11月30日、世界で唯一の『セサミストリート』のオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」が東京・池袋のサンシャインシティ 専門店街アルパにオープンします。
「セサミストリートマーケット」は、セサミストリートの物販・カフェ・ワークショップの複合ショップ。オープン当日の開店時間には、エルモやクッキーモンスターなどの人気キャラクターが来場予定とのこと。
『セサミストリート』は1969年に本国アメリカで放送を開始。愛くるしいマペットたちによる、ユーモアを交えた寸劇や歌で、未就学児にアルファベットや数字、道徳を教える番組だ。現在は150以上の国や地域に届けられているという。
今回は、知っているようで知らない『セサミストリート』の豆知識を紹介しよう。
※当記事は2018年10月27日公開の記事を再編集しています。
『セサミストリート』知られていない5つのこと
1)アーニーとバート以外のキャラクターは出ない予定だった
1960年代半ばから、心理学者ロイド・モリセットとTVプロデューサーのジョアン・ガンツ・クーニー、近代人形劇の第一人者ジム・ヘンソンが数年の年月をかけて案を練り、69年に放送にこぎ着けた『セサミストリート』。放送前には、パイロットと呼ばれる「お試しエピソード」を5パターン制作し、子どもたちの反応を確かめた。
「マペットと人間を一緒に登場させると、現実と空想がごちゃ混ぜになって、子どもたちを混乱させてしまう」というロイドのアドバイスに基づき、パイロットでは、マペットと人間を同じ空間に登場させたり、人間とマペットが会話を交わしたりすることは避けた。
また、「モンスターなどの完全な空想のキャラクターは子どもたちを混乱させる」として、マペットは人間らしいキャラクターであるアーニーとバートだけを登場させており、出演者も人間がメインで、アーニーとバートはちょこっと登場する構成だった。しかし、パイロットを見た子どもたちは、人間だけが出てくるシーンになると、たちまち興味を失う。おもしろいコントであっても歌であっても、人間が出てくるシーンに子どもたちは集中できなかったのだ。
この結果を踏まえ、制作チームは「アーニーとバートだけを登場させる番組」にすべきなのではと真剣に検討を重ねた。また「ほかにも人間ではないモンスターなどを登場させたほうが、子どもたちの興味をさらに惹きつけ、集中力が長続きするのではないか」と考え、現在の『セサミストリート』の形に落ち着いたのだった。
『セサミストリート』知られていない5つのこと
2)クッキーモンスター、見た目も中身も変貌
番組の人気キャラ・クッキーモンスターは、もともとスナック菓子「ウィールズ、クラウンズ&フルーツ」のコマーシャルに登場していたもの。ウィールズ・スティーラー(ウィールズ泥棒)という名前で、誰かが菓子の袋を開けると現れ、すべて食べてしまうキャラクターだった。
1966年に生まれたウィールズ・スティーラーには歯があり、そのすべてが犬歯のように尖っており、翌年には、IBMのコンピュータートレーニングビデオ『The Coffee Break Machine』で、コンピューターの部品を次々と食べるモンスターとして登場。この時も鋭い歯があり、カラー映像での色は濃い緑色だった。
その後、69年に「マンチョス」というスナック菓子のコマーシャルに登場した時は、歯がなく、色は薄い紫色に。「マンチョス!」と叫びながらバリバリ食べるというスタイルは、ウィールズ・スティーラーの時から変わらずで、この路線のまま『セサミストリート』シーズン1にクッキーモンスターとして登場したのだった。
クッキーモンスター、本名を明かし話題に
クッキーモンスターは、色が濃い青に変化した以外は「マンチョス」CMと全く変わらぬ姿で、その後、目の位置が少し変わったり、口が大きくなる、口の形が丸くなる、毛が縮れる、毛がふわふわになるなど、少しずつ変化を遂げている。ちなみに毛むくじゃらだが、鼻はあるという。
『セサミストリート』ではクッキーばかりを食べるという設定で、人気曲「C is for Cookie」も持つようになったクッキーモンスター。「偏食を促す」と懸念する大人たちの意見も取り入れ、フルーツや野菜などクッキー以外のものも食べている。フルーツをよく食べている時期に「クッキーモンスターを辞めて、フルーツモンスターになるらしい」というウワサが流れたが、2006年に出演した米テレビ番組『Today』でクッキーモンスター自身がきっぱりと否定。
クッキーモンスターという名前については、17年に受けた米誌「Wired」のインタビューで「あだ名で本名じゃない」と告白。「本名は覚えてないんだけど、シドニーだったかな?」と明かし、話題になった。誕生日は11月2日、フレッドという兄弟がいることなどがわかっており、自分の名前を忘れていても天涯孤独というわけではないようだ。
ちなみにほかのモンスターたちの指は4本だが、クッキーモンスターだけ5本指。そのおかげか、クッキー作りが得意で、お菓子やパン作りを得意とするYouTuber、ロザンナ・パンシーノのYouTubeチャンネルにも登場し、彼女をアシストしている。また、公式ツイッターアカウントを開設し、クッキーへの情熱をつぶやいたり、「クッキーが大好き」という詩をつづったりもしている。
『セサミストリート』知られていない5つのこと
3)軍で働く親を持つ子ども用の、特別なビデオが存在する
いつも子どもの味方で、子どもたちの心のケアはとても重要だと考えている『セサミストリート』。親が米軍で働く子どものためには『Talk, Listen, Connect』シリーズを制作。
人気キャラクター、エルモの父親が軍人として登場しており、離れている間の寂しくてつらい日々を乗り越えるコツを紹介。実際に軍で働く親を持つ子どもたちも登場させ、子どもたちに1人じゃないと訴え、たくさんの人を助ける仕事をしている親を誇りに思おうと呼びかける内容となっている。
このシリーズには、親が戦地で負傷し、生活が変わってしまった子どもたちの精神的ケアを目的に制作されたものもある。父親が戦地で負傷し、車イス生活になってしまったことに落ち込み、憤りをあらわにするロジータを、エルモが「悲しい気持ちはママとパパに話すのがいいよ」とアドバイス。
暗くなりがちな繊細な問題も『セサミストリート』マジックで、「悲しい気持ちになっても大丈夫だよ」「生活が変わってしまっても、パパもママも変わらない」と伝えている。また、親を戦地で亡くした子ども向けのビデオも制作されている。
『セサミストリート』知られていない5つのこと
4)スナッフィーの悲しい誕生秘話
毛むくじゃらでマンモスに似た外見のキャラクター・スナッフィー。牙と耳がなく、まん丸の瞳に長いまつ毛の優しい雰囲気を持つ人気キャラだ。ビッグバードの親友として知られるスナッフィーだが、最初の頃はビッグバードのイマジナリーフレンドだった。イマジナリーフレンドとは「子どもの空想上の友人」。
『セサミストリート』は、「イマジナリーフレンドがいるのは変なことじゃないよ」と伝えるため、また子どもたちの共感を得るために「大人たちには見えない」スナッフィーを作った。85年まではごく少数のマペット、子ども、ゲストたちにしか見えない「特別」な存在で、大人たちは「スナッフィーは実際には存在しない」「君の想像力が作り上げた話」と苦笑しながら受け止めていた。
しかし番組のショーランナーたちは、性的虐待に遭っている子どもたちの多くが、被害を大人に伝えても「気を引きたいがためのウソ」「作り話」だと信じてもらえず、その結果あきらめて口を閉ざしてしまっているという悲しい事実を報道番組で知る。
「子どもたちの想像上のキャラクターだったスナッフィーを大人たちの前に登場させることで、性的虐待被害を受けている子どもたちに、“繰り返し訴えれば大人たちに信じてもらえるよ!”と伝えられる。勇気を与えることになる」と決心し、85年に放送された第2096話で大人たちの前にスナッフィーを初登場させ、以来「イマジナリーではなかった。本物の友だちだった」としている。
なお、ビッグバードにしか見えなかった頃のスナッフィーの瞳はアーモンド形で、声も低くしゃがれていた。この外見を怖がった子どもが多かったため、大人にも見えるようになった頃には目をくりっとさせた。操り師が変わって声もフレンドリーなものとなり、現在のスタイルとなった。ちなみにスナッフィーのファーストネームは、アロイシウス。カトリック教会の聖人の名前である。
『セサミストリート』知られていない5つのこと
5)セレブが次々とゲスト出演を希望
これまでに700人以上のセレブたちがゲスト出演している『セサミストリート』(※2018年10月時点)。ロバート・デ・ニーロ、トム・ハンクス、ジャン・レノら俳優、ニコール・キッドマン、ウーピー・ゴールドバーグら女優、リッキー・マーティン、ケイティ・ペリーなどの人気歌手、ギャングスタラッパーとして君臨していたアイス・キューブやアイス・T、お騒がせR&B歌手のクリス・ブラウンも出演。
ヒラリー・クリントン、ミッシェル・オバマなどの大統領夫人や、日本が誇る指揮者・小澤征爾も登場しており、シャーリーズ・セロン、ハル・ベリー、ジョン・ハム、メリッサ・マッカーシー、ドン・チードルが立て続けに撮影を行った週もあるなど、ゲスト出演していないセレブを探す方が難しいといわれているほどだ。
ゲストは、プロデューサーたちが「一番合う」と思うコーナーに出演。単語を教えるコーナーでは、ロビン・ウィリアムズは双頭のモンスターにいがみ合いをけしかけながら「Conflict(対立)」を、デビッド・ベッカムはエルモに邪魔されながらサッカーのリフティングを披露し「Persistent(根気強く)」を、デスティニーズ・チャイルドは歌い踊りながら「Walk(歩く)」を教えた。
アルファベットを教えるコーナーはアーティストが担当することが多く、ワン・ダイレクションは楽しく歌いながら「U」の歌を、ノラ・ジョーンズはしっとした歌声で「Y」の歌を披露した。
子どもたちを励ます歌を披露するセレブも多く、ブルーノ・マーズは「あきらめるな!」と呼びかける歌を、レイ・チャールズは点字の楽譜を読みながらエルモと会話した後、ピアノを弾きながら「Believe In Yourself(自分を信じて)」と歌った。エド・シーランは、「家ではなんでもできるけど、学校ではルールに従わなければならない」と、違う世界での生活を子どもたちに諭すように笑顔で歌った。
ちなみに、セレブたちは俳優組合の規則でノーギャラではないが、組合が設定した最低賃金しか受け取っていないとみられている。