今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
工藤會トップの控訴審
始まりましたね、工藤會トップのお2人の控訴審。初公判は9月13日でした。傍聴に行きたかったのですが、まだコロナが怖いし、傍聴券が当たるとも思えないので、ひたすら報道をチェックしてました。58席の傍聴券を求めて385人が並んだそうです。
「倍率7倍弱」とは意外でしたね。前はもっと倍率高かったです。一審判決は23席に475人(約20倍)、一審求刑は6席に127人(約21倍)だそうですから、今回は行ってもよかったかなあ。でも当たらなくてガッカリすると、猛烈に疲れますしね。
次回9月27日は、トップお2人の被告人質問なので、倍率は爆上がりするのではないでしょうか。
「和歌山カレー事件」の弁護士が主任弁護人に
ざっとおさらいすると、今回の五代目工藤會の野村悟総裁と田上文雄(稼業名)会長の裁判は、
1. 1998年の漁協元組合長Kさん射殺事件
2. 2012年の元警部銃撃事件
3. 13年のナース刺傷事件
4. 14年の「Kさんのお孫さん」刺傷事件
について殺人罪や組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などに問われています。
19年からの一審・福岡地裁では、お2人とも関与を否定して無罪を主張されましたが、野村総裁は死刑、田上会長は無期懲役の判決を受けました。
判決後に弁護団は全員解任、二審からはドキュメンタリー映画『死刑弁護人』(東海テレビ)への出演などで知られる安田好弘先生が主任弁護人に就任されて話題になりましたね。
そして、二審では3と4の事件については否認されていた田上会長が関与を一部認めたことが注目されています。殺意はなく、「ちょっと脅かしてやれ」というつもりだったそうです。会長が主張を変えた理由は、「無関係な野村総裁を巻き込み、有罪とされる事態に直面し、不徳を恥じた」からだそうですが、もちろん検察側は「(野村総裁を)かばってるだけ」と冷たいものです。
検察は当然そう思うでしょうが、そもそも一審判決は「推認」という言葉が39回も出てきてますよね。「推認だけで死刑」のほうが、よっぽど説得力なさすぎではないでしょうか。弁護側も一審判決は「推認に推認を重ねた不当判決」と批判してます。
まあ安田先生が弁護人を務められた和歌山カレー事件も、「推認」で死刑判決が確定してますから、判例的には「推認だけで死刑はアカン」とはならないようです。
ていうか、今回の裁判は「最凶暴力団」というわりには、けっこう昔の事件なんですよね。1なんか20年くらい前に有罪判決が確定してますしね。
今回改めて起訴したのは、野村総裁の関与を示す「新証拠」(=関係者証言)が出てきたからだそうですが、これもハッキリ犯行を指示した感じではなかったですね。
ちなみに3の事件は盗聴した電話音声が裁判で再生されたそうですが、「明日予定通り」とか「あれのあれは、あれまた用意しとうけ」「今日の夜は反省会」とか、明確にナース襲撃を指示したものとは言い難く、だから「推認」するしかないんです。「家族に牛丼買って帰る」とかもあって、むしろほのぼのします。
また初公判では、1の事件で08年に刑が確定して受刑中の組員さんが証人として出廷しています。そして「事件と関係のない総裁らに申し訳ない」と述べた上で、事件は別の工藤會関係者の指示だと明言しました。もちろん検察は「信用できない」としていますが。
ちなみに1の事件は、工藤會の関係者3人が逮捕起訴されて、1人は無罪でした。「工藤會だからとりあえず起訴」でコケた好例といえます。
この事件を取材されていた宮崎学さんは、「『ヤクザは悪くない』」とは言っていない。公正な裁判をやってほしいだけだ」とコメントされていましたが、その通りです。「悪い人かどうか」ではなく、事実関係だけでジャッジしてほしいですよね。
ほぼ意味がない「三審制」
一審と二審は別の裁判のはずですが、そうはいかないんですよね。特にヤクザの場合はそうです。主張を変えたところでハードルは高いのです。
たとえば15年、六代目山口組傘下の小西一家・落合勇治総長(肩書は当時)の事件です。これは本にもなってますが、抗争事件について、落合総長の子分氏が検事さんから司法取引を持ちかけられ、「事件は落合総長が首謀者」とウソの供述をしたそうです。この供述もあって、一審で落合総長は無期懲役の判決を受けます。
二審では子分さんが「ウソをついてしまい、落合さんに申し訳ない」と一審の供述を撤回、総長の関与を否定しました。でも、判決は変わらずに18年に無期懲役が確定して現在も服役中です。
「重要な新証拠」であっても、裁判官も検察官もそうは思ってはくれないのですね。何のための三審制なんですかね。今後もちゃんとウォッチしていきたいと思います。