大みそかの風物詩『第74回NHK紅白歌合戦』の出場者が、11月13日に発表され、紅組では新しい学校のリーダーズ、Ado、ano、元キャンディーズ・伊藤蘭、MISAMO、白組では大泉洋、キタニタツヤ、すとぷり、Stray Kids、SEVENTEEN、10-FEET、MAN WITH A MISSION、Mrs. GREEN APPLEの初登場が決定した。
近年、5~6組は出場していた旧ジャニーズのグループが、創業者・ジャニー喜多川氏(2019年に死去)の性加害問題の影響から1組も選ばれていないという異例の編成となる2023年の『紅白』だが、初出演メンバーはどのように盛り上げてくれるのか――今回は、音楽ライターが初登場組の中から、特に注目の数組をピックアップし、彼らの経歴や評判について解説する。
新しい学校のリーダーズは中高年からの評価が高い
2015年から活動している女性4人組ダンスボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」は、今年の初出場組で最も注目するアーティスト。セーラー服姿でキレキレのダンスを踊る姿が人気を博し、21年1月にはアメリカの音楽レーベル・88risingからデジタル・シングル「NAINAINAI」(ATARASHII GAKKO!名義)で世界デビューを果たしている。
その後も国内外の大型フェスに出演するなどして注目度が高まっていた中、今年に入ってから、20年5月に発表した楽曲「オトナブルー」の"首振りダンス"がTikTokで流行し、本格的にブレイクした。
「オトナブルー」は昭和歌謡曲を思わせるようなメロディラインが印象的で、若者からは「エモい」、一方中高年からも「懐かしい」と評価が高い。今回の『紅白』出場が、ファン層をより広げるきっかけになるのは間違いない。
Ado、顔出し登場なら歌手別視聴率上位に?
昨年の『紅白』では、人気マンガ『ONE PIECE』(集英社)の劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』(22年公開)に登場する歌姫・ウタとして出場し話題になった「Ado」だが、満を持して、本人名義で登場。今年はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィーンイベント「ゾンビ・デ・ダンス」のテーマソングに起用された9月リリースの「唱」が大ヒットし、SNSでは同曲の振り付け動画が多数アップされた。
Adoといえばメディアに顔出ししておらず、ライブでもシルエットしか公開しないという徹底ぶり。昨年ウタとして出場した際にも、キャラクターの3Dモデルがステージに出現したのみだった。21年の『紅白』では、シンガーソングライターのまふまふが初の顔出し出演で話題になったが、Adoがもし同じように登場したら、歌手別視聴率で上位に入りそうだ。
キタニタツヤは「人気アニメの主題歌を歌うアーティスト」というより……?
東京大学文学部卒で、バンドやボカロPとしての活動を経て20年にソロ名義でメジャーデビューした「キタニタツヤ」。今年7月リリースの「青のすみか」がテレビアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」編(TBS系)のオープニングテーマに起用され、大ヒットを記録した。
一方で、作詞家・作曲家としてWEST.(旧ジャニーズWEST)、関ジャニ∞、私立恵比寿中学などさまざまなアーティストに楽曲提供しているほか、ヨルシカのサポートベースとしてもライブなどに参加するなど、音楽を軸に幅広い活動を展開。人気アニメの主題歌を歌うアーティストというより、音楽家としての才能を評価する声も少なくない。
なお、キタニは11月16日放送の日本テレビ系音楽特番『ベストヒット歌謡祭2023』に出演予定だったが体調不良により欠席。なんと関ジャニ∞・丸山隆平が代わりに「青のすみか」を歌うというサプライズがあり、番組を盛り上げたが、『紅白』ではぜひ本家の歌声を聞きたいものだ。
すとぷり、若年層以外の認知度はまだまだでも最新アルバムは売上20万枚超!
「すとぷり」は、YouTubeやツイキャスなどで活動している6人組エンタメユニット。ライブや握手会では顔出ししているものの、メディアでは各メンバーのビジュアルをイラストで表現するといった現代的な活動スタイルが特徴で、『紅白』にはどのような形で登場するのか注目を集めている。
メンバーのななもり。は22年3月、内縁の妻と子どもがいるにもかかわらず不貞行為に及んでいたことが発覚してネット上で炎上。無期限の活動休止に入り、以降はグループの裏方として活動している。旧ジャニーズグループが性加害問題の影響から今年は1組も選ばれていない中、メンバーの女性トラブルが明るみになったことがあるすとぷりが出場することに賛否の声もある。
ちなみに若年層以外の認知度はまだまだのすとぷりだが、昨年12月に発売された最新アルバム『Here We Go!!』は22年12月28日付「Billboard Japan Hot Albums」で総合首位を獲得。また同「2023年上半期Top Albums Sales」では、20万6,833枚で第12位にランクインしている。『紅白』をきっかけにさらなる飛躍が期待される。
SEVENTEEN、『紅白』出場を祝福できないファンも
「セブチ」の愛称で知られる韓国の男性13人組グループ「SEVENTEEN」。15年のデビュー以降、歌良し、ダンス良し、トーク良しの実力派グループとして安定した人気を誇り、今年1月に発表した香取慎吾とコラボ曲「BETTING」が1月期放送の草なぎ剛主演ドラマ『罠の戦争』(フジテレビ系)の主題歌に起用され話題に。『紅白』で香取とのサプライズ共演も期待されている。
一方で、かねてより「日本の大みそかの恒例番組」というイメージが強い『紅白』にK-POPグループが出場することには賛否があるため、中には「忙しいのに日本の番組のために無理しないでほしい」「大みそかぐらい韓国で過ごしてほしい」などと、今回の出演を手放しでは祝福できない様子のファンも。『紅白』出場で、K-POPになじみのない層が彼らの総合的な実力を知る機会になるといいのだが……。
10-FEET、『THE FIRST SLAM DUNK』で今年一気にメジャーシーンに
03年にメジャーデビューしたスリーピースロックバンド「10-FEET」。過去には湘南乃風やMINMIとのコラボ曲も発表しており、音楽ファンの間では以前から知られた存在だったが、昨年12月に公開されたアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」が大ヒット。
同23日放送の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2022』(テレビ朝日系)にて、結成25年目にして初となるバンドでのテレビパフォーマンスを披露し、一気にメジャーシーンで存在感を放つようになった。
世間的な知名度にこだわらず、楽曲リリースとライブをメインに活動してきた10-FEETが、『紅白』に出場することにファンからは「そんな時代が来るとは」「感慨深い」と感激の声が続出。本人たちはもとより、ファンにとっても特別なステージになりそうだ。