巷の婚活女子の間で話題のマンガ『婚活バトルフィールド37』(新潮社)はご存じですか? 絶賛婚活中の私、白戸ミフルはもちろん愛読させていただいております。
婚活女子ならきっと激しく共感しまくりの、赤裸々な婚活業界の表と裏が描かれている本作。こんなに「婚活女子」を強く揺さぶる物語を、作者の猪熊ことり先生はどうやって生み出しているのか? ご本人に聞くことができました。
まず、婚活をテーマにマンガを描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
「本作はいくつか出した連載企画のうちの一本でして、自分に婚活経験があり、知識があったために企画に反映したのではないかと思います」
なるほど。筆者も自身の婚活経験を生かした(というか経験そのもの)婚活マンガを、サイゾーウーマンにて連載しているので、なんだか親近感を覚えます。『婚活バトルフィールド37』で特に面白いのは、さまざまな婚活方法やハウツーを学べるのは当然のこと、キャラの濃い登場人物たちの、アッパレな闘いっぷり(まさに婚活バトルフィールド)。
そこそこ美人だけどプライドが異常に高い主人公の赤木ユカや、婚活歴8年で知識豊富なものの頭でっかちで無表情な同僚・青島。一見可愛い感じなのに闇が深く怖い一面を持つ後輩・リエちゃん等々、個性豊かなキャラクターが、各々婚活に悪戦苦闘しています。それぞれのキャラにモデルはいるのでしょうか?
「本作はフィクションなので特定のモデルはいません。はじめに設定から考えている感じですね。例えば主人公の赤木さんの初期設定は『婚活女性の悪しき部分を凝縮したような女』です。その骨格にストーリーを進めていくうちにキャラが肉付けされる感じでしょうか。赤木さんも初期設定からは微妙に変化しているような……いや、変化していないか……。ただ、頭で考えただけだと生きている感じがしないので、雰囲気みたいなものは知人や、有名人などを参考にしている場合があります」
『婚活バトルフィールド37』青島の婚活知識を鵜吞みにしてはいけない!?
気になるのは婚活のプロ・青島の知識。婚活歴8年の彼女は知識が豊富で、婚活歴10年以上の筆者も全然知らない世間の婚活事情をよく知っています。ただ、だからといって本人がモテているワケではないのが、また面白いところ(笑)。これらの知識の出どころはどこなのでしょうか。
「青島さんの知識の出どころは主にネットです。統計データなども実際にネット上に公開されているものを参考にしています。あとは書籍等も一部参考にしたり、自分の婚活者としての経験則を反映している場合もあります。また青島さんは結構テキトーなことを言ってるときもあるので、気をつけてください」
そうとも知らず、青島の婚活情報を鵜呑みにしてしまいそうでした。気をつけます(笑)!
「はい、本作は2021年が舞台なので若干情報が古かったり、コロナがない世界観なのでリアルタイムの婚活の参考になるのか怪しいです。またプロの監修がついているわけではなく、私一人が調べているだけなので、その情報が正しいとは言い切れません。そして何より青島さんのセリフには彼女の主観が色濃く反映されている場合などがありまして……。ですので鵜呑みにするのは危険です」
作中の心情描写も見どころです。タイトルにある通り、37歳でアラフォーに足を踏み入れている赤木や青島をメインに、時に婚活相手側の男性目線で描かれる細やかな心情は、婚活経験のある女性ならば「わかるわ~!」と共感しまくりだと思います。男性目線からの婚活は、自身の立ち振る舞いを見つめ直すきっかけにも。
婚活女子の赤裸々な心情は、猪熊先生ご自身の婚活の経験からでしょうか?
「それは『経験から』の意味によりますね。『経験から』というのが、私が実際に婚活で経験したことを描いているのか? という意味ならば、違います。私に婚活経験と知識があるから登場キャラクターの心情を想像しやすいのか? という意味ならば、そうだと思います。
自分で書いててなんですが、とても面倒くさい感じの文章ですね、すみません……」
しかしながら、作中では合コンや街コン等のオフライン婚活から、マッチングアプリ等のオンライン婚活、もちろん往年の婚活方法である結婚相談所、セレブが集まるタワマンパーティーまで、さまざまな種類の婚活方法が出てきます。その中でも、世の婚活女子にオススメしたい婚活方法はありますか?
「それは返答が難しいです……。どの手段も一長一短があるので、一概にはお勧めしにくいです」
聞いておきながら、筆者もさまざまな種類の婚活をしてきたので、その回答には激しく同意! 特にアラフォー以上になってからは、どんな婚活方法も難しくなってきている気がするのですが……。
「年齢を重ねるごとに下の年齢とマッチングできなくなるので、男女ともに選択肢が狭まるのは間違いないと思います。ただ、年齢による難易度の違いは婚活方法よりも、その人の希望条件によるところが大きい気がします。同じアラフォーの人でも希望条件によってかなり難易度が変わるんじゃないでしょうか」
なるほど、確かに年収だったりルックスだったりを重視するのであれば、アラフォー以上は茨の道かと思われますが、一方であまり気にしない方の場合は、フィーリングさえ合えば、すぐに成婚できたりするケースも確かにありますよね。
婚活中に「結婚しない」という選択肢を取れるか?
ただ、婚活をすると、なかなか真剣に交際できる相手を見つけられず自信を失ったり、嫌なことや傷つくことも多いと思います。心折れずに婚活を続けるマインドやコツがあれば教えていただきたいです!
「心折れずに婚活を続けるコツは、気負わないで、気楽にやることだと思います。逆説的ですが、嫌になったらいつでもやめてかまわないというスタンスのほうがかえって続けられるような気がします。
『結婚しなくても別に構わない』『結婚しない』という選択肢も取れる状況にしておいたほうが良いです。『絶対に結婚する』というマインドでは遊び(余裕)がなくて破綻しやすいと思います。
逆に『結婚しない』という選択肢が取れないなら、それは自分の意志で婚活しているのではなく、誰かにやらされているのと変わらないような気がします。それではつらくなるんじゃないでしょうか」
確かに何をするにも、心に余裕を持つことは大事ですよね。昨今、婚活でノイローゼになってしまう人も多いと聞きますし、幸せになるために婚活をして、不幸になってしまったら本末転倒。“人生は一度きり”“時間は有限”なので、嫌なことを続けるなんてもったいないですよね。「結婚=幸せ」「結婚=しないといけない」的な考え方を一度捨てて、気楽になってみることも大事なのかもしれません。
婚活中でも「結婚しない」選択肢を取れる状況にしたほうがよいというのは、目からウロコでしたが、本当にその通りですよね。結婚という制度に縛られない、パートナーとの付き合い方もポピュラーになってきている現代なので、“結婚をする”ことばかりにこだわっていたら、視野が狭くなってしまう気はします。ただ、結婚という形でなくても、“気の合うパートナーはほしい!”と考える人は多いはず。
最後に、猪熊先生の好きなタイプと、またパートナーに求めるタイプについて、そして、婚活のマンガを描いていくうちに知識が増え、タイプが変わったか? と聞きました。
「好きなタイプは私のことを無条件に受け入れてくれて、甘やかしてくれる人です。しかし、そんな人間は存在しませんので、あくまでも理想です」
最高です! が、やはりそんな都合の良いお相手はいませんよね……(泣)。
「そういう人は残念ながらフィクションの中にしかいないと思います……(泣)。パートナーに求めるタイプも、やっぱり私に甘い人ですね。無条件にとは言いませんが……。漫画を描いてるうちに好きなタイプが変わったということはありません」
情報やはやりに影響を受けやすい筆者と異なり、先生には確固たるタイプがあるようでうらやましいです。
先日、婚活YouTuberの方たちと対談をしましたが、その中でも「“結婚すること”にこだわらず、やりたいことをやって自分が輝ける場所で楽しむことが一番大事」(もちろんそんな場所で良き出会いがあれば最高!)的な話があり、激しく共感した筆者です。
猪熊先生のお話を聞き、もう少し婚活について気楽に考えることも大事だなと。「(婚活は)嫌になったらいつでもやめてかまわない」スタンスでいることが、気負わず婚活を続けられる、という先生のアドバイスは心に響きました。そして自分の本当の幸せについて、自分自身と向き合ってしっかり考えることも必要だな………と感じた次第でございます。
婚活中、または婚活経験者であれば、笑いあり涙あり、そして激しく共感できる、猪熊ことり先生の『婚活バトルフィールド37』は必読ですよ!
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