「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
コロナ禍が明けた今年、これまで中止されていた盆踊りやラジオ体操といった夏ならではの行事が各地域で復活。ママたちはその手伝いに駆り出されるため、「毎日忙しいのに、さらに負担が増えた」という声も聞こえてくる。今回は、当番をサボるママ友との付き合い方に頭を悩ませているお母さんの声を取り上げる。
PTA委員と校外委員のダブル任務で大忙し!
都内にある小学校に5年生の娘を通わせている薫さん(仮名・38歳)。彼女は、玩具メーカーの広報として勤務しながら、今年はPTAの広報委員と校外委員の委員長を務めている。
「うちの小学校は在学中に一度はPTAの委員か役員をやらなければならないルール。それとは別に、校外委員と呼ばれる委員活動もあるんです。校外委員は、主に学校外の活動がメイン。交通安全のための旗振り役や登校班のグループ作成、祭りなどの地域活動の手伝いなど、活動は多岐にわたり、必ず担当が回ってくるにもかかわらず、PTAの委員のほうは免除にならないので大変なんです」
校外委員は、住んでいる地区などにもよってルールが異なるが、「高学年で担当することになるとPTA委員・役員と兼任になってしまうこともある」と薫さんは言う。
「私はフルタイムで働いているので、これまでPTA委員・役員は避けてきました。でも来年は、娘が中学受験をする年なので、5年生のうちに済ませてしまいたいと思ったんです。学級委員のような定期的な集まりがある委員よりも、必要な時だけ集まればいい広報なら……と思って選びました。ところが、住んでいる地区の校外委員も選任されていまい、夏休み中は子ども向けイベントの手伝いにも呼ばれるように。校外委員がこんなにも忙しいとは思いませんでした」
校外委員に選ばれたのに……理由をつけてサボるママ
薫さんと一緒に校外委員を務めているのが、息子が同学年という晴香さん(仮名・40歳)。
「晴香さんは、家が近所なので、なんとなく顔見知りだったのですが、小3の時に引っ越してきたみたいで、あまり付き合いがないんです。うちの地区の校外委員はみんなで3人。旗振り当番なども分担していたのに、晴香さんは下の子の送迎を理由に当番をサボるようになりました」
旗振り当番など、期日が決まっているものは、家庭内でスケジュールを調整し、両親のどちらかが担当するのが通例だ。しかし当日、晴香さんもその夫も旗振りに姿を現さなかったため、それに気づいた別の保護者から、校外委員の委員長である薫さんに連絡が入ったという。
「くじ引きで委員長になったのですが、まさか旗振りをサボった人の代わりをすることになるとは思いませんでした。晴香さんに連絡したところ、『下の子を保育園に送ってからやるつもりだった』と言っていて、悪びれる様子もないんです。理由があるから当番はできないっていうのが通るなら、みんなそうしたいですよ……」
夏休みとなり、PTAの広報委員の活動は休止中だという薫さん。しかし、校外委員の活動は、むしろ活発だ。
「コロナ禍が明けた今年は、夏祭りの受付当番や、ラジオ体操の手伝いなどがあります。ラジオ体操は朝7時からなのですが、校外委員は準備のために6時半には会場の公園に行かなければなりません。先日、眠い目をこすりながら会場に行ったら、なんとまた晴香さんが来なかったんです。あとで『体調不良なので行けません』とLINEが来ました。それなら仕方ないけど、私だって多忙の中、頑張って早起きして手伝っているのに……」
薫さんがママ友に聞いた話によると、晴香さんはPTA委員の活動は「ちゃんとやっていた」という。
「PTAの委員活動は、先生の協力が必要となるので、手を抜いて学校側の心証を悪くしたくないと、みんな真面目にやるんですよね。でも校外委員は地域のイベントの運営や交通整理など学校外の活動なので、手を抜いてしまうんだと思うんです」
薫さんは、平日にPTA委員や校外委員の仕事が発生する場合、半休を取って対応している。
「晴香さんはパートタイムで働いているようなんです。これはママ友の意見ですが、『校外活動で働く時間が減ると手取りも減るから、サボってるんじゃない?』と……。実際、PTAも、フルタイムで働いているママさんが仕事を休んで業務をしている一方、パートや時間給で働くママは『シフトをずらせない』という理由で休むケースが多いんですよ」
共働き家庭が増えた昨今でも、PTAや校外委員の活動はなくならない。薫さんは、まだ残り半年間の任期がある中、晴香さんに「担当業務はきちんと行ってほしい」と伝えるか迷っているという。
「PTAにしても校外委員にしても、『自分がやらなくてもほかの誰かがやる』という雰囲気があるせいか、必ず業務をやらない人が出てくる。でも、旗振り当番にせよ、夏祭りにせよ、ラジオ体操にせよ、前もって日程が決まっているのだから、調整して対応すべきだと思うんです。晴香さんにも、ちゃんと業務をやってほしいのですが、関係が気まずくなるのは嫌だし、どう伝えればいいのか……」
なにかとトラブルが多いPTA活動だが、今回、話題に上った校外委員と呼ばれる活動もまた、忙しいママたちの悩みの種になっているようだ。
ちなみにこの校外委員、ほかにもバザーや市民ホールでの映画の上映会といった行事の手伝いも含まれているという。ただでさえ負担となっているPTAの活動以外に、校外活動の手伝いも発生するとなると、ママたちから不満が噴出するのも仕方ない。
校外委員の活動は、地域の人との付き合いが薄いママの場合、子どもが参加しないことを理由に手伝わない人も出てくる。今回の晴香さんもよそから転居してきただけに、まさにこのケースに当てはまるだろう。その尻拭いを、昔からこの地域に住んでいる人=薫さんがするはめになったという構図のように見えた。
では、薫さんは晴香さんに対し、どうやって「校外委員の業務をきちんとやってほしい」と伝えたらよいのだろう。
そもそも校外委員は、子どもの学年がバラバラということも多く、それまで交流が乏しかったママ友と一緒に活動しなければいけないケースが目立つ。そんな関係性の相手に対し、いきなりストレートに「きちんとやってほしい」と伝えるのは確かに角が立ちやすいだろう。
できれば、委員をやっているもう一人のママも含めて、「その業務がいかに重要か」「委員が一人でも欠けると、大変であるという事実」を、会議の体で伝えるのがよいと思う。ママ友は、子どもを介した付き合いのため、価値観や立場も違うと思って間違いない。なるべくママ同士、関わり合いになりたくないと考えている人もいるだけに、「あくまでこれは仕事」というスタンスで話をしてみてはどうか。
サボるようなママは、ママ同士の付き合い自体が希薄で、ほかのママがどのようにして活動を行っているのかを知らない可能性もある。薫さんが正社員で、有休を使って活動をしているという事情を話せば、晴香さんにもその大変さがわかってもらえるような気もする。
一番よくないのが、何も言わずに、晴香さんの代わりに業務をしてしまうこと。「自分がいなくても事が進む」とわかると、晴香さんはますます活動に参加しなくなってしまうだろう。
任期が決まっていると、サボりがちな人のしわ寄せがきても、我慢してしまうというママもいる。しかし、周りと協力し、お互いの状況を理解し合い、一人ひとりの負担が減るようになるのが、やはり望ましいと思う。