「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
コロナ禍が落ち着いた今年の夏休み期間、レジャー施設や観光地がかつてのような盛況を見せ、ファミリー層の外出が復活したことを実感させる。同時にママ友と子連れでお出かけする機会が増えたというママも多いだろうが、今回は、「夏休みにやたらと外出に誘ってくママ友の対応に困った」というお母さんの声を取り上げる。
夫は単身赴任、小学生と園児のワンオペ育児をするママ
涼子さん(仮名・40歳)は、首都圏で小学3年生の娘と保育園の年長である息子の育児をしている。夫は、北陸地方に単身赴任中のため、自動車メーカーの総務部に事務として勤務しながら、ワンオペ育児で2人の子どもの面倒をみているそうだ。
「夫は、観光地などに展開しているホテルチェーンで働いています。コロナ禍の影響で、観光業が下火になった時も変わらず勤務していました。そして、旅行が活発になった今年、地方のホテルへ支配人として転勤に。観光業なので、こっちに戻って来られるのは平日のみなんですが、子どもは学校や保育園があるので、家族で外出することはほとんどなく、もっぱら家で過ごしています」
涼子さんの娘の陽菜乃ちゃん(仮名・9歳)は人見知りをする性格だが、保育園の頃から仲の良い彩奈ちゃん(仮名・9歳)とは、休みの日もお互いの家に行き来して過ごしている。
「彩奈ちゃんのママの望美さん(仮名・39)は、地域の祭りの手伝いを自ら申し出たりするなど、すごく社交的な性格でママ友も多い。でもここ数年は、娘同士の仲が良いので、私たち親子とばかり一緒に過ごしているんです」
涼子さんは、外出するとなると、1人で陽菜乃ちゃんと年長の男の子の世話をしなければならないため、通院など以外では、遠出はしないという。しかし、望美さん親子と一緒だと、ある程度自由に動けるため、助かっているそうだ。
「娘同士の仲が良いので、望美さんがどこかへ買い物や遊びに行く時には、うちにも声をかけてくれるんです。公園で遊ぶ以外にも、ママ友と数人で子連れ飲み会をやったり、キッザニアに行ったりもしました。娘も息子も『また行きたい』と大喜びしてましたね。こちらが子ども2人で、向こうは1人なのもあって、望美さんに負担をかけてしまうのではと気を使ってしまうんです。でも望美さんは『私は子ども好きだから気にしないで』と言って、また誘ってくれます」
さまざまな行動制限が撤廃された今年の夏は、望美さんからキャンプのお誘いがあったという。
「望美さんは、かつて飲料メーカーの配達員をしていたことから、その時のお客さんや同僚など、とにかく知り合いが多い。今年の夏は、当時から付き合いのあるママ友家族とキャンプへ行くと聞いていたんですが、うちも一緒にどうかと誘われたんです。私はアウトドアが苦手だし、単身赴任中の夫も参加できないのでやんわり断ったものの、望美さんは『男手がないとキャンプは行けないと思うから、複数の家族で行けるのはいい機会だよ』と何度も誘ってきました」
涼子さんが行くのを渋ったのには、ほかにも理由があった。
「望美さんは、私がキャンプに来るほかのママとも仲良くなれると思っているんです。そのママとは、夏祭りで一度、会ったきり。子どもも娘とは別の小学校に通っています。なのに望美さんは『すごくいい人だから安心して』『子どもたちもすぐ仲良くなれると思う』と……。『知らない人とキャンプに行くのは抵抗ある』とは言いづらくて困ってしまいました。最終的には、どうしてもずらせない予定が入ったと嘘をついたのですが、モヤモヤしてしまって」
「一緒にUSJへ行こう」ママ友からの誘いをどうやって断ったらいいのか?
そんな折、今度は望美さんから、連休などを使ってユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に行かないかと誘ってきたそうだ。
「早割りだと宿泊代が安くなるプランがあるらしくて、一緒に行こうと言ってきました。でも以前、望美さん親子と東京ディズニーランドに行った時、もう彼女と大型テーマパークに行くのは嫌だなと思う出来事があったんです」
望美さんから「子どもが中学生になるとパスポート代が高くなるから、今のうちに行こうよ」と誘われ、ディズニーランドに行くことになったという。
「望美さんの作ったスケジュールは分刻みで、どのアトラクションに乗るとか、食べる店もすべて決めてあったんです。本当はもっとゆっくりしたかったのにと、疲れ果ててしまいました。なので、USJでもそうなるかと思うと避けたくて。しかも望美さんが言うには、彼女と仲の良いママ友も興味を持っているらしく、『みんなでコテージを借りて泊まろう』と計画しているんです。やっぱりよく知らない人と泊まるのは嫌だなぁと思ってしまいますし、自分だけ断るのも気まずくて」
涼子さんいわく、望美さんには普段からお世話になっており、下の子の世話で手いっぱいの時には、陽菜乃ちゃんと彩奈ちゃんが一緒に通っているスイミングスクールの送迎を引き受けてくれることもあるとのこと。
「そういうのもあって、お誘いを断り続けるのも気まずく、悩んでいます。これからも仲良くはしたいのですが、そういう場合、どうやって断ればよいのか……」
ママ友付き合いは、人によってさまざま。学校行事やPTA委員など、必要に迫られた時のみ連絡を取るだけの相手や、子ども同士が同じお稽古に通い、毎週のように顔を会わせる相手や、また親子ともども仲が良くて一緒に旅行などにも行くような相手など、人それぞれ接し方は違うだろう。とはいえ、お互いの認識が異なってしまうこともある。
今回の望美さんは、もともと社交的なタイプだが、子ども同士の仲が良い涼子さんのことは、かなり親密なママ友と思っているのではないか。そのため、長い時間を共にするテーマパークやキャンプに行こうと提案してくるのだろう。しかし、相手に気を使ってしまう内気タイプの涼子さんは、望美さんに対してそこまでの気持ちはないのだろうと感じた。
ただの知り合い程度の関係ならば、涼子さん側からスパッと一緒に出掛けるような付き合いを辞めてしまえばいいが、ママ友となると、子ども同士の関係が第一なのでそれはできない。となると、ある程度、自分の中でルールを作り、「1泊など宿泊を伴う外出は難しい」「レジャー施設は苦手なので行きたくない」と、これは決定事項であるとして、相手に伝えてみてはどうだろうか。
その際に、ワンオペや夫がいないことを理由にすると、逆に相手が「私が手伝う」と言って、断りづらくなる状況になりかねないので、あくまで「自分が行きたくない」と思う理由を伝えたほうがいいといえる。
もしもそれで、関係が気まずくなってしまったら、今度は、涼子さんから誘ってみてはどうだろうか。相手からの誘いを受ける側だから、自分の行きたい場所に行けないし、自分の思う通りに過ごせない。望美さんも誘われる側になった時、「ママ友からのお誘いは断りづらい」と気づいてくれるかもしれない。