• 日. 12月 22nd, 2024

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ポイ活が趣味の堅実なママ友が「ママ起業」! セミナーの誘いを断ったら“既読無視”に

「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。

 昨今の物価上昇を受け、子どもを持つママたちは、生活費を少しでも抑えたい、もしくは収入をもっと増やせたらと日々頭を抱えている。そんな中、ママたちの間で話題となっているのが「ママ起業」だ。その名の通り、子育て中のママが起業をすることを指すが、ネット上では、詐欺まがいの怪しい起業セミナーを告発する投稿も少なくない。今回は、そんなママ起業に没頭しているママ友との付き合いに疲弊したというお母さんの声を取り上げる。

夫婦で夫の家業を手伝い。よく来店してくれる幼稚園時代からのママ友

 喫茶店を営んでいる香菜さん(仮名・39歳)は、9歳になる男児を育児中のママ。この喫茶店は香菜さんの夫である啓介さん(仮名・45歳)の実家で、普段は啓介さんと香菜さんの2人で切り盛りをしている。

「喫茶店は、夫のお父さんと3人で営業していました。ただ、義父は高齢で過労のため倒れてしまったこともあり、ここ数カ月は夫婦で営業しています。20人も入れば満員になる店なのですが、まだコロナ禍以前の客入りには戻っていないですね。でも人を雇うほどの余裕はないので、夫と2人で頑張っています」

 香菜さんの息子・賢人君には多動傾向があり、保育園には預けずに幼稚園に通わせていた。賢人君は小学校に入学してからも、放課後は周りとのトラブル回避のために学童などは利用せず、自宅で過ごしているという。

「いつも1階の店舗で働きながら、上の住居部分で息子を遊ばせていました。でもじっとしていられないようで、すぐ店のほうにやって来るんです。お客さんが少ない時はいいのですが、息子はお客さん用のテーブルにおもちゃを置いて遊んだりするので、困ってしまって。声が大きいこともあり、まだまだ手がかかります」

 香菜さんの店には、幼稚園時代のママ友や、地域センターなどで知り合ったママ友がよく訪れるそうだ。

「うちに息子がいることを知っているので、ママたちも気兼ねなく子連れでやって来てくれるんです。コロナ禍はお客さんが少なかったので、ママたちの来店はありがたかったですね。同じ幼稚園、小学校に子どもを通わせる真里香さん(仮名・40歳)は、1人でもよくランチを食べに来てくれていました。年代も近いので、ママ友というより、普通の友達のような関係です」

専業主婦のママ友が「ママ起業」! セミナーの誘いを断ると思いもよらぬ態度に

 真里香さんは、ママ友の間で、よくアプリの招待メールやクーポンコードを送ってくる人として有名だったという。

「真里香さんは、ずっと専業主婦。そのため在宅でできる“ポイ活”(買い物などに使えるポイントを貯めること)に熱心でした。よく『使わなくても良いから、登録だけして』と言って、アプリの招待メールを送ってくるんです。なんでもアプリを紹介することで、真里香さんと私の双方にポイントがもらえるという仕組みで。『たった500ポイントだけどね(笑)』とメッセージには書いてあったのですが、そのためにこちらはいろいろと入力して登録しなきゃならないので、正直、面倒でした。でもお店に来てくれる手前、断りづらかったんです」

 真里香さんは善意のつもりだったのかもしれないが、その行動はどんどんエスカレートしていった。

「思い返せば、真里香さんは昔から、『今、この漫画が無料で読めるよ』とか『この無料のLINEスタンプ、かわいいからダウンロードしなよ』とか、お得情報をよくシェアしてくれていました。特に興味がない時も『ありがとう!』と返していたせいか、向こうは『いいことをした』と勘違いしてしまったのかもしれませんね」

 ただ、真里香さんの息子と賢人君はとても仲が良く、「それに彼女は、やんちゃな賢人にも優しく接してくれる」と香菜さん。2人の付き合い自体は良好だった。

 しかし、真里香さんがあることに興味を持ち始めてから、香菜さんと次第に話題が合わなくなっていったそうだ。

「真里香さんは、短大で学んだ工芸を生かして、お金を稼ぎたいと言ってきたんです。なんでも、以前、幼稚園のバザー用に手作りのミサンガを販売したら、かなり売れたので、ハンドメイドアクセサリーの販売を始めようと思う……という話でした。今は個人でも簡単にネットショップを作れるし、趣味感覚で始めるのなら素敵だなって思ったのですが、『起業したい』っていうから驚きました」

 先日、香菜さんは、真里香さんから、LINEでママ向けの起業セミナーに誘われたという。

「真里香さんは、起業した主婦のブログを読んで、オンラインセミナーなどを受講し、自分もやってみようと考えたそうです。真里香さんがハマっているブログを教えてもらって見てみたら、もともとは安い時給でパートをしていたけど、起業してコンサルの仕事を始めたら、数千万円稼げるようになった……という夢みたいな話が書いてありました。そういうのを読んで、自分もできると信じてしまったんでしょうね。それで、私にも起業セミナーを勧めてきましたが、『店の手伝いもあるし、休むことはできない』とやんわり断りました」

 そんな香菜さんに、真里香さんは驚くべき言葉を投げつけたそうだ。

「ただの誘い文句だと思うのですが、『そのままだと一生生活が苦しいよ』って言うんです。うちは喫茶店だし、実体がない商売ではないんです。それなのに、あからさまに飲食業をバカにしてきたので腹が立ちました」

 香菜さんは真里香さんに対し、「このママ起業したって人は『みんなに幸せになってもらいたいからノウハウを教える』みたいな体だけど、それが本当だったら無償でやるべきじゃないの?」と物申したそうだ。

「そうしたら、『セミナーを開くのだって会場を借りたり、進行役のスタッフが必要で、いろいろとお金がかかるんだよ』って言い返してきたので、『なんか怪しいよ』『騙されないか心配』と送ったんです。そうしたら既読はついたのに、返信が来なかった。言いすぎたかなと思ったのですが、これ以上、巻き込まれるのは嫌だったので仕方なかったです。ただ、真里香さんと会いづらくなってしまい、賢人にかわいそうなことをしたな……と後悔もしています」

 ママ友付き合いは、通常の友達付き合いとは違い、関係にヒビが入ると、子どもたちにも影響が出てしまう。真里香さんとの関係を修復するためには、ママ起業のセミナーに参加しなければならないかと思うと、「どうしても慎重になってしまう」と香菜さんは言う。

「これまで通り、子どもたちを遊ばせる関係ではいたいのですが、真里香さんはこちら側に踏み込んでくるタイプなので悩んでいます」

 起業したい人に向け、そのノウハウを指南するオンラインサロンやメールマガジンなどは、この世に山ほど存在している。なかでもママをターゲットにした起業セミナーやコンサルティングは最近よく目にするが、景気が低迷するこのご時世、「私が収入を増やさねば」という主婦層は多いのだろう。

 一口にママ起業といっても、その内容はさまざま。特技を生かしてハンドメイドを販売したり、ネイルサロンやマッサージサロンを自宅で開業したりするママのほか、育児や子育てのアドバイザーなどの肩書でセミナーを開催するなど、新事業で起業を行うママも台頭している。今ある技術や知識を生かすことができればいいが、新たに資格を取得したり、設備投資までして起業するのは、今の時代なかなかのギャンブルともいえる。

 専業主婦の真里香さんは、ママ起業向けのセミナーを受講した影響から、自分のスキルを生かした商品を販売すれば、かなり儲かると考えたのだろう。確かに向こう見ずなところがあることは否めないが、現在の日本では、子どもがいると正社員採用はおろか、非正規雇用で採用されるのすら難しい。それでもどうにか収入を増やしたいと考えた時、つい目先のおいしい話につられてしまうのは致し方ない面もある。

 今回、香菜さんは真里香さんに対し、はっきり騙されている可能性を指摘していたが、たとえ腹が立ったとしても、または真里香さんのことが心配だったとしても、それは避けたほうがよかったかもしれない。

 ママ友は、子どもの習い事や学校など、コミュニティが重なっていることが多い。真里香さんとの付き合いを避けたとしても、彼女と交流のあるママとは学校行事や委員活動などで会う機会もある。何かの拍子で真里香さんとトラブルが起きたことがうわさになるかもしれないし、自分が悪く言われてしまうケースも考えられるだろう。普通の友達のように、アドバイスすることで仲が深まるわけではないので、ママ友付き合いには「相手には相手の事情がある」という割り切りも必要だ。

 真里香さんの誘いを断りたいなら、「ほかで働くのを禁止されている」など、仕事を理由にすれば、角が立ちにくかったはずだ。ママ友付き合いは、子どもが同じ学校に通っている場合は続いてしまう。今回の起業のようなお金が絡む話や、同じように経済力が関係してくる子どもの教育方針といった家庭の事情には首を突っ込みすぎず、ほどよい距離感を保つことが大切だろう。

By Admin