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  • 土. 7月 27th, 2024

犯罪データベース

明日あなたが被害にあうかもしれない

ビッグモーター社と同レベル? 闇金社員までだました、“悪徳”中古車販売店

 こんにちは、元闇金事務員、自称「元闇金おばさん」のるり子です。

 近頃、ビッグモーター社をはじめとした中古車屋さんにおける不法行為が連日報道されておりますが、私の勤めていた貸金業者の取引先にも、それと同レベルのひどい中古車屋さんが存在しておりました。今回は、そのことについて、お話ししていきたいと思います。

 当時、私の勤めていた貸金業者では、商工ローン(単名手形や自社振りの小切手で融資すること。要連帯保証人)や手形割引が主力商品でしたが、不動産はもちろん、時計や自動車、有価証券などの担保貸付も行っていました。中でも自動車担保を利用するお客さんは多く、ピーク時には30台近くの車両を預かっていたと記憶しています。

 人気の秘密は、周囲にバレにくく、ローン中の車両でも担保として扱っていたこと。不渡時の回収現場においても、債務者や連帯保証人の車を預かって回収するのは当たり前なことで、現金化が容易なことから率先的に取り上げていました。

「スピードファクトリー(仮名)の電話が止まっています。車担保のみの客で、信用貸付はありませんが、いかがしましょう」

 ある朝、イケメン営業社員の佐藤さんが担当するスピードファクトリー社の電話が止まっていることが判明しました。顧客管理の日課として、残高のある取引先一社一社に毎朝必ず電話をかけて営業状況を確認するため、その過程で判明したのです。

担保車両はポルシェカレラ2とメルセデスベンツ190E

 スピードファクトリー社は、ドイツ車を専門に取り扱っている中古車屋さんで、数多くの取引実績がありました。在庫車両を担保に入れて資金を作り、お客さんから注文を受けたほかの車両を仕入れて、転売するというやり方をしていたのです。

 そのため借入期間は、いつも短く、長くても半月ほど。法律上、1日でも借りてしまえば半月分の金利を取られてしまいますが、外車販売の利益率は高いようで、それでも十分な利益が見込めるとのことでした。

 ちなみに金利は、名変可能な正規車が月2分、とかし(名義変更不可)の車は月3分で、その他1台につき月3万円の車庫代を徴収します。車の保管場所は、練馬区や埼玉県の中でも不便な場所にある月極め駐車場で、会社が支払う駐車料金は1台につき8,000円でした。全局面において、隙なく利益をあげる金田社長の商魂が、ここにも垣間見えるようです。

「車の評価と印鑑証明の期限は、大丈夫なのか?」
「2台預かっておりまして、現在の残高は700万。評価合計は820万です。印鑑証明の期限は、あと20日ほどあります」
「売却の段取りを進めろ。代表の自宅と店舗の状況も確認しておけ」

 この時点で預かっていた車両は、書類(名変書類一式のこと)付きのポルシェカレラ2とメルセデスベンツ190Eの2台でした。各車両の貸付額は、カレラ2が600万円、190Eが100万円という内訳です。売却の段取りを一気に進めるべく、営業部の藤原さんと小田さんに車両移動を任せた佐藤さんは、買取業者と査定の約束をした後、伊東部長を連れてお店の状況確認に向かいました。

「スピードファクトリー、飛んでいました。自宅、会社ともに、もぬけの殻です」
「貼り紙もないのか?」
「はい、見当たりません。確実に夜逃げした状況です」
「わかった。じゃあ、戻ってこい」

 店舗の状況確認に向かった2人が事務所に戻ると、ほどなくして車両移動を終えた藤原さんと小田さんも帰社され、各車のキーが佐藤さんに手渡されます。

「バッテリーは2台とも大丈夫だったんですけど、ポルシェの調子が悪かったですよ。エンジンが回らないというか、ぎこちない感じがしました」
「なんでだろう? パンクかな?」
「そう思って確認したんですけど、大丈夫でした。どこか壊れているのかもしれないですね」
「評価割れしなきゃいいけどな……」

 いつもお願いしている買取業者の査定担当者が事務所に現れ、早速に実車の査定が行われると、査定を終えた買取業者の口から意外な結果がもたらされます。

「申し訳ありません。お見せいただいた車両は、買取りいたしかねます」
「はあ? なんで?」
「ポルシェは水没車、190Eはニコイチ(事故でダメになった同車種2台分をつなげて1台にした車)の車で、印鑑証明(ローン会社のもの)も偽造されたものですよ。こちらをご覧ください」

 ポルシェのメンテナンスノートを開いた査定担当者が、水没と明記されたページを提示すると、佐藤さんの顔がみるみると紅潮していきます。

「こちらも、ご覧ください」

 さらに、ローン会社のものとされる印鑑証明を照明にかざして透かしが入っていないと指摘されたところ、傍らで話を聞いていた伊東部長が顔面蒼白状態の佐藤さんに言いました。

「佐藤君、君の確認不足だな」
「はい、申し訳ございません……」
「早く社長に報告したほうがいいよ。オレも一緒に行ってあげるから……」

 結局、水没したポルシェは部品屋に買い取っていただき、名変できなくなったベンツはとかし屋の西本さんに頼んで売却。一部の債権は回収されましたが、そのほとんどが焦げ付いてしまいました。青ざめた顔で社長室に入る佐藤さんの姿は痛々しく、後ろから抱きしめてあげたかったです。

※本記事は事実をもとに再構成しています

(著=るり子、監修=伊東ゆう)

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