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錦戸亮『離婚しようよ』で見せた新しい挑戦――宮藤官九郎とのタッグ3度目で“次のステージ”へ

ByAdmin

8月 19, 2023 #錦戸亮

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当ててドラマをレビューする。

 Netflixで配信されているドラマ『離婚しようよ』は、三世議員の東海林大志(松坂桃李)と、国民的人気女優・黒澤ゆい(仲里依紗)が離婚するまでを描いたコメディだ。

 脚本は宮藤官九郎と大石静の共作。各話を分担するのではなく、役割分担をある程度決めた上で、交互に加筆修正を加えていく往復書簡形式で全話を書いたという。その結果、全体の基調となっているコメディテイストと、大志を中心とする男性の描写には宮藤の個性が色濃く出ており、ゆいを中心とする女性の描写には大石の個性が強く反映されている。その意味で2人の作家性が適材適所でうまく噛み合ったドラマと言えるが、2人の個性が混ざり合うことで意外な面白さも生まれている。

 それが、錦戸亮演じる加納恭二の存在だ。
 
 恭二はゆいの不倫相手で、パチンコで生計を立てながら、アーティスト活動をおこなっている謎めいた男。「生きてるのに死んでるみたいな人」だと、ゆいによって語られる。
 
 宣伝では恭二は「色気ダダ漏れの自称アーティスト」だと紹介されていたが、この色気は彼が何も持たず、何事にも執着していないからこそ漏れ出しているのだろう。

ドラマ全体を食ってしまった『ラスト・フレンズ』の錦戸亮

 錦戸はナタリーに掲載された『離婚しようよ』のインタビューで、「色気って出すものではなくて漏れるもの」だと語っている。この「漏れるもの」という表現は、恭二という人間を的確に表現していると同時に、錦戸の芝居の本質を突いていると感じた。

 数々の映画やドラマに出演してきた錦戸だが、代表作というと2008年に放送された浅野妙子脚本の連続ドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)が真っ先に思い浮かぶ。
 
 錦戸が演じたのは、区役所の児童福祉課に務める及川宗佑。宗佑は表向きは真面目な公務員なのだが、恋人の藍田美知留(長澤まさみ)を愛するあまり、束縛して暴力を振るうDV男で、劇中では悪役として描かれていた。

 美知留を守ろうとする仲間たちの友情を美しく描くドラマとして本作は作られていたのだが、愛しているのに恋人を傷つけてしまう宗佑の歪んだ愛情のほうが際立ってしまい、錦戸の芝居がドラマ全体を食ってしまったというのが、放送当時に抱いた印象だ。
 
 普通のドラマなら憎むべきDV男の宗佑が、とても魅力的に思えたのは、錦戸の芝居が抑制されたもので、演技の中に余計な作為が感じられなかったからだろう。

 その結果、宗佑が抱える深い哀しみが身体中から染み出しており、それが恋人に対する暴力となって爆発するときに、暗い色気となって漏れ出していた。
 
 ボソっと呟くような口調と暗く沈んだ何かを訴えるような眼差しは、最新作の『離婚しようよ』に至るまで続く錦戸の芝居の基本的なトーンだが、抑制された芝居から何かが滲み出る錦戸の演技は『ラスト・フレンズ』で開花したと言える。

『離婚しようよ』は錦戸亮にとって、過去作を踏まえた上での新しい挑戦

 宗佑のように表向きは社会にうまく溶け込んでいるが、心の奥底に自分でもうまく言語化できない鬱屈を抱えていて、それがいつ爆発するかわからない青年を演じさせると、錦戸の右に出るものはいない。

 『ラスト・フレンズ』と同じ08年に放送された、宮藤脚本の連ドラ『流星の絆』(TBS系)で演じた有明泰輔もそういう青年だった。宮藤と錦戸は、『離婚しようよ』も含めて、これまで3作のドラマでタッグを組んでいるのだが、本作は初めて2人が組んだ作品である。

 泰輔は兄弟で詐欺グループを結成し、悪人を騙して制裁を加えながら、両親を殺した犯人を追う被害者遺族の青年。普段はヘラヘラと楽しそうにしている泰輔が、被害者遺族と言われ続けることに対する苛立ちを吐露する第2話は、とても印象に残っている。
 
 また、14年の同じく宮藤脚本の学園ドラマ『ごめんね青春!』(同)で演じた原平助も、学校では生徒に優しい教師として信頼されているが、学生時代に火災事件を起こしたことで好きな人を傷つけてしまったという罪悪感を抱えて生きている男だった。

 しかし、この2作で宮藤が錦戸に与えた役は、表向きは饒舌で明るく、下ネタなども口にする等身大の青年。同じように鬱屈を抱えていても、寡黙で謎めいていた『ラスト・フレンズ』の宗佑とは真逆の性格だ。そして物語も、悲劇ではなく喜劇にすることで、鬱屈から解放される姿を描いていた。このあたりは、女性脚本家の浅野妙子が考える錦戸のイメージと男性脚本家の宮藤が考える錦戸のイメージのズレが見えて面白い。

 『離婚しようよ』の恭二でも同じズレが起こっており、前述の「意外な面白さ」とはまさにこのことだ。物語前半の恭二は大石が『セカンドバージン』(NHK)等で描いてきたような、女性から見た謎めいたカッコいい男だったが、終盤に向かうにつれて、等身大の男へと変わっていく。おそらく後半は宮藤のカラーが色濃く出ていたのだろうが、2人の脚本家が投影する相反するイメージを、錦戸は芝居の中で見事に融合させていた。その意味でも恭二役は、過去作を踏まえた上での新しい挑戦だった。

 19年にジャニーズ事務所を退所して以降、しばらく俳優業は休止していた錦戸だが、『離婚しようよ』をきっかけに、次のステージに立ったと言えよう。これから再び、出演作が続々と増えていくことを待望している。


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