朝の時間帯で圧倒的王者として君臨している『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系、以下『モーニングショー』)。2022年度(2022年4月~23年3月)の平均視聴率では7年連続民放トップに。個人全体視聴率は5.2%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)、世帯視聴率は9.4%で、NHKを含めても同時間帯で3年連続横並びトップに立っているのだ。そんな『モーニングショー』の強さの秘密は何なのか?
「まず第一に『政治・経済を中心としたネタ選び』、それに『構成が実にシンプル』。そしてやはり、『レギュラーコメンテーターの元テレ朝社員・玉川徹氏の存在感』が強みでしょう」(テレビ業界関係者)
『モーニングショー』の核は政治・経済、ブレないテーマ性
政治・経済を中心とした構成というのは、文字通り、「岸田文雄政権に関する話題や、最近だとダイハツの認証試験不正問題など、新聞の1面に載る時事問題が挙げられる。
「例えば、今旬のロサンゼルス・ドジャース所属・大谷翔平選手の話題に時間を割くこともありますが、あくまで政治・経済が番組の核であり、そのテーマ性はほぼブレない。また、ネタ数がそこまで多くなく、1時間ぶち抜きで、取り上げた話題をじっくり掘り下げている点も、視聴者の満足度を高めているのではないでしょうか。ライバルである『めざまし8』(フジテレビ系)や『DayDay.』(日本テレビ系)は後半になるにつれ、ニュースをダイジェスト的に解説するコーナーや、暮らしの知恵を紹介するVTRが流れるなど、種々雑多な構成ですが、『モーニングショー』はそれらとは一線を画しています」(同)
羽鳥慎一の変わらないテンションは見やすさの一因
また、MC・羽鳥慎一が1枚の巨大ボードパネルをめくりながら、順を追ってニュースを解説していく展開は「非常に見やすくわかりやすい」(同)という。
「冒頭に、出来事の要点をまとめたVTRが入ると、次はスタジオでの解説に入ります。そして、それに対してレギュラー出演する玉川氏や、日替わりのコメンテーターたちが順番にコメントし、またパネルに戻る。シンプルなつくりが見ていてとても心地よいんです」(同)
一方、他局のワイドショーのコメンテーターは、ネタによってしゃべったり、しゃべらなかったりがまちまちで存在意義に疑問符も。また、コメンテーターの人数もや多いケースが目立つ。
「しかも同じ曜日でも、次の週だと、また顔ぶれが違ったりする。例えば『めざまし8』のコメンテーター欄には22名がラインナップされており、スケジュールの都合で出演しないことも多く、メンバーが固定されていません。またネタごとにアナウンサーが変わるなど、何かと目まぐるしく“目が疲れる”んです」(同)
さらに『モーニングショー』は番組中、羽鳥のテンションがほぼ一定で、そこもまた見やすさの一因だそうだ。
「事件系のネタであっても、羽鳥は『めざまし8』の谷原章介や、『Day Day.』の南海キャンディーズ・山里亮太のように、そこまで被害者に感情移入せず、悲嘆に暮れるようなこともない。視聴者は必要以上に気持ちをもらわずに、落ち着いて見られます。また、谷原・山里はMCのほかに自論を述べる役割も兼ねている一方、羽鳥はそこまで私見を挟まない。意見するにしてもネタ終わりやコメンテーターとのやりとりの間に一言、二言入れるだけなんです。そんな騒がしくない司会ぶりを好意的に見る視聴者は少なくないと思います」(同)
玉川徹氏、謹慎処分から復帰後は「居丈高な態度は見られなくなった」
加えて、「レギュラーコメンテーター・玉川氏の存在は大きい」と、前出のテレビ業界関係者は述べる。玉川氏は今年7月に定年退職、その後はフリーとして活動し、同番組にも引き続き出演している。
「昨年9月、安倍晋三元首相の国葬で菅義偉前首相が読んだ弔辞について、『当然これ、電通が入ってますからね』と演出だったと主張。しかしこれは事実誤認であったことがわかり、謝罪。謹慎処分を食らいました。復帰後はそこまで居丈高な態度は見られなくなりましたが、とはいえ、鋭い政権批判は健在。番組に適度な緊張感をもたらしてくれています」(同)
その他、『モーニングショー』は制作サイドの細かいフォローも絶妙だという。
「例えば、まだ番組になじみのない専門家がゲスト解説で来た際、話している時に、肩書テロップを良いタイミングで入れています。一方、『めざまし8』の場合は、そのタイミングが微妙に遅かったりするんですよね。それに、『めざまし8』のフリップやパネルは、文言がこなれておらず、スッと頭に入ってこないことがありますが、先の『モーニングショー』の巨大ボードは、一見しただけですぐ理解できるほど、質の高いものです。細かなことではありますが、こうした視聴者目線の配慮に、スタッフの気概と意識の高さが現れているといえます」(同)
まだまだ『モーニングショー』の独走は続きそうだ。