今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
「元ヤクザの法律家さん」に注目!
あっという間に大みそかですね。2023年は、どんな本をお読みになりましたか? お正月に楽しめそうな「不良御用達本」をご紹介します。
2023年は、「元ヤクザ」で法律家になられたお2人の出版が話題でした。
5月に弁護士の諸橋仁智(もろはし・よしとも)先生が『元ヤクザ弁護士 ヤクザのバッジを外して、弁護士バッジをつけました』(彩図社)、そして6月に司法書士の甲村柳市先生が『元ヤクザ、司法書士への道』(集英社インターナショナル)を出版されました。
お2人は「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)やニュースサイト「ニッポンドットコムニュース」で対談もされてますが、刺青もバッチリで、さすがの貫禄です。
また、11月には諸橋先生が事務所を移転され、甲村先生が東京事務所を開設されています。甲村先生の事務所には編集者さんとお邪魔してきたので、そのことは年明けに書かせてくださいね。
お2人のご本はそれぞれ読み応えがありますが、諸橋先生はクスリ(覚醒剤)でやらかしたエピソードがおもしろくて、甲村先生は獄中での受験勉強法が興味深かったです。
全ヤクザ映画を網羅した解説本がすごい
「文藝春秋」(文藝春秋)で連載されてた『仁義なきヤクザ映画史』は労作でしたね。単行本になるのを楽しみに待っておりました。
日本映画史上で「最初のヤクザ映画」である『侠客 祐天吉松』(尾上松之助主演・1911年)から、最近の役所広司さんの『孤狼の血』(2018年)と『すばらしき世界』(2021年)まで、「ヤクザ映画」のすべてが解説されています。
もちろん高倉健さんや安藤昇さん、『仁義なき戦い』シリーズ、『極道の妻たち』や北野武監督の『アウトレイジ』についても書かれていますし、アメリカの『ゴッドファーザー』との比較もあります。
「著者さん、詳しいなあ」だけでなく、リアルヤクザ社会の「根っこの部分」である在日コリアンや被差別部落についての考察も深かったです。
続いては、なんと現役のヤクザさんの著書です。Kindleの「読み放題」にも収録されている花岡眞吾さんの『時代を超える生き方』(湘南社、23年)も、長いけど読み応えありました。
著者さんは現在服役中の工藤會関係者氏で、「全部実名」なんですよ。著者さんが出版社に「無理を言って」実名にしたそうです。私が個人的に存じ上げてる方のエピソードもあり、興味深く拝読しました。
「昭和ヤクザ漫画」も健在
お正月に拝読しようと思っているのが、黒栁桂子さんの『めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります』(朝日新聞出版・2023年)です。
著者は刑務所に就職した栄養士さん。調理などまったくわからない懲役(受刑者)諸君に料理を教えていくんですが、目次を見ただけでも「全国刑務所人気ナンバーワン!『どんぶりぜんざい』」とか「みょうがはどこまでむくんですか?」とか、とても面白そうです。
刑務所での「刑務作業」というと、工場でみんなで並んでミシンをかけたり、木工品を作ったりするイメージですが、施設での調理や掃除、洗濯なんかも、懲役がする「刑務作業」なのです。
調理は包丁を持つので、厨房である「炊場」(すいじょう)配属はエリートの印です。昭和の不良には「中卒で板前の修業→職場でやらかして稼業入り」が珍しくなかった気がしますが、今どきは少数派なんですかね。
そして、最後に漫画もご紹介しておきます。あのVTuberの懲役太郎さんが監修された『極道楽園(ごくどうパラダイス)』(講談社)の第1巻が11月に発売されました。現在もFRIDAY電子版で連載中です。
不動産バブル前夜の昭和のヤクザ社会を舞台に、主人公の佐藤太郎さんの「極道生活」が描かれています。漫画家の川端浩典さんもいい感じです。
フィクションですが、懲役太郎さんの「元ヤクザ」目線なので、リアルで引き込まれます。昭和を知らないZ世代の皆さんも「こんな時代があったんだなあ」と楽しめると思いますよ。ぜひお手に取っていただきたいです。
こうしてみると、23年もいろんな本が出版されましたね。イヤな世の中ですが、読書くらいはゆっくり楽しみたいものです。
今年もお読みいただき、ありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください。