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  • 日. 9月 8th, 2024

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女優・久保田紗友は「とにかく真面目で視野が広い」——映画『Love Will Tear Us Apart』宇賀那健一監督が語った“魅力”

女優・久保田紗友は「とにかく真面目で視野が広い」——映画『Love Will Tear Us Apart』宇賀那健一監督が語った“魅力”

 映画『サラバ静寂』(2018年)や『転がるビー玉』(20年)などで知られる宇賀那健一監督の最新作『Love Will Tear Us Apart』が絶賛公開中だ。

 同作は、とある出来事をきっかけに、主人公・真下わかばと関わった人物が次々と殺されていくサスペンスホラー&ラブロマンス映画。数々のドラマや映画に出演している今注目の新進女優・久保田紗友が主演を務め、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満らがキャストに名を連ねている。

 今回、「サイゾーウーマン」では宇賀那監督にインタビュー。「狂おしいほどの、愛。」というキャッチコピーがつけられた映画の見どころはもちろん、製作のきっかけや撮影の裏側についてお話を伺った。

オーディションで選んだ、久保田紗友と青木柚の“魅力”

――まずは、製作過程のお話からお聞きしたいのですが、撮影はいつ頃行われたのでしょうか?

宇賀那健一監督 2021年の8月に撮影しました。コロナ禍での撮影だったので制限されることが多く、しかも真夏ということもありハードな現場ではありましたが、なんとか形にできました。

――今作は、渡辺紘文さんとの共同脚本ですよね。「狂愛」がテーマになっていると思うのですが、ラブストーリーとホラー要素を掛け合わせようと思ったきっかけは?

宇賀那監督 ずっとジャンルというものに縛られていることに違和感があったんです。そんな中、ここ数年、主に海外などでジャンルを越境する作品がすごく増えているなと感じていて、挑戦するなら今じゃないかなって思ったんです。

 あと、「喜劇王」と呼ばれたチャールズ・チャップリンの言葉で、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というものがあるんです。渦中の人物はすごく必死で、いろんな感情が渦巻いているけど、冷静になって俯瞰してみると、笑い話になったりすることってあるじゃないですか。近年、世界では新型コロナウイルスの流行や戦争など、いろんなことが起きている中、そういった不条理を笑い飛ばせるような作品にしたいなと思いました。

――渡辺さんとはどのように製作を進めていったのでしょう。

宇賀那監督 共同脚本の場合、いつもは初稿まで僕が担当することが多いんですが、今回はロングプロットまでを僕が書いて渡辺さんに初稿を起こしてもらい、あとはお互い確認し合いながら、「こういうアイディアがほしい」などと細かいやりとりをしながら本の精度を上げていきました。

――メインキャストはオーディションで選ばれたそうですね。

宇賀那監督 キャスティングの上で大きなポイントとなったのは、いかに“真面目にやりきるか”という点です。コメディ要素があるところで、演者が良かれと思って「笑わせよう」とすることってよくあるんです。でも、観客側の見る目って実は肥えていて、そのあざとさがすぐにバレて冷めてしまうこともよくあると思っていて。そうはしたくないので、とにかく「真面目」ということにはこだわりました。

 特に、主人公のわかばは、彼女の気持ちに入り込んで、最後まで演じきることができるかというところを重視しました。オーディションでは、みなさんにシリアスなシーンとコミカルなシーンを演じてもらったんですが、久保田さんは感情を高ぶらせた演技がとにかく素晴らしく、惹きつけられました。そしてその後、コメディシーンを演じる前に、「ちょっとだけ待ってもらっていいですか」と、気持ちが切り替わるまでの時間を確保したいと言ってくれたんです。その役や芝居に対する真面目さが、わかばの真面目さに通じるところがありました。

 また、男性キャストに関しては、一番最後にオーディションに参加したのが、青木さんだったんです。セリフを言いながらも、セリフと感情が必ずしも一致してないところがすごく人間臭くて魅力的だなと感じ、惹きつけられました。

――お二人と事前に役柄について話すことはありましたか?

宇賀那監督 僕は基本的に、撮影前に本読みをすることはありません。相手の出方を想定して役を演じると、だんだん自分自身の芝居に飽きて、本番で「何か違うことをやらなきゃ」と勝手に思い込むことがあるんですよ。こちらからしたら、それがベストの芝居なのに、考えすぎたり、どう演じるべきか迷ってしまう人がいるので、それをできるだけ避けたい、鮮度を保ちたいという意味で、今回も本読みは行いませんでした。でも、役について話し合う時間は設けて、「このとき誰がどういう感情でこういう行動をしたか」という質問に答えたり、参考作品に関するお話をしましたね。

 ただ、セリフの言い回しなど、「このほうがいい」と現場で変更したことはあったものの、大きく変えた部分はほぼありません。僕は脚本を変えることに対してネガティブではないんですが、今回、“当て書き”的に変えていった部分はなかったように思います。

――それだけ、お二人が役柄にぴったりだったということですね。撮影を通して、印象の変化はありましたか?

宇賀那監督 第一印象から大きくは変わっていなくて、久保田さんはとにかく真面目にどう若葉役をやりきるかということを第一に考えてくれていました。同時に、とにかく視野が広い人だなと思いましたね。スタッフやほかのキャストのことだったり、常に気にしてくださっていた。座長として、すごく信頼感がありました。現場では細かいディスカッションも重ねていったんで、そこで信頼関係がより強固になっていったなと思います。

 青木さんに関していえば、役をどう広げていくかを深く考えていた印象です。芝居はもちろん、「キャラクターを表現するためにどんなアクションをしたら一番面白いか」とか「この衣装を見せたほうが、この役のパーソナリティが出るんじゃないか」など、小道具や衣装など細かい部分の使い方からも自分の役の魅せ方を考えているんだなと実感しました。本当に“映画愛”があって、俳優部だけじゃない、製作に関わる各部署の重みもちゃんと知っている人だなとも思いましたね。

――そんな魅力あふれる久保田さんや青木さんをはじめ、若い役者が多かったと思いますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

宇賀那監督 座長として、久保田さんがいてくれるというところの安心感はありましたね。それと同時に、キャンプシーンなどは、本当に和気あいあいとしていましたし、みんながこの映画を良くしようと向き合ってくれたからこそ、現場の雰囲気はとても良かったです。

――ベテランの吹越満さんの演技も印象的でした。

宇賀那監督 とても楽しんで演じてくださって、うれしかったです。吹越さんからどんどん演技や魅せ方について提案してくださいました。

 僕は映画作るときに、「自分が見たことないものを見たい」と思っているし、お客さんとして映画館に行くときもそう思っていて。俳優部の皆さんも、やったことない役に挑戦してみたいという思いを持っていて、そこにこの作品がうまくハマったのかなとは思っています。

――撮影はどこで行ったのですか?

宇賀那監督 コロナ禍で撮影に際しての制約が多く、今後しばらく同じような場所で撮影する映画が増えるんじゃないかと思い、いろんな場所を転々としたいなと考えました。かといって、普通のロードムービーとして撮るのではなく、殺人鬼に追いかけ回されるロードムービーにしたら面白いんじゃないかなと思い、栃木、茨城、神奈川、東京、奄美と、各地で撮影しました。

――特に、クライマックスのシーンはホラー作品とは思えない、とても綺麗なロケーションでした。ちなみに、今回、監督が特に力を入れたシーンはどこですか?

宇賀那監督 パブで撮影したシーンは、僕のやりたかったことがすべて集約されているので、芝居に関しては珍しくかなり粘ってしまったかなとは思います(笑)。でも、撮影していて一番楽しかったシーンでもありました。いい芝居を撮れたという達成感もあったし、造形的な意味でも見せ場、エンターテインメント要素もてんこ盛りだったので、ハードな撮影でボロボロになりつつ、たくさん笑ったシーンでもありますから、ぜひ注目していただきたいです。

――今作では、宇賀那監督の作品では初めてタイトルが英語になっているのも気になりました。イギリスのロックバンド「ジョイ・ディヴィジョン」の同名楽曲からインスパイアを受けたのでしょうか?

宇賀那監督 そうです。彼らはポストパンクを代表するバンドの一つで、パンクの新しいスタイルを提示した人たち。今作も、ホラー映画のその後、“ポスト・ホラー”として自分の中では位置づけています。

 また、作中では、良かれと思ってやったことが、「Love Will Tear Us Apart(愛は2人を引き裂いていく)」ことにつながるし、同時にスラッシャームービーとして「2人を引き裂いていく」っていう意味も込めた、ダブルミーニングとなっています。

 それに、ジョイ・ディヴィジョンのボーカルのイアン・カーティスは、1980年に23歳の若さで自死を図ったんですが、真面目な性格で知られていました。彼の真面目さを、キャラクターたちに乗せていきたいなっていう意味で、このタイトルにしたんです。

――これまでさまざまなジャンルの作品を生み出してきた宇賀那監督ですが、どのようなところからストーリーのアイディアを思いつくのですか?

宇賀那監督 デビュー作の『黒い暴動』(16年)は、元ガングロギャルたちの物語なんですが、その前に撮った自主映画のオーディションに参加してくれた木夏咲という女優が、地元の山形でガングロギャルをしていたそうで、当時のエピソードを聞いて、ストーリーが思いついたんです。彼女いわく、山形の一部のガングロギャルの間では“階級”があって、自分のレベルを上げるためには、河原で決闘して相手のルーズソックスを奪い取るか、神経衰弱で勝負するんですって。それを真顔で話していたこともあり、「ギャルならではの文化って面白いな」と興味が湧きました。

 また、娯楽が禁止された日本で音楽に出会った若者たちの姿を描いた『サラバ静寂』(18年)は、16年に風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改正されたことが製作のきっかけです。

 『魔法少年☆ワイルドバージン』(19年)は、「童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになれる」という都市伝説をモチーフにしていて、飲みの席で言った冗談がすごくウケたので、「これを映画にしたらイケるな」と(笑)。だから、映画を作るアイディアはいろんな瞬間に生まれています。

――今回の『Love Will Tear Us Apart』を拝見し、恋は人を狂わせるとあらためて感じました。恋をすればするほど、その人しか見えなくなるというか……。

宇賀那監督 そうなんですよね。本人たちは至って真面目ですが、一歩引いて考えると、キャラクターたちの行動は、狂っていないとできないことだし、愛があるからこそできることでもあるんです。

――そういった意味では、この作品はホラー映画が苦手な人でも見やすい作品なのではないかと思いました。日本での公開に先駆け、『ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭』にてワールドプレミアも行われましたが、海外の方の反応はいかがでした?

宇賀那監督 「そうだよね」って納得した部分と、「そうなんだ」と驚いた部分がありました。前者についていうと、海外ではスプラッターシーンで笑いが起きるんです。『ポートランドホラー映画祭』でグランプリをいただき、そのプログラマーが上映中の様子を動画に収めて送ってくれたんですが、やはり、スプラッターシーンで爆笑と拍手が起きていました。これは海外ならではの反応かなと思います。これはある種、映画のリテラシーが高いからこそ起こる文化でもありますよね。

 一方で、後者については、海外の方のレビューを見ると、わりと真面目な感想が多くて、「いじめとかネグレクトとか、貧困から生まれた悲劇へのアンサーだ」という声もあり、そういった捉えられ方もするんだなと意外に感じました。

――では最後に、「ぜひここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

宇賀那監督 この映画は、僕の中では、「超純愛映画」として作りました。もちろん、ホラーシーンもないわけではありませんが、あくまでジャンルの一つとして、その要素を借りているだけなので、ホラー映画は苦手という方でも楽しんで見ていただけると思っております。新しい愛の形を描いた作品だと思いますので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。

 

『Love Will Tear Us Apart』
公式サイト:https://lwtua.jp/

監督:宇賀那健一
脚本:宇賀那健一 渡辺紘文
出演:久保田紗友、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満ほか
プロデューサー:當間咲耶香 宇賀那健一 共同プロデューサー/編集:小美野昌史
制作プロダクション:VANDALISM
製作:「Love Will Tear Us Apart」製作委員会
配給:VANDALISM/エクストリーム
2023年/87分/シネスコ/日本/カラー/DCP/R15+
(C)『Love Will Tear Us Apart』製作委員会

By Admin

 映画『サラバ静寂』(2018年)や『転がるビー玉』(20年)などで知られる宇賀那健一監督の最新作『Love Will Tear Us Apart』が絶賛公開中だ。

 同作は、とある出来事をきっかけに、主人公・真下わかばと関わった人物が次々と殺されていくサスペンスホラー&ラブロマンス映画。数々のドラマや映画に出演している今注目の新進女優・久保田紗友が主演を務め、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満らがキャストに名を連ねている。

 今回、「サイゾーウーマン」では宇賀那監督にインタビュー。「狂おしいほどの、愛。」というキャッチコピーがつけられた映画の見どころはもちろん、製作のきっかけや撮影の裏側についてお話を伺った。

オーディションで選んだ、久保田紗友と青木柚の“魅力”

――まずは、製作過程のお話からお聞きしたいのですが、撮影はいつ頃行われたのでしょうか?

宇賀那健一監督 2021年の8月に撮影しました。コロナ禍での撮影だったので制限されることが多く、しかも真夏ということもありハードな現場ではありましたが、なんとか形にできました。

――今作は、渡辺紘文さんとの共同脚本ですよね。「狂愛」がテーマになっていると思うのですが、ラブストーリーとホラー要素を掛け合わせようと思ったきっかけは?

宇賀那監督 ずっとジャンルというものに縛られていることに違和感があったんです。そんな中、ここ数年、主に海外などでジャンルを越境する作品がすごく増えているなと感じていて、挑戦するなら今じゃないかなって思ったんです。

 あと、「喜劇王」と呼ばれたチャールズ・チャップリンの言葉で、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というものがあるんです。渦中の人物はすごく必死で、いろんな感情が渦巻いているけど、冷静になって俯瞰してみると、笑い話になったりすることってあるじゃないですか。近年、世界では新型コロナウイルスの流行や戦争など、いろんなことが起きている中、そういった不条理を笑い飛ばせるような作品にしたいなと思いました。

――渡辺さんとはどのように製作を進めていったのでしょう。

宇賀那監督 共同脚本の場合、いつもは初稿まで僕が担当することが多いんですが、今回はロングプロットまでを僕が書いて渡辺さんに初稿を起こしてもらい、あとはお互い確認し合いながら、「こういうアイディアがほしい」などと細かいやりとりをしながら本の精度を上げていきました。

――メインキャストはオーディションで選ばれたそうですね。

宇賀那監督 キャスティングの上で大きなポイントとなったのは、いかに“真面目にやりきるか”という点です。コメディ要素があるところで、演者が良かれと思って「笑わせよう」とすることってよくあるんです。でも、観客側の見る目って実は肥えていて、そのあざとさがすぐにバレて冷めてしまうこともよくあると思っていて。そうはしたくないので、とにかく「真面目」ということにはこだわりました。

 特に、主人公のわかばは、彼女の気持ちに入り込んで、最後まで演じきることができるかというところを重視しました。オーディションでは、みなさんにシリアスなシーンとコミカルなシーンを演じてもらったんですが、久保田さんは感情を高ぶらせた演技がとにかく素晴らしく、惹きつけられました。そしてその後、コメディシーンを演じる前に、「ちょっとだけ待ってもらっていいですか」と、気持ちが切り替わるまでの時間を確保したいと言ってくれたんです。その役や芝居に対する真面目さが、わかばの真面目さに通じるところがありました。

 また、男性キャストに関しては、一番最後にオーディションに参加したのが、青木さんだったんです。セリフを言いながらも、セリフと感情が必ずしも一致してないところがすごく人間臭くて魅力的だなと感じ、惹きつけられました。

――お二人と事前に役柄について話すことはありましたか?

宇賀那監督 僕は基本的に、撮影前に本読みをすることはありません。相手の出方を想定して役を演じると、だんだん自分自身の芝居に飽きて、本番で「何か違うことをやらなきゃ」と勝手に思い込むことがあるんですよ。こちらからしたら、それがベストの芝居なのに、考えすぎたり、どう演じるべきか迷ってしまう人がいるので、それをできるだけ避けたい、鮮度を保ちたいという意味で、今回も本読みは行いませんでした。でも、役について話し合う時間は設けて、「このとき誰がどういう感情でこういう行動をしたか」という質問に答えたり、参考作品に関するお話をしましたね。

 ただ、セリフの言い回しなど、「このほうがいい」と現場で変更したことはあったものの、大きく変えた部分はほぼありません。僕は脚本を変えることに対してネガティブではないんですが、今回、“当て書き”的に変えていった部分はなかったように思います。

――それだけ、お二人が役柄にぴったりだったということですね。撮影を通して、印象の変化はありましたか?

宇賀那監督 第一印象から大きくは変わっていなくて、久保田さんはとにかく真面目にどう若葉役をやりきるかということを第一に考えてくれていました。同時に、とにかく視野が広い人だなと思いましたね。スタッフやほかのキャストのことだったり、常に気にしてくださっていた。座長として、すごく信頼感がありました。現場では細かいディスカッションも重ねていったんで、そこで信頼関係がより強固になっていったなと思います。

 青木さんに関していえば、役をどう広げていくかを深く考えていた印象です。芝居はもちろん、「キャラクターを表現するためにどんなアクションをしたら一番面白いか」とか「この衣装を見せたほうが、この役のパーソナリティが出るんじゃないか」など、小道具や衣装など細かい部分の使い方からも自分の役の魅せ方を考えているんだなと実感しました。本当に“映画愛”があって、俳優部だけじゃない、製作に関わる各部署の重みもちゃんと知っている人だなとも思いましたね。

――そんな魅力あふれる久保田さんや青木さんをはじめ、若い役者が多かったと思いますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

宇賀那監督 座長として、久保田さんがいてくれるというところの安心感はありましたね。それと同時に、キャンプシーンなどは、本当に和気あいあいとしていましたし、みんながこの映画を良くしようと向き合ってくれたからこそ、現場の雰囲気はとても良かったです。

――ベテランの吹越満さんの演技も印象的でした。

宇賀那監督 とても楽しんで演じてくださって、うれしかったです。吹越さんからどんどん演技や魅せ方について提案してくださいました。

 僕は映画作るときに、「自分が見たことないものを見たい」と思っているし、お客さんとして映画館に行くときもそう思っていて。俳優部の皆さんも、やったことない役に挑戦してみたいという思いを持っていて、そこにこの作品がうまくハマったのかなとは思っています。

――撮影はどこで行ったのですか?

宇賀那監督 コロナ禍で撮影に際しての制約が多く、今後しばらく同じような場所で撮影する映画が増えるんじゃないかと思い、いろんな場所を転々としたいなと考えました。かといって、普通のロードムービーとして撮るのではなく、殺人鬼に追いかけ回されるロードムービーにしたら面白いんじゃないかなと思い、栃木、茨城、神奈川、東京、奄美と、各地で撮影しました。

――特に、クライマックスのシーンはホラー作品とは思えない、とても綺麗なロケーションでした。ちなみに、今回、監督が特に力を入れたシーンはどこですか?

宇賀那監督 パブで撮影したシーンは、僕のやりたかったことがすべて集約されているので、芝居に関しては珍しくかなり粘ってしまったかなとは思います(笑)。でも、撮影していて一番楽しかったシーンでもありました。いい芝居を撮れたという達成感もあったし、造形的な意味でも見せ場、エンターテインメント要素もてんこ盛りだったので、ハードな撮影でボロボロになりつつ、たくさん笑ったシーンでもありますから、ぜひ注目していただきたいです。

――今作では、宇賀那監督の作品では初めてタイトルが英語になっているのも気になりました。イギリスのロックバンド「ジョイ・ディヴィジョン」の同名楽曲からインスパイアを受けたのでしょうか?

宇賀那監督 そうです。彼らはポストパンクを代表するバンドの一つで、パンクの新しいスタイルを提示した人たち。今作も、ホラー映画のその後、“ポスト・ホラー”として自分の中では位置づけています。

 また、作中では、良かれと思ってやったことが、「Love Will Tear Us Apart(愛は2人を引き裂いていく)」ことにつながるし、同時にスラッシャームービーとして「2人を引き裂いていく」っていう意味も込めた、ダブルミーニングとなっています。

 それに、ジョイ・ディヴィジョンのボーカルのイアン・カーティスは、1980年に23歳の若さで自死を図ったんですが、真面目な性格で知られていました。彼の真面目さを、キャラクターたちに乗せていきたいなっていう意味で、このタイトルにしたんです。

――これまでさまざまなジャンルの作品を生み出してきた宇賀那監督ですが、どのようなところからストーリーのアイディアを思いつくのですか?

宇賀那監督 デビュー作の『黒い暴動』(16年)は、元ガングロギャルたちの物語なんですが、その前に撮った自主映画のオーディションに参加してくれた木夏咲という女優が、地元の山形でガングロギャルをしていたそうで、当時のエピソードを聞いて、ストーリーが思いついたんです。彼女いわく、山形の一部のガングロギャルの間では“階級”があって、自分のレベルを上げるためには、河原で決闘して相手のルーズソックスを奪い取るか、神経衰弱で勝負するんですって。それを真顔で話していたこともあり、「ギャルならではの文化って面白いな」と興味が湧きました。

 また、娯楽が禁止された日本で音楽に出会った若者たちの姿を描いた『サラバ静寂』(18年)は、16年に風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改正されたことが製作のきっかけです。

 『魔法少年☆ワイルドバージン』(19年)は、「童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになれる」という都市伝説をモチーフにしていて、飲みの席で言った冗談がすごくウケたので、「これを映画にしたらイケるな」と(笑)。だから、映画を作るアイディアはいろんな瞬間に生まれています。

――今回の『Love Will Tear Us Apart』を拝見し、恋は人を狂わせるとあらためて感じました。恋をすればするほど、その人しか見えなくなるというか……。

宇賀那監督 そうなんですよね。本人たちは至って真面目ですが、一歩引いて考えると、キャラクターたちの行動は、狂っていないとできないことだし、愛があるからこそできることでもあるんです。

――そういった意味では、この作品はホラー映画が苦手な人でも見やすい作品なのではないかと思いました。日本での公開に先駆け、『ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭』にてワールドプレミアも行われましたが、海外の方の反応はいかがでした?

宇賀那監督 「そうだよね」って納得した部分と、「そうなんだ」と驚いた部分がありました。前者についていうと、海外ではスプラッターシーンで笑いが起きるんです。『ポートランドホラー映画祭』でグランプリをいただき、そのプログラマーが上映中の様子を動画に収めて送ってくれたんですが、やはり、スプラッターシーンで爆笑と拍手が起きていました。これは海外ならではの反応かなと思います。これはある種、映画のリテラシーが高いからこそ起こる文化でもありますよね。

 一方で、後者については、海外の方のレビューを見ると、わりと真面目な感想が多くて、「いじめとかネグレクトとか、貧困から生まれた悲劇へのアンサーだ」という声もあり、そういった捉えられ方もするんだなと意外に感じました。

――では最後に、「ぜひここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

宇賀那監督 この映画は、僕の中では、「超純愛映画」として作りました。もちろん、ホラーシーンもないわけではありませんが、あくまでジャンルの一つとして、その要素を借りているだけなので、ホラー映画は苦手という方でも楽しんで見ていただけると思っております。新しい愛の形を描いた作品だと思いますので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。

 

『Love Will Tear Us Apart』
公式サイト:https://lwtua.jp/

監督:宇賀那健一
脚本:宇賀那健一 渡辺紘文
出演:久保田紗友、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満ほか
プロデューサー:當間咲耶香 宇賀那健一 共同プロデューサー/編集:小美野昌史
制作プロダクション:VANDALISM
製作:「Love Will Tear Us Apart」製作委員会
配給:VANDALISM/エクストリーム
2023年/87分/シネスコ/日本/カラー/DCP/R15+
(C)『Love Will Tear Us Apart』製作委員会

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