エリザベス女王の治世を時系列的に描く“実話に基づく”王室ドラマ『ザ・クラウン』(Netflix)の、最終章となるシーズン6。その前半4話が、11月16日に配信開始された。しかし、フィクションのシーンが多く、もはやメロドラマだと物議を醸している。
ダイアナ元妃とチャールズ皇太子(当時)、カミラ夫人との三角関係を描いたシーズン4から、王室批判へと舵を切ったといわれている『ザ・クラウン』。数々のスキャンダルに見舞われた時代を描いたシーズン5は、「事実に基づいていないシーンが多い」「王室の誤ったイメージを拡散している」と炎上。「この物語はフィクションです」という注意書きが必要だと波紋を広げた。
そんな同作の最終章であるシーズン6。配信された前半の4話は、事実とは異なるシーンが多い上に、幽霊になったダイアナ元妃とその恋人ドディ・アルファイドが登場。ファクトチェックどころの話ではないと、ネット上を騒然とさせている。
1997年にパリで事故死したダイアナ元妃の最期の日々が描かれるとあって、注目を集めていた今シーズン。シーズン5に続き、物議を醸すシーンがてんこ盛りだったが、特に話題になっているのは4つのシーンだ。
『ザ・クラウン』フィクション疑惑1:ダイアナ元妃のキス写真は仕込み?
ダイアナ元妃とドディがキスをしているパパラッチ写真は、2人の交際に大喜びしたドディの父親が「ヨーロッパで最も腕の良いパパラッチ」を雇って撮らせたとするシーン。
ダイアナ元妃とドディが地中海をクルーズするヨットの上でキスをする姿を実際にパパラッチしたマリオ・ブレンナは、米紙「ニューヨーク・タイムズ」の取材に対して、父親のモハメドから依頼を受けた事実はなく、「ばかげている」と否定。
モハメドは今年8月に亡くなっていることから、ネット上では「まさに死人に口なしだね」という声が上がった。ちなみに、ダイアナ元妃がパパラッチされることを望みヨットの場所をリークしたという説もあるが、マリオは「写真が撮れたのは、思いがけない幸運に恵まれたからだ」と主張している。
『ザ・クラウン』フィクション疑惑2:ウィリアム王子が城を飛び出し、反抗する
ダイアナ元妃の葬儀をめぐり、チャールズ皇太子とエリザベス女王が激しく口論するのを聞いてしまったウィリアム王子。おとなしい王子は城を飛び出してしまうが、誰にも告げずに姿を消すことは初めてで、動揺する一同。自然の中で母の死と向き合っていた王子は、14時間後に雨に濡れながら帰宅し、心配する皇太子や女王に反抗的な態度を取る。
英タブロイド「デイリー・エクスプレス」は、「そんな話は聞いたことがない」「警備が厳しい中、王子が城を抜け出すことは不可能だ」という王室専門家の話を報じている。ネット上では、「Netflixはヘンリー王子の味方だから、『幼いながらも気丈なヘンリー王子』に対して『感情的で反抗的なウィリアム王子』という印象を与えたいんだろうね」といった臆測が流れている。
『ザ・クラウン』フィクション疑惑3:ダイアナ元妃が幽霊になってチャールズに「愛してた」
女王を説得して、王室専用機でダイアナ元妃の遺体を引き取りに行ったチャールズ皇太子は、帰りの機内で元妃の幽霊と会話する。元妃は「あなたのことを心の底から愛していたわ。苦しいほどに」「でも終わり。これでみんなが楽になるわ。あなたもホッとしたでしょ」と意地悪く発言。皇太子は「後悔しかないよ」と返し、「それも消えるわ」と言う元妃に皇太子は「いや、消えないね」と断言。元妃はうれしそうな表情を浮かべる。
エリザベス女王は、一国民となったダイアナ元妃の死に関わることに当初、激しく抵抗する。しかし、皇太子や首相に説得され、また大事な孫であるウィリアム王子が精神的に不安定になる姿を見て、王室国民葬をすることを決断。
複雑な表情でテレビの報道を見る女王の前に再びダイアナ元妃の幽霊が現れ、励ますように手を握る。「これで満足? とうとう(王室を)ひっくり返すことができて」と皮肉る女王に、元妃は国民の気持ちに寄り添うことが必要な時がある、今がその時だと諭す。
ダイアナ元妃が幽霊となって現れるシーンについて、製作総指揮者のピーター・モーガンは「ダイアナ元妃は、残された人たちの心に生き続けている」という意味で描いたと説明。
しかし、ネット上では「ダイアナが幽霊になれたとしたら、真っ先にウィリアムとヘンリーの元に行くでしょ」「幽霊になって、憎んでいたチャールズに『愛してた』なんて言う?」「まるで国王がイメージアップを狙って脚本を書いたのかと思うほどだ」といった声が噴出。ダイアナ元妃に対して、「死んでからもこんなふうに好き勝手に描かれて、気の毒」「生きている時はタブロイド、死んでからはゴシップドラマの標的になってかわいそう」などと同情する声も上がっている。
『ザ・クラウン』フィクション疑惑4:ドディが幽霊となって現れる
王室と悲しみを分かち合おうとするものの相手にされず「アラブ人は西洋人に嫌われる運命なのか」と嘆くモハメッドの前に、幽霊となったドディが現れ、慰めるシーンも。
「もはや幽霊ドラマ」という声も上がり、「幽霊となったダイアナがチャールズや女王を深い愛情で包み、そしてドディの幽霊がモハメッドを許すって描き方、あまりにキモすぎる」と批判する声も上がっている。
シーズン6、残り6話の見どころ
ダイアナ元妃の幽霊を見たくなかったという声は多く、米紙「Page Six」によるとヘンリー王子も最愛の母親の死を描き、幽霊として出てくる今シーズンの視聴を拒否しているとのこと。とはいえ多額のギャラで契約を結んでいるNetflixやドラマの制作者に対して、悪い感情は持っていないと伝えられている。
シーズン6の残り6話では97年から2005年までが描かれるそうで、ウィリアム王子とキャサリン妃の出会いと恋愛、チャールズ皇太子とカミラ妃の結婚が入ることがわかっている。残念ながら、ヘンリー王子とメーガン夫人のロマンスから王室離脱騒動までは含まれていない。
ヘンリー王子が薬物やアルコールの問題からリハビリ施設に入ったのは02年だが、どのように描かれているか気になるところだ。『ザ・クラウン』シーズン6の後半6話は、12月14日に配信される予定となっている。