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  • 土. 7月 27th, 2024

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小6初夏から中学受験は遅すぎる? 娘が伝統私立校に“駆け込み”で合格できたワケ

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験は小学3年生の2月から準備を始めるのが一般的。しかし中には、6年生から参入するご家庭もある。この遅れて中学受験に参加することを、業界用語で「駆け込み受験」と呼ぶ。一般論ではあるが、駆け込み受験はハンデありきのスタートになりがちだ。

 中学受験は、難関校になればなるほど、入試で学習指導要領を逸脱した問題を出す。受験生は、そうした問題を解くための学力を付けなければならないわけだが、駆け込み受験組はその準備期間がほかの受験生より圧倒的に短い。ハンデ戦とわかった上で参入するには、当然それ相応の理由と覚悟が必要だ。

 しかし、「早いうちから中学受験の準備をしていれば、もっと楽ができたかもしれませんが、『どうしても合格したい!』という意志があれば、乗り越えられるものだとも思います」と語るのは、現在、中学3年生の心美さん(仮名)の母、美保さん(仮名)である。

 心美さんが中学受験を決意し、中学受験塾に入塾したのは6年生の初夏のことだった。

「うちは子どもが3人いまして、私立中学なんて贅沢なことはまったく考えていなかったんです。でも、『この道しかない!』と腹をくくって受験を決めました」

 心美さんはもともと、学校が大好きな元気いっぱいの少女だったそうだが、その学校生活は6年生で一変したという。クラス替えが行われ、新しい担任のもと新学期がスタートしたものの、すぐにコロナ禍が発生した。

「緊急事態宣言で、しばらくの間、休校だったこともあり、クラスのまとまりはなかったと思います。その後、登校が再開されたのですが、心美のクラスメイトがどうやらコロナに感染したといううわさが流れて……。誰だって、なりたくてなる人はいないのに、その時の学校の対応は本当にひどいものでした。学年集会の席上、学年主任の先生が『この学年でコロナに感染した児童がいます』と発言したというんです」

 この発表を受け、子どもたち、そして親たちは“犯人捜し”をするかのように、その日の欠席者の把握に努めたらしく、結果的に欠席していた心美ちゃんのクラスメイトが“ターゲット”になったそうだ。

「その子が本当にコロナだったのかもわかりません。でも、結果として、その日以来、学校に来られなくなったんですね。どうも、子ども同士のLINEグループの中で、仲間外れのような扱いを受けてしまったようで……。心美には、それが理不尽にも恐怖にも感じる一件になったようで、まったく関係ない部外者ではあるのですが、心美まで学校に行くのを嫌がるようになったんです」

 コロナ禍でなくても、特定の子を仲間外しにするのは、小中学生の女の子同士の中ではよくある話かもしれない。しかし、心美ちゃんのように優しく、繊細な心を持つ子は、他人の痛みまで自分事のように受け止めてしまうことがある。

「心美は心ない発表をした学校の先生にも、意地悪をしたクラスメイトにも不信感しかなく、『この人たちと同じ空間にいたくない』と言いだしたんです。私も、コロナ禍を言い訳に、ロクに授業もしないばかりか、学級崩壊状態になっているクラスをどうにかしようという心意気もない学校には絶望していました。このまま地域の公立中学に入学しても、同じメンバーなのかと思うと、心美が完全な不登校に陥る可能性を否定できなかったんです」

 そんな中、美保さんは学生時代の友人から久しぶりに連絡をもらう。

「お互い、近況報告をしているうちに、彼女の娘が私立のS学院に通っていることがわかりました。その頃、メディアでは盛んに『コロナ禍における私立中高一貫校のオンライン授業』が報道されていまして、『公立とは全然違うんだぁ……』とうらやましく思っていたんです。S学院も生徒全員がタブレット端末で授業を受けており、1日たりとも授業がなかった日はないって聞かされました。『やっぱり、報道されている通りなんだ!』と感心しましたね」

 美保さんが、心美さんの学校であった出来事を打ち明けると、友人はこんなことを教えてくれたそうだ。

「S学院の担任の先生は、オンライン授業中、生徒全員の顔をパソコン画面に映し出し、一人ひとりが笑顔でいるかどうか、表情が暗い子はいないかを毎日確認してくれているそうなんです」

 美保さんの友人いわく、娘のオンライン授業の様子を少し離れたところで聞いていたところ、先生が懸命に生徒たちを元気づけようとしてくれているのが手に取るようにわかり、先生もつらいのに、本当にありがたくて、涙が出たとのこと。緊急事態宣言が明けて通常登校に戻った際、クラスはすでに一致団結しており、「この学校を選んで良かったなぁと心から思ったわ」とも言っていたそうだ。

 その友人の娘さんも小学校の時、いじめが原因で少しの間、不登校を経験。そこで、駆け込み受験をしてS学院に入学したという経緯があったといい、美保さんの心は一気に中学受験へ傾くことになる。

「友人に『小6からでも、頑張れば、まだ間に合う!』と励まされて、やっぱり、我が子には『学校、大好き!』『友達、大好き!』って環境にいてほしいって思ったんです。それで、心美にも中学受験を強く勧めました」

 それからほどなくして、心美さんはその友人の娘さんから、直接S学院のことを聞く機会を持ち、一気にS学院のファンになったという。

「S学院は難関校ではありませんが、校風の良さを誇る伝統校です。塾からも『小6の今からでは、相当厳しい!』と言われたんですが、心美は『絶対に頑張る!』と言いまして、その日から、猛勉強がスタートしました。塾の先生にも『そういうことなら、応援する』と言われ、系列の個別塾にも行くように。毎日、相当ハードでしたが、友人の娘さんにも、なんとS学院の先生にも応援メッセージをいただくことができて……最後は気合で合格をもぎ取ったようなものですね。合格を報告した際、塾の先生が本当に驚いておられましたから(笑)」

 心美さんは入学後、S学院が大切にしている「他者貢献」という精神のもと、ボランティアをする部活に入り、充実した毎日を過ごしているという。

 美保さんがニコニコしながら、心美さんの中学受験をこう振り返った。

「もう少し早めに受験に取り組んでいたら、もしかしたら、もっと偏差値の高い学校に行けたかもしれません。親って、欲深い生き物ですよね(笑)。でも、S学院に入って、毎日、楽しそうに通う心美を見ると、これが正解だったと思うんですよ。受験という目標がなかったら、心美は今も不登校だったかもしれませんから……。唯一の誤算は、心美の姿を見た下の子2人も『中学受験する!』と言っていることですかね。私、もっと働かないといけなくなりました(笑)」

 受験にはそれなりの準備期間が必要だが、心美さんのように、短期間でも気持ち次第で「大願成就」となるケースも過去、数多く見てきた。人生は「意志あるところに道は開ける」という言葉通りなのかもしれない――美保さんの話を聞いて、そんなことを思った。

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