「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
ママ友の家に遊びに行く際、子どもが不注意から食器やおもちゃなどを壊したりしないかと心配になったことがあるというお母さんは多い。寒さが厳しくなる今の時期、公園遊びがしづらくなり、室内で過ごす機会も増えるが、今回は、やんちゃな子どもを抱えるお母さんのちょっとしたトラブルを取り上げる。
ママ友の一軒家で走り回る我が子にハラハラ
江梨子さん(仮名・34歳)は、首都圏で4歳になる英人くん(仮名)の子育てをしている。彼女は東京出身だが、妊娠をきっかけに夫の実家の近県に家族で引っ越してきた。
「首都圏在住ですが、都内まで出るのに1時間半もかかるんです。以前は、もともと仲の良かった都内在住の友達と子連れで会うこともありましたが、なかなか一苦労で……。子どもが幼稚園に入園してからは、そこでできた近隣のママ友とばかり付き合うようになっています」
英人くんが通っている幼稚園のママ友である和美さん(仮名・36歳)は、子どもが同じ水泳教室に通っているため、幼稚園以外の時間もよく一緒に過ごしているそうだ。
「和美さんの家は、一軒家でうちから歩いて10分くらいの距離。ちょっとした用事がある時など、和美さんの家で息子を預かってもらうこともあるんです。うちにも来てもらいたいのですが、マンション住まいで、部屋もあまり広くないため、呼びづらくって。室内で遊ぶ時は和美さんの家で集まることが多いですね。夏は和美さんの家の庭で、簡易プールを出して水浴びをしていました」
英人くんは、「室内を走り回るなど、どうにも落ち着きがないタイプ」とのこと。しかも4歳にしては体が大きいため、「和美さんの家に遊びに行くと目が離せない」そうだ。
「給食がない早帰りの日は、和美さんの家に仲良しのママ友で集まり、スーパーで買った惣菜を食べることもあります。そういう時、うちの息子は『これ、なに?』といって、すぐに家の中のものを触ったり、部屋の中を走ろうとするから、本当に気が抜けません。何かやらかしそうになったら、すぐに注意するようにしています」
和美さんの家は、旦那さんの実家をリフォームしたばかり。家具にもこだわっているといい、「家で子どもが落書きをしないよう、クレヨンを置かないようにしている」と言っていたという。
「それなのに、息子がお菓子を食べた手であちこちベタベタ触るのでハラハラしますよ。もう少し大きくなって、『Nintendo Switch』とかで遊ぶようになったら、もう少し落ち着くのかもしれませんが……」
そんな折、和美さんとともに、おゆうぎ会の手伝い係になったという江梨子さん。和美さんの家で、衣装作りの作業をしていた際、ある事件が起こった。
「和美さんはミシンを持っているので、彼女の家で作業をすることになりました。ある日、もう一人の手伝い係のママと、3人で衣装を作っていると、熱中してつい子どもから目を離してしまい……その隙に、うちの息子が仮面ライダーのベルトを壊してしまったようなんです」
今も昔も、男児に人気がある特撮ヒーローのおもちゃ。購入しても1年もしないうちに次の新製品が発売されるために、クリスマスなどの機会がないとめったに買わないママも多い。
「息子には買い与えていなかったので、珍しかったんだと思います。和美さんは、割と子どもにおもちゃを買い与えるタイプのようで、家にはいろんなおもちゃがあふれているんですが、その日は男の子が3人いたので、取り合いになってしまったらしく……。“うちの子が高価なものを壊してしまった”とうろたえていると、和美さんは『いっぱい遊んだおもちゃだし、またすぐに新しいのが出るから大丈夫』と言ってくれ、その場では謝罪をしたのみでした」
しかし、帰宅後、その時一緒にいたママ友に、LINEで「本当に弁償しなくていいのかな」と相談したところ、「さすがに何もお詫びをしないのはよくないかも」「いつもよりちょっと値の張るおやつとか持ってくのはどう?」と返信があったという。
そこで江梨子さんは、次に和美さん宅へ遊びに行った際、デパ地下で買ったクッキーの詰め合わせを持って行ったそうだ。それは「壊したおもちゃより少しだけ値段が安いくらい」の品物だったという。
「和美さんに手渡したのですが、『気を使わなくていいのに!』『申し訳ないよ』と何度も言っていて、結局、クッキーもみんなで食べました。お詫びの品を渡したことで、逆に変な気を使わせてしまったのかも……と不安になってしまいましたね。でも、これからも付き合いが続いていく仲なので、おもちゃを壊したまま、謝罪だけというのもよくない気がするし。結局、どうするのがよかったのでしょうか」
小さい子どもを持つママはよく、「常に我が子から目が離せない」と口にする。コンビニやスーパーでも、陳列された食品を勝手に開けたり、触ったりして、破損させてしまったというケースは後を絶たないし、「子どもが背負っていたリュックサックが引っ掛かり、山積みの商品が一気に崩れた」なんて予想だにしていないことも起きたりする。
子どもが店で販売している商品を破損させた場合は、金額が明示されているだけに、弁償しやすい。しかし、壊したのが、ママ友の家にあるおもちゃだった場合はどうだろう。定価があるとはいえ、新品ではない。そのおもちゃに対する思い入れの深さもわからないだけに、弁償しようにも、いくら渡せばいいのか困ってしまう。しかも相手に受け取ってもらえない可能性もあるだけに、なかなか悩ましい問題だ。
しかし、相手にとってそれが、「本当に壊されたくないもの」であれば、不用意には触らせないはず。しかも今回のケースは、子どものおもちゃとあって、和美さんもある程度、自分の子ども、もしくは友達に壊されてしまうことも想定していたのではないだろうか。和美さんと息子にとって、その仮面ライダーの変身ベルトが替えの利かない大事なものだったら、そもそも友達に触らせていないと思うのだ。
江梨子さんはトラブルが起こった際、その場では謝罪したのみだったというが、やはり併せて、新品を購入すべきか、また修理代が必要かを聞いたほうがよかった。おそらく和美さんは「いらない」と言っただろうし、そうすれば、金銭面での不安は払しょくできたはず。その確認をしないまま、後日、値段の張るお詫びの品を持って行くのは、相手の趣味などもあるので、あまり適切な対応とはいえないように思う。
ママ友間で起こったトラブルはその場ですぐ解決するのが、事を大きくしないために何よりも重要。共通のママ友にどうしたらいいのかを聞いたのも、余計に話をややこしくしてしまった印象を受ける。何事もその場で誠意を持って対処するように心掛けたいものだ。