堀江)英王室評論家のサラ・ロバートソンが、メーガン妃がヘンリー王子と距離を置いて、一人で活動しはじめる段階に入ったという趣旨の発言をしています。ヘンリー王子も、ガミガミうるさい妻から身をひそめるための隠れ家をすでに持っているようだという噂は根強いですよね。
――別居ですか。最近のメーガン妃は、ヘンリー王子を伴わず一人でパーティにも出席し、楽しんでいるご様子。さらにアメリカにおける四大芸能事務所のひとつであるWME社とも契約したというのです。女優復帰を考えているのでしょうか?
堀江 メーガン妃が暴露好きなのは映像業界に知れ渡っていますから、そんな人をもう一度テレビや映画業界が受け入れるとは思えません。当人も分厚い台本を覚えたりするより、もっとラクに大金を稼げるような……それこそ、オプラ・ウィンフリーのようなバラエティ番組の司会者とかそういう方面を望んでいるのでは?
もちろん、もう少し社会問題などの好みの方向に寄せて、メーガン妃は活動するつもりだとは思いますが。
――女優時代のメーガン妃は、『スーツ』など話題のドラマに登場する程度には実力と知名度のある女優ではありましたが、ハリウッドのトップ女優として注目される存在では到底ありませんでした。
堀江 しかし、英王室のヘンリー王子と結婚することによって、彼女の知名度は全世界的なものになったのです。仮に王子と結婚せず「女優メーガン・マークル」として頑張り続けた場合の何十倍、何百倍、何千倍もの知名度を、「メーガン妃」としての約5年の活動の結果、彼女は獲得することができました。
しかし、自身が考えるほど、彼女のプロデューサーとしての能力は高くはなかったようですね。前回も話した通り、Spotify(スポティファイ)社のポッドキャスト番組はスタートして即打ち切りになっていますし、Netflix社のドキュメンタリー番組『ハリー&メーガン』も、尺が長いだけで完成度は大したことがありませんでした。予告編においては、二人が王室とパパラッチの被害者だと主張したいがあまり、パパラッチに襲われている場面を入れ込もうとしたのですが、実はその映像は偽物だと暴露されたり、かなりイタいことになってしまっています。
――『ハリー&メーガン」の予告編の一部で、パパラッチの集団が2人にカメラのレンズを一斉に向けているように見える映像は、実際は『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011年)のプレミア試写会映像の使いまわしでした。つまり、ヘンリー&メーガンの映像ですらないということですね。
堀江 彼らはメディアの被害者であるように情報操作を行おうとして、無様に失敗してしまっているわけです。
――メーガン妃とヘンリー王子は今年5月16日の夜、ニューヨークで「きわめて強引なパパラッチ」たちの車から「2時間以上」もカーチェイスされたとの被害声明を発表していますね。
堀江 パパラッチたちの集団に囲まれ、夫妻の乗っているタクシーが移動しづらかっただけ、というのが真実のようです。2時間、乗り合わせただけのお客のヘンリー王子とメーガン妃を守るため、パパラッチによる危険な追撃を交わし続けるタクシー運転手なんて、アクション映画の中にしかいないような気もします。「降りてくれ」といわれるでしょうし、ニューヨークの街中でそんな長時間、走り回れるハズがない。
――さらにヘンリー王子は6月上旬、イギリスにおいて行われた裁判において、電話の盗聴をされて個人情報が抜き取られたと、確たる証拠もないままで断言しました。おまけに証言台で声をつまらせ、涙ぐんだりして……。
堀江 現実世界とは少しズレた歪んだ世界に、彼は住み始めているのかもしれません。さすがにメンタルが心配です。
――それもメーガン妃のプロデュースミスの結果と見てよいでしょうか。
堀江 ヘンリー王子は、長身で筋肉質。タフな印象ですが、きわめて繊細で脆(もろ)い心を抱えている方です。メーガン妃と共に「英王室とその伝統に虐げられた有色人種の元・ハリウッド女優と、その夫の王子」を、リアリティショー的に演じ続けるうちに、役柄に飲み込まれてしまったのかも……。
――満身創痍にも見えるヘンリー王子に対し、メーガン妃は無傷のようですね。
堀江 彼女の本質は、誰かがクリエイトした脚本を与えられ、それを演じる女優にすぎないのです。しかし、現在は『ハリー&メーガン』というコンテンツに関しては、彼女自身がクリエイトせねばならない。その大役をメーガン妃はこなしきれていないのです。
従来の王室批判と炎上路線では、ヘンリー王子の自伝『スペア』の評価が低迷していることからも、コンテンツとして賞味期限切れが見えてきた、とさすがの彼女も気づいているはずですが。
――メーガン妃本人も、もう少しセルフプロデュースがうまければ、ここまで嫌われることもなかったかもしれません。なにかブレーンというか、いい脚本を書いてくれる人はいなかったんでしょうか……?
堀江 メーガン妃は炎上商法の天才と呼ばれました。それで彼女は有名となりましたし、誰からも知られていないより、憎まれていても、顔と名前を覚えられているほうがいい。そういう世間からの「評価」を、彼女は鵜呑みにしてしまったのでしょう。
ヘンリー王子が、自身のドラッグ愛好歴まで暴露した『スペア』の内容を、メーガン妃はもっと確認すべきだったという声はあります。しかし、読書家ではないヘンリー王子のかわりに、少なくとも台本を読むのには慣れているメーガン妃が、内容を逐一チェックしなかったわけがありません。
J・R・モーリンガーというやり手のライターに依頼し、王子が話す「回想」をまとめさせたが、メーガン妃は「スキャンダルも名声のうち」といういつもの感覚でドラッグ関係のエピソードもカットさせなかったのではないかな……と考えられます。しかし、結果はメーガン妃の期待を裏切るもので、世間をただ呆れさせてしまっただけのようです。
――あるいはヘンリー王子を故意に落ち目にさせ、その時期に自分が芸能事務所に再所属する。そして芸能ビジネスへの本格復帰を目指そうと動き出す……などのプランが彼女にはあったのかもしれません。
堀江 メーガン妃ならやりかねないニオイはしますよね。その一方でヘンリー王子は、イギリスの家族に、大変な不義理を重ねています。
――先日のロンドンで開かれた裁判では、王室を指す時、「機関」という単語を使い、突き放して表現したようです。
堀江 かつては「毒になる親」チャールズ王に翻弄された結果、父親にとってのヘンリーは「毒になる子」になったことがすべての原因なのですが、ヘンリーがいつまでも過去を乗り越えた大人になれていないところも大きな問題なのでしょう。今や、被害者を名乗る加害者となり果てているようにも見える。
そんな病めるヘンリー王子にとって、最大の理解者を演じ続けてくれたメーガン妃は、理想のパートナーになれたのだと思います。しかし、二人の蜜月も終わりが近づいている印象ですね。ヘンリー王子の名声に寄生しているうち、自らも名声を手に入れたメーガン妃は、自力で羽ばたける段階に入りました。
――あの派手好きな夫妻が結婚5年目を祝うパーティを、なぜか今年は行わなかったようです。
堀江 もはやメーガン妃は自分が目立つために、ヘンリー王子と一緒にいる必要はないと判断したのかもしれません。ここで、ヘンリー王子の前に、以前のメーガン妃同様に「よき理解者」を演じてくれる女性が登場すれば、5年目の浮気ならぬ5年目の離婚の可能性も濃厚となってくるかも。そうすれば、彼らのリアリティショーも低迷から一転、面白くなりますね。
本当にメーガン妃がこの先、芸能事務所に籍を置きつつ、クリエイターとしてもやっていくつもりなら、それくらい仕掛けてほしいものですよ!
――不穏な結びになってしまいましたが、半年前にはまったく考えられなかった方向に突き進んでいくハリー&メーガンの行方を、これからもウォッチしていきたいものです。