「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
忙しい育児中のママたちにとって、SNSで悩みをつづったり、LINEのグループチャットで、ママ友と愚痴をこぼし合うことが、ストレス発散になっているように思う。今回は、ママ友とSNS上でやりとりをする中で、「モヤモヤを感じた」というお母さんの話を取り上げる。
自宅に仕事を持ち帰り……子どもを0歳から保育園に預けたワーママの日常
都内にあるPR会社で営業をしている琴美さん(仮名・32歳)は、1歳になる男児のママ。日中は子どもを保育園に預けてフルタイムで働いているが、業務時間内に終わらない仕事は自宅に持ち帰り、子どもを寝かしつけた後に片づけている。「土日はゆっくり休みたい」と思うが、「そもそも育児に休みはないし、平日にできない通院などの用事で、あっという間にスケジュールが埋まってしまう」そうだ。
「自分の時間がまったくないというわけではないですが、1人でゆっくり過ごすことは全然できていません。職場はフレックスタイム制で、私としては午前9時に出社して、午後5時には帰るというのが理想。でも手掛けているプロモーション案件は午後5時以降に先方から連絡が来ることも多いんです。毎日、きっちりとした“仕事の終わり”が見えず、帰宅してからも簡単なメール返信などはしています」
琴美さんの職場は女性社員が多く、産休や育休は問題なく取れるが、「すぐに復職する社員がほとんど」だそうだ。
「うちの会社は都内在住の社員が多い。みんな、子どもが保育園の待機児童になるのを恐れて、比較的入りやすい0歳児のうちに入園させ、すぐに仕事復帰しています」
マミートラックに陥るのが不安、「時短勤務にしたら、前線に戻れない」
仕事と育児の両立で疲弊しているという琴美さんだが、もう一つ大きな悩みを抱えている。
「どうしても育児に時間を取られ、思ったように仕事ができないことです。うちの会社には、プロジェクトリーダーを務める育児中の女性がいるのですが、実家やリモートワークをしている旦那さんに子どもの迎えを頼んで、残業もしている。一方の私は、緊急時以外は残業をせず、退社していて……家でも仕事をしているとはいえ、出産前のようには働けません。このままでは、やりたい業務のメンバーから外されてしまうのでは……と不安になってしまいます」
琴美さんも夫も地方出身のため、保育園以外に子どもを預けることは難しいという。
「残業した時は、延長保育をお願いしているのですが、追加料金を考えるとそう頻繁にはお願いできない。夫は建築関係の仕事をしており、仕事の終わる時間が遅く、どうしても私が定時で仕事を切り上げ、迎えに行くしかないんです」
琴美さんは、いまの自分は「マミートラック」に陥りかけていると話す。
「仕事に復帰してから『マミートラック』という言葉を知って落ち込みました。子どもを産んだため、仕事が思うようにできず、出世コースから外れてしまうことを言うそうです。仕事と育児の両立に疲れ、もっと休みたいという気持ちがある半面、責任ある仕事を任せられないと思われるのは嫌という気持ちもあって。周りにそういう悩みを伝えられるママ友がいないので、SNSで『フルタイムで働くのはつらい』『でも時短勤務にしたら、前線に戻れない』と愚痴を吐いてしまいました。そうしたら、普段は私の投稿にあまり反応してこない地元の友人から、DM(ダイレクトメッセージ)が送られてきたんです」
ワーママの悩みに、専業主婦のママ友が「わかる」
SNSには、夫に対する不満や育児のつらさなど、ママたちの本音があふれている。しかし琴美さんの“悩み”は、思いもよらない事態に発展してしまった。
「彼女は高校時代の同級生で、地元に帰った時に友人同士の集まりで会う仲。いまはお互い子持ちなので、育児の話をするママ友みたいな感じですが、個人的には、そこまで親しくはないと思っていました。そんな彼女から、『仕事が大変なんでしょ~。わかる。今日ママ友とランチしてた時、この話題で3時間盛り上がった』ってDMが来たんです。思わず、『え? どういう意味?』とメッセージを読み返しました」
琴美さんは、この友人に向けて書いたつもりではないSNS投稿に反応があり、返信に困惑したという。
「彼女が私と同じワーママという立場だったら『共感してくれたんだ』と納得できるのですが、地元で幼稚園児の子を育てる専業主婦なんですよ。妊娠前まで働いていたとはいえ、私とは立場が違うのに『わかる』ってどういうこと? とモヤモヤしましたね。もしかしたら『自分のほうが優雅だ』っていうマウンティングをされたのかもしれないですが……こういったメッセージにはどう返信したらよいのでしょうか」
ママ友といっても千差万別。子どもが生まれてから知り合ったケースだけではなく、もともとの友人がお互いに子どもを持ち、ママ友として交流を始めることもあるだろう。
進学や就職のために上京したママたちにとって、子どもを介して知り合ったママ友との付き合いはまだ日が浅い。それに対し、地元の友人は気心が知れているだけに、ママ友付き合いもしやすそうなイメージだが、実際のところ、そちらとのほうが面倒くさいことが起こりがちだ。
なぜなら、そういったママ友は、一緒に過ごした頃の関係性を引きずっており、お互いの距離感が近すぎるから。現在は立場が違うのに、育児や仕事に対し、「これぐらい言っても大丈夫」と、ずけずけ口を出してくるケースが少なくない。時にはマウントのような発言をしてくることもあるだろう。その結果、ギスギスした関係に陥ってしまうのだ(逆に子どもが生まれてから知り合ったママ友は、遠慮がある分、そのあたりの配慮もあるはず)。
今回の琴美さんの一件も、まさにそういった背景から発生した出来事だったのではないだろうか。
地元の友人からすると、その「わかる」は「共感」ではなく、「読んだよ」くらいの意味合いだったのかもしれない。ワーママの大変さについてランチで3時間話したというのも、マウントのつもりはなく、「あなたのことを気に掛けていますよ」くらいのニュアンスだった可能性もある。
モヤモヤするDMをもらうのは嫌なものだが、自分と立場がまるで違う相手に、この状況が理解されなくても仕方ないと割り切るしかないだろう。もしくは、こうした悩みを吐露する投稿は、自分の状況を理解しているごく親しい人にしか見られないよう、SNSアカウントに鍵をかけたり、公開範囲を絞ることも対策の一つといえる。
では、こういったDMに角の立たない返信をしたい場合、どういった内容がいいのだろう。友人本人にはおそらく悪意はなく、「あなたのことを気に掛けています」というアピールがしたかっただけではないかと推測されるので、「気にかけてくれてありがとう」とお礼の言葉だけ送ればいいと思う。一方、たとえ相手に悪意はなくても、マウントのように感じるDMを送ってほしくない場合は、「仕事は大変だけれど充実している」と伝えれば、もう返す言葉はないだろう。
そもそも専業主婦である友人が、ママ友と人の仕事について3時間も語り合うなんて、彼女はもしかしたら、実は働きたいけれど、事情があって専業主婦をしているかもしれない。どちらの立場にせよ、相手側の事情というのはなかなか理解できないものだ。