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3時間遅刻のフワちゃんに「ありがとう」――絶対に怒らないアンミカに思うこと

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「フワちゃん、遅刻してくれてありがとう」アンミカ
『踊る!さんま御殿!!』(10月24日、日本テレビ系)

 ポジティブを前面に押し出す女性芸能人というのは、定期的に現れるように感じている。いま芸能界、特にテレビの世界で存在感を示すポジティブキャラといえば、タレント・アンミカを想像する人は多いのではないだろうか。巧みなトークとリアクションで通販番組を盛り上げる「通販の女王」としてブレークしたアンミカは、2022年版から毎年『ポジティブ手帳』(小学館)を発売するなど、ポジティブキャラで人気を博している。

 そんな彼女のスピリチュアル好きは、案外知られていないことかもしれない。彼女の夫は、アメリカ人の実業家セオドール・ミラー氏だが、この結婚に至る出会いは、非常にスピリチュアル的なものだったようだ。

 アンミカは、今年9月にABEMAで始まった恋愛リアリティーショー『GIRL or LADY~私が最強~』でMCを務めており、その合同取材会で、こんなエピソードを披露していた。

 アンミカは宮崎県・高千穂にある“国際結婚の神様”といわれる神社に通っており、そこで「ご先祖さまが許す素敵な人がいたら、いつかめぐり合わせてください」とお願いをしたという。すると、アンミカはその後、「シルバーの服を着た宇宙人みたいな男の人の後ろ姿が急に出てきて、世界中の国の言葉で『愛してる』って言ってくる」という不思議な夢を見たそう。

 フツウなら「変な夢だな」と思って忘れてしまいそうだが、「それで今の旦那さんと仕事のゴルフ会でご一緒した時に、『あ、夢で見た人や。今の言葉は夢で言ってたやつや』とわかって、『この人と結婚するんや』ってピンと来た」そうだ。

 そんなアンミカはいろいろな番組で、極貧家庭に育ったことを明らかにしている。「家族7人で四畳半の部屋に暮らし、朝4時に起きて青果市場に行き、売り物にならないからという理由で捨てられている果物を拾いにいくことを“遠足”と呼んでいた」「病院に行くとお金がかかるから、お母さんは院内に入らず、医者を外に呼び出して、“立ち話”のスタイルで治療のアドバイスをしてもらっていた」など、なかなかなエピソードを持っている。しかし、両親は愛情を惜しみなく注いでくれたため、その環境を恨んだことはないそうだ。

 確かにアンミカが親を恨んでいる様子はないし、どの番組に出ても人の悪口は言わない、口角も常に上がっている……けれど、それでもなぜか彼女がポジティブだと私には思えないのだ。

 そんなことを頭に浮かべながら、10月24日放送の『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)を見ていた。

 この日のテーマは「アンミカ軍団VS仲良し女子軍団が大集合」。アンミカ軍団は、フワちゃん、3時のヒロイン・福田麻貴、モデル・すみれ、Crystal Kayと年齢も職業もさまざま。ほかにも、吉田沙保里軍団(元バドミントン日本代表・潮田玲子、元バレーボール日本代表・狩野舞子)らが出演していたが、アンミカは吉田とも親しいそうだ。

 番組内では、アンミカが51歳にして、日本のディズニーランドに初めて行った話が明かされていた。この時はフワちゃんや福田といった軍団メンバーに加え、青山テルマや滝沢カレンも一緒だったそうだから、アンミカの人脈は相当広い。今の時代、年長者だからといって先輩風を吹かせば、後輩に煙たがられてしまうだけに、若い人が集まってくるのは、彼女の人望が厚い証拠ともいえるだろう。

 そんなアンミカだが、フワちゃんに関しては思うところがあるという。それは“遅刻癖”。

 フワちゃんと一緒にスピリチュアル好きの聖地・伊勢神宮に行くことになったアンミカは、前日に「神様のところに行くんだから、ちゃんとした格好で靴下も履いて」と指示し、朝は電話で起こしてあげることにしたそう。ところが、フワちゃんは起きることができず、電車に乗り遅れ、「焦りすぎて、便所のスリッパ履いてきた」というのだ。しかし、フワちゃんは靴下を買うなどして服装を改め、「本当にごめんなさい、二度とやりません」と上手に謝るため、アンミカは許してあげたくなると話していた。

 一方、フワちゃんは、反省しているように見える嘘泣きのコツがあると言っていたが、そんなことは知らないアンミカは、彼女が3時間遅刻しても絶対に怒ることはないそう。「大丈夫や。フワちゃんがいま遅れたってのは、神様が逆に遅らせてくれたんや。フワちゃん、遅刻してくれてありがとう。ほら、見てみ。フワちゃんが遅刻してくれたおかげで、時計、10時10分。ちょうどきれいに見える時間や」とフォローしてくれたと、フワちゃんが明かしていた。

 フワちゃんを置いて先に行ってもよかったはずなのに、そうしなかった理由について、アンミカは「道を案内する神様のところに行くのに遅れるってことは、意味があるんじゃないかなと思って、怒って行くのもなんだし」「天気が悪かったのが待っている間に良くなってきたから、これも待てってお導きかな」「起こる出来事を信頼するというか」と説明。ポジティブかつスピリチュアル的に解釈をしたようだ。

 日本のスピリチュアル界の首領・江原啓之センセイはかつて『オーラの泉』(テレビ朝日系)で、「すべては必然」とよく話していた。偶然に起こったように思う出来事も、守護霊からの“メッセージ”なのだと解説していたが 、アンミカの「起こる出来事を信頼する」発言はおそらく同じ意味だろう。なので、アンミカの考え方はスピリチュアル的にはアリなのだと思う。

 しかし、この考え方は果たしてポジティブなのだろうか。上述した通り、アンミカは神様のところに「怒って行くのもなんだし」と思い、自分をクールダウンさせたことを明かしている。特に伊勢神宮というスピリチュアルの聖地に行くのだから、落ちついた気分で行きたいという気持ちなのだろうが、別の見方をすると、アンミカは怒りをネガティブなものと決めつけ、ネガティブを避けようと躍起になっているのではないか。

 人はいろいろな感情や思考を持つ。極端な例でいうと、誰かに腹が立って「殺してやりたい」と思ったり、周囲にその気持ちを漏らすことは、人生に一度くらいはあるのではないか。この感情をポジティブかネガティブかで分けるのなら、間違いなくネガティブな感情だが、とはいえ、実際に殺す人はほぼいない。

 ではなぜ、人が誰にも言えないような悪い感情をあらわにすることがあるのかといえば、そうすることで、ストレスを発散し、 気持ちを切り替えられるからだろう。

 だが、アンミカの場合、悪い感情を持つこと自体を禁止しているように見えて、何とも不自然に感じられるのだ。もしそうなら、ネガティブなことを思うことすらいけないというアンミカのスタンスは、実はネガティブといえるのではないだろうか。ネガティブなことを思っていると悪いことが起こる……そんな恐れに囚われているように見えるのだ。

 スピリチュアルが好き、そして、ポジティブなようで実は神経質なまでにネガティブ要素を排除するというと、不倫が露見する前のベッキーが思い浮かぶ。

 平成中期、ポジティブで売っていたベッキーは、当時「ポジティブルール」なるものを掲げていたが、その中の一つに、「黒はお葬式の色だから、仕事では着ない」というものがあった。

 確かに葬儀の際は黒の喪服を着るから、黒い服を見ると、不祝儀を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、リトルブラックドレスという洋服が示す通り、黒はフォーマルな場所やパーティーでも着る、おしゃれな色でもある。ネガティブを恐れすぎると、ネガティブな側面にばかり目がいき、バランス感覚が損なわれてしまうのかもしれない。

 今の芸能人にとって、キャラはとても大事なもの。ポジティブキャラというのは、いつの時代にも需要があるから、アンミカの売り出し方は正解といえるのだろう。しかし、本当は怖がりなのに、それを振り払ってポジティブを演じているのだとしたら、カメラの回っていないところでは休養をたっぷり取って、疲れを癒やしてほしいものだ。

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