私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。
<今回の有名人>
「社会的評判を落とす」テレビ朝日・弘中綾香アナウンサー
『あざとくて何が悪いの?』(7月16日、テレビ朝日系)
『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)は、南海キャンディーズ・山里亮太と女優でフリーアナウンサーの田中みな実、テレビ朝日の弘中綾香アナウンサーの3人が、ゲストとともに、世の男女の“あざとさ”について語り合うという番組だ。
7月10日付の「スポニチアネックス」の記事によると、同番組は秋の番組改編の時期にレギュラー放送を終了することが決まったという。その理由の一つは、弘中アナが産休に入ること。同記事には、「弘中さんのキャラクターは番組に不可欠な存在。唯一無二の役割を担っていたため産休と同時に番組もいったん休むことになる」という関係者の証言も寄せられている。
視聴率が振るわなくて番組が終了になるという話はよく聞くが、「出演中の社員が産休に入るから、番組もいったん終わり」とは聞いたことがない。弘中アナといえばオリコン調査の「好きな女性アナウンサーランキング」で4年連続1位を獲得するなど、テレビ朝日のエースアナウンサーなだけに、局が彼女をいかに大事にしているかが伝わってくる。
まぁでも、弘中アナの産休とは関係なく、番組の続行は難しかったのではないだろうか。
この番組で扱う“あざとさ”は、独身女性が男性に対して発動するものが多い。明石家さんまがMCを務めた『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)に代表されるように、女性が同性のあざとさや計算高さをあげつらう番組は昔からあるが(ちなみに『から騒ぎ』の場合は、さんまが「ええやないか、それで。かわいいやないか」というふうに、ズルい女性を肯定し、女性陣と対立する構図までショーとして見せていた)、ここでポイントの一つになるのは、同性のズルさをあげつらう女性の属性ではないだろうか。
というのも、「あの子はズルい!」と言う人が、自分もズルをしていたり、もしくは極端に恵まれた立場にいる場合、視聴者の共感を呼べないだろう。真面目に生きて、ちょっと損をしているくらいの人が“告発”するからこそ、視聴者を「本当にその通りだ」と納得させられるわけだ。
弘中アナは、2022年に資産30億ともいわれるベンチャー企業の社長と結婚している。結婚は弘中アナのプライベートに関することであり、本来、配偶者のプロフィールが彼女の仕事に何らかの影響を及ぼすことはあってはならないが、そうはいっても、彼女が“富豪の妻”であることを知っている視聴者は多い。
となると、たとえ仕事とはいえ、弘中アナが「ズルい、あざとい!」と独身女性を斬っていくと、「富豪の妻の上から目線」と、彼女に反感を抱く人も出てくるだろう。人の視点は環境とともに変わるものだから、独身である田中は“現役”として、独身女性のあざとさを語れても、弘中アナのコメントはインパクトがなくなり、番組自体が盛り上がりに欠けてしまう可能性もある。そういう意味で、『あざとくて何が悪いの?』は“潮時”だったのかもしれない。
そんな弘中アナは、自身の立場をあまり客観視できていないと感じる言動が目立つ。
7月16日放送の同番組では、「先輩を踏み台に本命を嫉妬させる恐怖の後輩」のあざとエピソードを紹介していた。女性Aが合コンで「いいな」と思った男性Cと連絡先を交換した。すると、その合コンに連れて行っていってほしいとせがんできた後輩Bから、「Cさんのことをいいと思っていないのなら、応援してほしい」と職場の皆がいるところで頼まれてしまう。女性Aは圧に負けて、後輩Bに男性Cを譲ることにした。
そんな中、女性Aの同期である男性Dは、後輩Bのガツガツした様子に対し、「意外だわ」と驚いていたが、のちに彼が後輩Bと交際しだしたことを知る。実はこの後輩B、男性Dにもアプローチしていたのだ。男性Dは、後輩Bが合コンに行ったり、ほかの男性と親しくしていることから、焦って交際を決めたそうで、つまり女性Aは、後輩Bに裏切られたというか、うまく使われたわけだ。
このエピソードを受け、山里から「裏切られた時、どうする?」と聞かれた弘中アナは、「私は(裏切られた話を)言います、いろんな人に」「社会的評判を落とす」「向こうの会社とかにメールする」と復讐するタイプであると明かしていた。
昨年、元参議院議員のガーシーこと東谷義和氏のYouTubeチャンネル「東谷義和のガーシーch【芸能界の裏側】」が大人気となり、「やられたらやり返す」とばかりに、SNSやテレビでもいろんな有名人の暴露話がよく見られるようになった。しかし弘中アナよ、あなたはどちらかというと「暴露される側」であることに自覚的になるべきではないだろうか。
「あの人にこんな仕打ちを受けた」という暴露は、最近の芸能界のトレンドといっていいだろう。暴露というはやりのネタを含む話はネットニュースになりやすいし、ネットユーザーからのコメントもつきやすい。だから、ネットニュースを書く人は、ますます芸能人の暴露ネタを探すし、テレビに出る人もどんどん暴露ネタを投下するという流れになっているように思う。
もちろん、何でも暴露すればいいというわけではなく、最も盛り上がるのは、「世間に名前の知れている人」が「自分より有名な、誰もが知っているレジェンド級の人」の暴露をすることではないだろうか。
例えば、『あのちゃんの電電電波』(テレビ東京系)において、あのちゃんは「山里亮太は本当にデフォで嫌い、というか。5~6年くらい一緒に番組やってて、その時からめっちゃ怖くて」「ボクがVTR中に寝たりするとめっちゃ怒る」「ほかの番組で会った時も、ボクがミスったことをみんながいるのに『あのちゃん、あれダメだったよ』って言ってきて。ホント嫌い」と暴露していた。
あのちゃんのように、最近よく見る新進気鋭のタレントが、山里という認知度の高い芸人をターゲットにしたからこそネットニュースになるのであって、彼女が名前の知られていない駆け出しの芸人について暴露しても、世間は注目しない。あのちゃんはそのあたりをよく理解し、テレビでこの話をしたように思うのだ。
そんな世間から耳目を集める暴露の条件を考えた時、テレビ朝日のエースアナウンサーであり、富豪の妻である弘中アナは、まさに暴露される側の人間だろう。
あのちゃんの暴露の場合、山里が自身の配信曲「ちゅ、多様性。」のMVに参加してくれたので、これまでの行いを「許した」といういいオチが用意されていた。結果的に、あのちゃん、山里双方のイメージダウンにはつながらなかったが、やはり暴露された側の印象は基本的に悪くなるもの。弘中アナはそういった危機感を持っているのか、甚だ疑問だ。
弘中綾香アナは「強い者いじめ」のターゲットになる
この「知名度のある人のひどい仕打ち」という暴露が、コンテンツ化されつつある現在の流れに、私は強い危惧を覚えている。なぜなら、証拠を伴っていない暴露でも、世間が盛り上がってしまうからだ。
ガーシー氏の暴露について、「週刊誌と同じことをやっている」という書き込みを見たことがあるが、週刊誌は記事にする場合、必ずウラを取るはず。誰もがSNSをやっていると言っても過言ではない現代、適当な記事を書けば、タレント本人にそのあたりのいい加減さを直接指摘され、ネット民にも攻撃される可能性がある。雑誌自体の信ぴょう性にも関わるだけに、ウラ取りは必須といえるだろう。
しかし、暴露というものは「先に言ったもの勝ち」であり、暴露される人が大物であればあるほど、真偽はともかく盛り上がってしまう。こうやって考えていくと、証拠を伴わない暴露は「逆恨み」もしくは「強い者いじめ」でしかないといえるのではないか。
話を弘中アナに戻そう。上述した通り、彼女はテレビ朝日のエースアナウンサーで局からも厚遇されており、本人も高給取りだろうが、夫も資産家である。キラキラ界のトップにいる彼女は、確実に「強い者いじめ」のターゲットになると思う。テレビでの振る舞いと実際の弘中アナは別だろうが、とにかく今は産休前の大事な時期。お体には気をつけていただきたいのと、余計な逆恨みを回避するためにも、自身を客観視してみるのもよいかもしれない。
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