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Sexy Zone、SMAP、TOKIO……椎名林檎のジャニーズ提供楽曲に見る共通点とは?

 菊池風磨主演の7月期連続ドラマ『ウソ婚』(カンテレ・フジテレビ系)の主題歌であるSexy Zoneの新曲「本音と建前」は、椎名林檎の書き下ろし曲だ。

 椎名林檎・東京事変が所属する音楽事務所「黒猫堂」のホームページには、「sexy zone 此処に在りらむ」と題された林檎のコメントが記載されている。

 これは、「初めてのご注文、ありがとうございます」という書き出しの文章で、メンバー4人の声を「こちらの煩悩を駆り立てる罪な銘器揃い」と評し、その魅力を余すことなく詰め込みたいと感じたとつづり、さらには4人のそれぞれの魅力について、丁寧に紹介されている。

 かくしてでき上がった楽曲「本音と建前」は、「食材を買い溜めし過ぎて、開けるたび中から品物が落ちてくる冷蔵庫みたくなっちゃった」とのこと。つまり同曲は、林檎が感じる4人の魅力――「銘器」の良さを存分に引き出し、可能な限りパンパンに詰め込んだものだというふうに受け取れる。

 シングルのリリースこそ9月20日とやや先ではあるが、放送中のドラマではすでにオンエアされている「本音と建て前」。Sexy Zoneメンバーが“椎名林檎”の世界観に丸ごと飛び込み、しかしそれでいて、“椎名林檎”に飲み込まれてもいない。同曲には、“椎名林檎”と“Sexy Zone”のせめぎ合いが感じられ、「パンパンの冷蔵庫」の意味が理解できた気がした。

TOKIO「雨傘」SMAP「真夏の脱獄者」「華麗なる逆襲」――椎名林檎のジャニーズ提供曲のこれまで

 言うまでもなく林檎がジャニーズのグループに楽曲を提供するのはこれが初ではない。

 彼女が初めてジャニーズに楽曲を提供したのは2008年リリースのTOKIOのシングル「雨傘」。リズムもメロディも複雑な構成で、しかもキーの幅も広い楽曲を、当時ヴォーカルを務めていた長瀬智也は見事に歌いこなした。ちなみにカップリングの「渦中の男」も、林檎が作詞作曲を担当している(いずれも編曲は東京事変)。

 12年には、SMAPに「真夏の脱獄者」を提供。アルバム『GIFT of SMAP』収録の同曲は、ファンキーなイントロから始まり、SMAPが得意とするソウルフルな魅力が前面に押し出された作品だ。また、15年リリースのシングル「華麗なる逆襲」も、林檎が作詞作曲を担当しており、ゴージャスな雰囲気を持つポップチューンだと話題を集めた。

椎名林檎にとってのジャニーズNo. 1楽曲は少年隊「stripe blue」

 林檎が手掛けたジャニーズ楽曲について考えるとき、思い出す一曲がある。それは少年隊の5thシングル「stripe blue」だ。

 というのも、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の特番でジャニーズ名曲特集が組まれた際、コメント出演した林檎はジャニーズNo. 1楽曲として、「stripe blue 」を挙げていた。錦織一清、東山紀之、植草一秀は、歌詞や振り付け、歌い分けなどにおいて、それぞれ異なった解釈を行っており、三者三様の個性を際立たせながら、それでいて三位一体の輝きを放っている点を評価していたのだ。

 この「stripe blue」に対する評価は、彼女がジャニーズに曲を書く際、常に意識していることなのではないか。「雨傘」では、ヴォーカリスト・長瀬、そして曲を演奏するTOKIOメンバーそれぞれの演奏の個性が発揮されながらも、楽曲としてのまとまりに秀でていたし、SMAPの「真夏の脱獄者」に関しては、林檎本人が、「stripe blue」を念頭に置いたとも語っていた(そもそもSMAPは、メンバーの個性の際立ち方においては、ジャニーズ屈指のグループだったが)。

 そして、林檎は今回、Sexy Zoneの「本音と建前」でも、同じことをしようとしているように思う。冒頭に示した通り、林檎はSexy Zone4人のメンバーの声の個性を大きな魅力として感じているし、これは少年隊を評価するコメントとも通ずるものがあるからだ。

 また林檎は『関ジャム』で、ジャニーズは古典を含め、あるゆる分野への基礎、型がしっかりとあり、それをプロジェクトごとに違いを楽しませることができる点を“強み”として挙げていた。

 その「違い」とは、王子様路線の王道アイドルソングだったり、イケイケ路線のダンサブル楽曲、はたまた統一感のある群舞や華麗なアクロバットを見せる方向のものだったり、さまざまあると思うが、その解像度をわかりやすく際立たせてくれるのが椎名林檎楽曲なのかもしれない。

 Sexy Zoneは、Sexy時代を創り出したり、Mildが地球の裏側でWildにひっくり返ったりするデビュー曲「Sexy Zone」(11年)に始まり、曲中に“俳句”を盛り込んだ2ndシングル「Ladyダイヤモンド」、真夏とクリスマスを融合させた3rdシングル「Sexy Summerに雪が降る」、そして“ドバイ”を舞台にした5thシングル「バィバィDuバィ〜See you again〜」など、デビュー当初は、ある意味で“ジャニーズにしかない”、ときには“トンチキ”と評される発想の曲を歌うグループという印象が強かった。

 一方で、「Knock! Knock!! Knock!!!」(デビューシングル「Sexy Zone」初回盤D収録)や「IF YOU WANNA DANCE」(12年発売の1stアルバム『one Sexy Zone』収録)など、実はデビュー当初から、王道のジャニーズソングとは一線を画す、いろんな曲調の楽曲にチャレンジしてきた。

 その後、メンバーの成長に伴うように、大人の男らしさを強調する楽曲なども増え始め、15年の「カラフルEyes」(10thシングル)では、これまでとは雰囲気の異なるスタイリッシュでソウルフルな楽曲に挑戦し、新たなステージへとシフトチェンジ。

 さらにその流れを発展させ、完成させたのが昨年6月リリースの8thアルバム『ザ・ハイライト』だ。世界的な流行でもあるシティ・ポップ色の強い楽曲群で、ビジュアルイメージも含め、完成度の高さが魅力の一枚となった。

 これまでさまざまなジャンルの楽曲を歌ってきたSexy Zone。「本音と建前」は、大人な雰囲気を持つジャジーな旋律が印象的なインパクトの強い一曲だが、林檎が彼らの表現してきた世界観を統合し、可視化させた作品ともいえるかもしれない。きっとSexy Zoneの新たな魅力が、誰の目にもわかりやすく映るだろう。加えて、メンバーそれぞれの個性を一つに集約させながらも、それぞれの魅力にブーストをかけるのが林檎曲の持つ力であると考えると、同曲は、今後のSexy Zoneの方向性をさらに進化させる“転機”となるかもしれない。

By Admin