「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
はやり廃りが激しい子ども向けコンテンツの中で、親子二世代にわたって支持されているのが『ポケットモンスター』シリーズ。ママやパパたちの中には、子ども時代に1996年に発売された同シリーズ初のゲーム『ポケットモンスター赤・緑』(ゲームボーイ用)に熱中し、現在は子どもと一緒に最新ゲームのプレイをしているという人も少なくないのではないだろうか。
今回は、『ポケモンメザスタ』というアーケードゲームにハマっているママ友と、価値観の違いを感じてしまったというあるお母さんの苦悩を取り上げる。
『ポケモンメザスタ』にハマった小1の息子
関東近県で、小学1年生の龍太君(仮名・7歳)の育児をしている奈津子さん(仮名・38歳)。彼女には、息子を同じ空手教室に通わせている小春さん(仮名・39歳)というママ友がいる。
「小春さんは、同じ保育園に子どもを通わせている頃からの付き合い。息子同士も気が合うようで、お互いの家を行き来するような間柄なんです。保育園の頃は、公園でのびのびと遊んでいたのですが、小学校に入学すると周りの影響からか『Nitendo Switch』の『ポケモン』シリーズや、『ポケカ』(ポケモンカードゲーム)で遊び始めるようになりました。最近では、ショッピングモールのゲームコーナーにある『メザスタ』(ポケモンメザスタ)にハマリだしたんです」
『メザスタ』とは、1回100円で遊べると謳っているアーケードゲーム。バトルで捕まえたポケモンをタグと呼ばれる形で所有できるゲームで、いま小学生の間で大ブームになっているという。
「小春さんと一緒に出掛けた時に、『メザスタ』の前に人だかりができていたので見物していたんです。そうしたら、子どもたちが『やりたーい』と言いだし、試しに遊ばせることにしました。その1回だけのつもりだったのですが、小春さん親子はドハマりしてしまったみたいで、以降『一緒に「メザスタ」やりに行かない?』と誘われるようになったんです」
息子のために「Nitendo Switch」を買うまで、奈津子さんはゲームをほとんどやったことがなかったという。
「『メザスタ』というか『ポケモン』自体に興味もなく、ついていけなくて……。逆に小春さんは、子どもの頃から『ポケモン』が好きだったみたいで、1000を超えるポケモンの種類にも詳しい。小春さんに誘われて、子連れでグッズを売っているショップにも行ったのですが、私はまったく面白くなかったですね」
とはいえ、当初は「息子がハマっているのであれば、やらせてあげたい」と思っていた奈津子さん。しかし、『メザスタ』のシステムを知り、「やっぱりやらせたくない」と感じたそうだ。
「とにかくお金がかかりすぎるんです。ほしいタグが出るまでバトルを続けると、その分課金しなければならず、どんどん100円玉がゲーム機に吸い込まれていくというエグいシステムで……息子の教育にもよくないと思ってしまいます」
奈津子さんは息子に「1回500円まで」と伝えているが、「それだとすぐゲームが終わってしまうので、息子がだだをこねる」そうだ。
「一方で小春さんは、こと『メザスタ』には、お金に糸目をつけない。バトルになるとどんどん課金させ、結果的に、タグが増えていっているんです。息子はそれを見て、さらに『僕ももっとやりたい!』と騒ぎだすので困ってしまいますよ。子どもって、ほかの子が遊んでいるのを“見ているだけ”ってできないんです」
奈津子さんは、『メザスタ』にハマりすぎた小春さんについていけなくなったという。
「小春さんは、レアなタグを手に入れるために、課金が止まらない様子。この前なんて、『みんなでフードコートに行ってご飯を食べよう』と言っていたのに、『メザスタ』に課金しすぎてしまったためか、突然『やっぱり今日は、自宅でご飯にしよう』と言いだし、その日はそのまま解散になったんです」
小春さんがここまで『メザスタ』に課金しているのは、SNSの影響があるのではないかと奈津子さん。
「小春さんのSNSを見ると、『メザスタ』のタグをいくつもアップしているんです。最初は重複したタグをほかの人に譲ったり、交換するためだったようですが、レアなタグを手に入れたと投稿すると、SNSで反響があるんだとか。それで、止まらなくなっていったのだと思います」
奈津子さんは、小春さんとの付き合いは続けたいものの、息子を一緒に『メザスタ』で遊ばせるのはやめたいと考えている。
「小春さんと一緒におしゃべりをするのは楽しいです。でも、これ以上小春さん親子と『メザスタ』をやるのは遠慮したいですね。1回のゲームに500円以上も払うなら、もっと別のことに使いたい。でも、私のほうから『今日は家で遊ばない?』と聞いてみても、すぐ『「メザスタ」しに行こうよ、子どもたちもやりたいみたいだし』と誘ってくるんです。息子も行きたがるから断りづらいし、そもそも子ども同士が先に約束をしてきてしまうので、後から『行けなくなった』と言うのも気が引ける。ゲームに対する価値観がまったく違うので、どう伝えるべきか困っています」
ママ友付き合いでよくあるのが、価値観の違いから生じる亀裂だが、こと金銭感覚の違いは、より解決が難しい。例えば、庶民なのに子どもをセレブ幼稚園に入れてしまい、毎週のように行われる子連れランチ会や、キャンプなどの泊まりがけのイベントに誘われ、困り果てているというママの話を聞いたことがある。
それぞれ家庭の事情は違うが、金銭面の理由から誘いを断ると、子ども同士が交流する機会を奪ってしまうことになるだけに、ママたちは対応に苦慮しているようだ。
ゲームそのものに興味がない奈津子さんにとって、『メザスタ』への課金がムダに感じてしまうのはよく理解できる。たとえ彼女自身が、「1回のゲーム代は500円まで」と決めていても、小春さん親子が課金し続けるのは止められないし、まだお金の価値が理解できていない奈津子さんの息子は、「友達が遊んでいるのに、なぜ自分はゲームできないのか?」と不満を抱いてしまうことだろう。
子ども同士の関係を踏まえてもなお、これ以上の出費を望まないのであれば、奈津子さんは小春さんに、『メザスタ』で遊ぶのは控えたいとはっきり言うべきだ。そこでポイントになるのは、角が立たないようにする“伝え方”だろう。
例えば、「夫から注意された」など、家庭で問題になってしまったと伝えれば、奈津子さん自身の意思ではないというニュアンスになるので、小春さんも「じゃあしょうがないよね」と納得してくれるはず。
逆に「子どもの教育によくないと思う」などと伝えると、小春さんの考え方を否定することになり、関係に決定的な亀裂が生じるので避けたほうがいいだろう。
とはいえ、『メザスタ』以外にも、小学校高学年や中学生の子どもが、スマホを使った課金ゲームにハマり、親に高額請求がいくケースは後を絶たない。なるべく早い時期から、子どもにお金の価値を伝え、ゲームは月の限度額を決めて遊ぶものだと教育する必要はありそうだ。そこはママ友への対応とは切り離して、子どもに言い聞かせるべきだと思う。