「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
過保護という言葉がある。しかし、人によって家庭によって、その定義は異なるだろう。昨今、子どもが被害者となる事件が多発している影響からか、小学校高学年の子どもの居場所を、親がGPSで確認しているケースがあるが、それも、人によっては「当たり前」である一方、人によっては「過保護」なのだろう。今回は、放任主義に見えるママ友からの言葉にモヤモヤしているというお母さんの声を取り上げる。
目次
・遅くまで我が家にいる息子の友達
・『フォートナイト』の影響で言葉づかいが乱暴に?
・ママ友ウォッチャーからの解説
母親が帰ってくる時間まで、我が家で遊ぼうとする息子の友達
和江さん(仮名・46歳)は、首都圏で小学4年生の男児・玲君(仮名)を育てるママ。息子は水泳とバスケットボールを習っているが、それ以外の日は、友達と公園などで遊んでいるという。
「周りではちらほら塾通いを始めた家もあるのですが、うちはそのまま地元の公立中に進学するつもりなので、放課後は友達と遊んだりして過ごしています。ただ小4になると、親に行き先を告げずに出かけてしまうこともあるので、誰と遊んでいるのかなど気になっているんです」
和江さんは、33歳で結婚してから不妊治療を始めた。当時は保険会社の営業として働いていたが、妊娠をきっかけに退職。子どもが小学校に入学し、学童に通うようになったらパートで働こうと考えていたものの、今も専業主婦として育児に専念している。
「息子が家に帰った時に、ママがいないのはかわいそうだなって思うようになりました。私が在宅しているのもあって、息子は公園で遊んでいた友達を家に連れてくることも多いんです」
玲君と仲が良い裕之君(仮名・10歳)は、家が近所なのもあって週2~3回ほど放課後に遊んでいる。しかし、裕之君のママの忍さん(仮名・40歳)とは、あまり交流がないという。
「忍さんはワーママで、裕之君のほかに6歳と4歳の息子と娘がいます。下の子は保育園に預けているそうで、お迎えの時間までは家に帰ってこない。そのため、裕之君は誰もいない自分の家で過ごすよりも、友達と一緒に遊びたがるんです。公園で遊べない日は、うちに遊びに来ようとするのですが、お迎えの時間までずっといられるのもなぁ……と。忍さんとはLINEを交換しているものの、忙しいのか、こちらからのメッセージをスルーされることが多く、連絡が取りづらいので困っています」
ゲーム『フォーナイト』を小学生にプレイさせるのってあり?
和江さんはそもそも、玲君を裕之君と遊ばせることに後ろ向きなのだという。その背景には、忍さんの教育方針への違和感がある。
「裕之君は、家にあるプレイステーションで『FORTNITE(フォートナイト)』というゲームで遊んでいて、息子もプレイさせてもらったそう。息子が遊びたいと言っているので調べてみたら、殺傷や暴力描写があるみたいで、基本的には15歳以上が対象のゲームみたいなんです。しかも、競技イベントに参加するには13歳以上というルールがあり、17歳までのプレイヤーは親権者などの許可を得る必要があると……。玲にはダメと伝え、忍さんにも一応『裕之君が小学生向けじゃないゲームで遊んでるみたい』とLINEしたんですが、『大丈夫! うちは子どもの自主性に任せてるから』っていう返信が来ました」
そんなある日、玲君が「Nintendo Switch」のゲームで遊んでいる時に、「死ね」や「バカ」という乱暴な言葉を使っており、和江さんはびっくりして注意したという。
「裕之君が『フォートナイト』で遊んだ時、『このやろう』『ふざけんな』というような攻撃的な言葉を当たり前のように口にしており、影響を受けてしまったようです。親としては、そんなゲームはやっぱりやらせたくないし、そもそも15歳以上向けのゲームを子どもに遊ばせているのがおかしいと思います」
しかし、そのような考えをママ友に話したところ、「ちょっと過保護かもね」と言われて困惑した和江さん。
「中学生のお兄ちゃんがいる同級生のママ友に話したら、『それくらい普通』って言われたんです。『言葉づかいが悪くなるのは、反抗期も始まってくるので仕方がない』とのことで、それは確かにそうかもと思いましたが、親がいない時間になんでもかんでも子どもに自由に遊ばせるのは、やっぱりちょっと違うんじゃないでしょうか。そのママ友は『男の子は、ある程度好きにさせて大丈夫』みたいなことも言っていて、でも今の時代は危険も多いので、まだまだ親の見守りが必要だと感じています」
和江さんは、玲君が裕之君と遊ぶのをできれば控えてほしいと考えているが、子ども同士は気が合うので次の約束をしてきてしまうようだ。
「裕之君の家にいる間は、どのような遊びをしているのかわからないので、できれば公園で、みんなで遊ぶように伝えています。裕之君は、ママが下の子をお迎えに行って戻ってくる午後7時くらいまで外にいるようなんです。息子ももっと遊びたいと言うのですが、冬場は特に暗くなるのが早いので、5時までには帰ってくるように言い聞かせています。これも過保護なんでしょうか……」
ママ友ウォッチャーの解説!
「過保護」の考え方は家庭によって違う、価値観の合うママ友を見つけて
近年、ランドセルの色が多様化し、女子の制服にパンツスタイルが取り入れられるなど、教育の現場でのジェンダーフリーは格段に進んだ。しかし、家庭での男児の育児に関しては、女児よりもおおらかという昔ながらの傾向はいまだ根強い。多少危険なことをしても問題ない、『フォートナイト』をはじめとする戦闘ゲームなどの影響で、言葉づかいが乱暴になっても、特に気にしないという男児の親は結構いるのかもしれない。
忍さんもまた、そんな男児ママの一人かもしれないが、彼女の場合、放任主義というか、未就学児の子どもがいると、どうしてもそちらに手がかかってしまい、裕之君の様子を把握しきれていないようにも感じた。
和江さんは、「自分は過保護なのか?」と悩んでいるようだけれど、彼女を過保護だとは思わないし、やはりまだ小学生のうちは、何らかの形で親の見守りは必要。ただ、共働き家庭が増えた現在、子どもに注力できる親が減ったため、専業主婦である和江さんが過保護のように“見えているだけ”なのではないだろうか。
和江さんは、普段から子どもとコミュニケーションを取っているため、言葉づかいが乱暴になったことにもすぐ気づけたが、忍さんの場合は、事が大きくなるまでわからないかもしれない。もし裕之君のことが心配なのであれば、忍さんに言葉を濁さず、裕之君の日々の言動に関して教えてもいいと思う。
一方、和江さんが、裕之君というより、息子と裕之君との付き合いに不安を感じているならば、なるべく2人だけの密な付き合いをさせず、大勢で遊ばせるように促すべきだろう。どうしても距離が近いと、言葉づかいなど真似するようになったり、影響を受けやすいからだ。
何を過保護とするかは、その家庭ごとの考えで異なるもの。小学校高学年になると、ますます子ども同士だけの付き合いになるし、放任の家庭も増えるが、年齢制限のあるゲームを禁止したり、門限を設定している家庭は普通にあるはずだ。価値観の合うママ友を見つけて、話を聞いてもらうことで、和江さんのモヤモヤは少しは晴れそうな気がする。