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『石田さんチ』新作放送直前! 「なぜ大家族番組は好かれるのか」臨床心理士が解説

ByAdmin

11月 15, 2023 #テレビ, #視聴率

  日本テレビ系ドキュメンタリーシリーズ『大家族石田さんチ!』の34作目『密着26年!大家族石田さんチに新たな命が誕生!~人生は続くよ、どこまでもSP~』が、11月15日午後7時より3時間にわたり放送される。

 同シリーズは、「三好家の大家族スペシャル」を引き継ぐ形で1997年にスタート。世帯平均視聴率で2ケタを取ることも多く、2021年12月放送の『密着24年!孫が誕生3時間SP 大家族石田さんチ~君が、パパになるなんて…~』は11.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。

 昨年9月放送の前回『大家族 石田さんチ~あの末っ子の子育て&マイホーム大作戦!3時間SP~』も9.3%と高視聴率をマークした。

 そんなテレビ放送以外にも、番組プロデューサーによるブログ「ゆるゆる石田さんチ日記」や、同スタッフと母・千惠子さんによるYouTubeチャンネル「『ゆるゆる動画』大家族 石田さんチ」も人気の“石田さんチ”。今月10日に配信された番組告知動画によると、今回の放送は「過去一の感動と家族、親子、兄弟の絆の物語」だという。

 なお、テレビ各局はこれまでさまざまな大家族に密着してきたが、番組が注目を集める一方で「大家族ならではの貧困で、苦労を強いられる子どもたちを見ていられない」という声も少なくなかった。

 “石田さんチ”の場合は裕福であるため、これには当てはまらないものの、やはり「大家族番組は苦手」という層は一定数いるようだ。

 「サイゾーウーマン」では、過去に大家族番組が「好きな人」と「嫌いな人」のそれぞれにどんな心理が働いているのかに迫るため、神奈川大学心理相談センター所長および人間科学部教授である臨床心理士・杉山崇氏にインタビューを実施。『大家族石田さんチ』の新作放送前に、あらためて公開する。


※初出 2018年1月20日

 テレビ界のヒットコンテンツの1つである“大家族番組”。これまで、三好家、青木家、林下家(ビッグダディ)、石田家、渡津家など、さまざまな大家族がテレビに登場し、大家族ならではの苦労やトラブルを赤裸々に明かし、それを一丸となって乗り越えるさまをお茶の間に届けてきた。こうした大家族番組は、軒並み高視聴率を叩き出し、その多くがシリーズ化されている。

 しかしそんな中、こうした大家族番組が「嫌い」という人も少なくない。1月14日、あるTwitterユーザーが、大家族番組に関してこんなツイートを投稿し、話題を集めた。

「ぶっ叩かれるの覚悟で言いますけど、私は大部分の大家族番組というものが嫌いで、無計画に子作りして案の定家計が火の車、子供達にはお腹いっぱいご飯を食べさせず、挙げ句の果てには『中学出たら働け』。そんな実録家族ドラマのどこに感動要素があるのかわかりません」

 このツイートは多くの共感を呼び、大反響を巻き起こした。確かにテレビで取り上げられる大家族は、経済的に困窮している場合が多く、また子どもたちが中卒で社会に出るというケースも珍しくはない。

 『貧乏に負けるな!2男12女ワケアリ大家族』(テレビ東京系、2014年4月放送)で取り上げられた、島根県浜田市の渡津家は、育ち盛りの子どもの食事が「おかずはブロッコリーだけ」「白いご飯に卵のそぼろを混ぜたもの」のみという日も。

 また、『「水トク!」激闘大家族スペシャル 17歳で産んだ我が娘が17歳でまさかの妊娠』(TBS系、15年1月)に登場した、福岡県福岡市の濱本家の長女は、家計を助けるために中卒で就職。実家の家事も手伝うという働き者だったが、終盤で「仕事を辞めて遊びに出るようになったこと」への罰として、親から丸刈りを強制されるという衝撃的な展開を迎えていた。

 こうした大家族の生々しい現実を見せられることを「不快」と感じ、さらにそれを美談に仕立て上げられることに疑問を覚える人たちがいるのも頷ける。しかし、前述の通り、大家族番組はヒットコンテンツ。放送を楽しみにしている視聴者も多いのだ。

 大家族番組を「好き」という人と、「嫌い」という人――それぞれどんな心理が働いているのだろうか。神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授である臨床心理士の杉山崇氏は次のように語る。

 杉山氏は、まず大家族番組を「好き」という人について、「癒やされている部分がある」と指摘する。

「暮らしは決して楽ではなく、人数が多い分だけ心の葛藤もあるけれど、それなりに楽しそうにたくましくやっている……大家族のそういった点に、『うちの家もこうだ』『家族に問題を抱えているのはうちだけじゃないんだ』と思っている視聴者はいると思います。家庭内のややこしいことって、たいていみんな隠すんですけれど、ああいう番組だと、それが見られるわけです。社会心理学の用語で『社会的比較』といわれていますが、“ほかの人と比較すること”で、癒やされる面もあると感じます」

 一方で、普段見ることのできない“他人の家のいざこざ”を見るというのは、「一種の“覗き見”的楽しみもある」と杉山氏は続ける。

「覗き見をしていると、“自分のことを考えなくてよくなる”んです。『自分のことについて考えると、人はクヨクヨする』という研究があり、ほかに何か注目することがあって、自分から目がそれると、気が楽になる……という。そういう意味では、よその家のゴタゴタは、癒やしになるのかもしれませんね」

 では、「嫌い」と感じる人の心理はどうなのだろうか? 杉山氏は、Twitterの「大家族番組が嫌い」というツイートについて、「子どもがひもじい思いをしている様子を、“子どもの貧困問題”と捉えているのかもしれません。そういった理由から、大家族番組に嫌悪感を示す人はほかにもいるでしょう」と語る。

「『嫌い』という人は、自分のことで頭がいっぱいの人とも言える。例えば、『自分がもっとしっかりしなきゃ』とか『もっとこうしたい』というふうに、向上心があって自分のことに一生懸命になっていると、『人の家のゴタゴタを見て何が面白いんだ』となりがちだと思います。もっと言うと、“自己志向が高い人”は、大家族番組にイライラしてしまうでしょうね。こういう人は、『自分はこうあるべきだ』と思いがちで、さらに、ほかの人ができないと腹が立つんです。自分より苦労している人を見ると、比較して『私も同じくらい大変』『自分よりはマシ』と思うのではなく、『何やってるんだ、けしからん!』と感じるわけです。そう考えると、大家族番組が好きな人は、『自分も他人も許せる人』といえるのではないでしょうか」

 自己志向が高くなる背景は、かねてからネット上で指摘されている「男性は大家族番組が嫌い」という説に通ずるものがありそうだ。

「自己志向が高くなりやすい人は、いろんな責任を背負っている人。無責任な人はなりにくいです。『男性は大家族番組が嫌い』といった傾向があるのは、社会的に男性の方が責任を背負いやすい面と関係があるのかもしれません」

 今後も各テレビ局が放送するだろう大家族番組。自分は彼らの姿をどう受け止めているのかを考えるのも一興かもしれない。

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