宝塚歌劇団は11月14日、9月末に劇団員が自死した事件について会見を開き、外部の弁護士による調査チームの報告書を読み上げ、遺族に謝罪。長時間労働の問題を認めたものの、これまでに「週刊文春」(文藝春秋)で伝えられた上級生からのいじめやパワハラは認めず、業界内外から疑問の声が相次いでいる。
9月30日、兵庫・宝塚市のマンション敷地内で、劇団員の25歳女性が死亡したこと、また、自ら身を投げて転落死した可能性があることなどが報じられ、世間に大激震が走った。
今年1月と2月の時点で、「文春」は劇団内のいじめ疑惑をスクープ。宙組の娘役がヘアアイロンで下級生の額にやけどを負わせた事件が発生していたことを伝えたのだ。当時、劇団側は「事実と異なる記事」と主張したものの、劇団員の自死が発覚した後、10月5日発売の「文春」は、転落死した団員について“いじめの被害者”であると報道。さらに、同12日発売号では“被害者は4人の上級生から集団リンチのような目に遭っていた”と伝え、加害者の実名も掲載した。
劇団側は10月7日にも会見を開いていたが、企画室長・渡辺裕氏は「劇団としては、いじめという事案があると考えていない」などとコメント。一方で劇団員急死の事実関係や原因を把握するため、外部の弁護士らによる調査チームを立ち上げると明言していた。
「11月14日に実施された会見では、その外部弁護士らによる調査結果を公表。しかし、その内容は『近年稀に見るひどさ』『不快すぎる』などと、ネット上で批判が噴出しています」(スポーツ紙記者)
宝塚歌劇団はなぜ批判されているのか?
劇団の会見が「ひどすぎる」と指摘されているポイントは主に5つあり、以下の通りとなる。
1.いじめやパワハラを否定
「文春」で加害者の実名まで報じられたいじめ・パワハラ疑惑について、専門家による調査報告では確認できなかったと発表。亡くなった劇団員が長時間労働していたことは認めたが、上級生による指導は「必要性が認められ、想定の範囲内」と説明した。「文春」には、劇団内部からのいじめ・パワハラに関するかなり詳細な情報がリークされていたものの、「例えば『嘘つき野郎』『やる気がない』といった発言の有無についてはすべて伝聞情報であり、実際にそのような発言があったことは確認されていません」と突っぱねたとあって、この発表には納得できない人が多かった様子だ。
2.ヘアアイロンでのやけどは「日常的」
「文春」で伝えられたヘアアイロンによるやけど事件に関しても、“やけどをさせられた”のかは「事実であるかを判断することは困難」と説明。また、亡くなった団員はやけどを負った後、劇団診療所で薬を塗ってもらっていたはずだが、「ヘアアイロンで火傷をすることは劇団内では日常的にあることであり、記録は残していない」という。ネット上では「ヘアアイロンのやけどが日常的に起こるとは思えない」「開き直りではないか」と批判が巻き起こった。
3.4名がヒアリングを辞退、その理由を明かさず
また、外部弁護士によって宙組生、卒業生、スタッフらにヒアリング調査を実施したものの、宙組生66人のうち、4人が聞き取りを辞退したと説明した。理由は「差し控える」としており、その人物は誰かという臆測が飛び交う事態に。かねてから指摘されている劇団の“隠蔽体質”を問題視する人が続出した。
4.“過密スケジュールの改善”で逃げ切ろうとしている
全員にヒアリングできていない、その理由も明かさないとする中、いじめやパワハラの存在は認められなかったと結論付けた劇団側。さらに、「長時間の活動と上級生からの指導が重なり、心理的負荷となった可能性は否定できない」と話し、今後の対策としては「劇団員の負担を減らすため稽古や公演のスケジュールを見直す」とするに留めた。これを「過密スケジュールの改善だけで、世間の批判から逃げ切ろうとしている」と怒る人がネット上に多数みられた。
5.宝塚次期理事長が遺族に「証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい」
この日、遺族側も会見を実施しており、宝塚側がいじめ・パワハラを否定したことに反論し、再検証を求めた。それを受け、宝塚の村上浩爾取締役は「そのように言われているのであれば、証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい」とコメント。ネット上では、大切な家族を喪った遺族を挑発するような発言であり、あまりにも「冷酷」とする意見が噴出した。なお村上氏は12月1日付で辞任することを表明した現理事長・木場健之氏の後任者だけに、宝塚のこれからを憂慮する人も相次いでいる。
劇団側は11月15日、再検証の予定は現時点で「未定」としているというが、このままでは遺族も、世間も納得しないだろう。