近年、食品スーパー業界が好調だと報じられています。多くのスーパーが増収するなか、減収減益を続けているスーパーマーケットチェーン・カスミ。なぜ、カスミは苦戦しているのか? 実際に利用してきました。
※2024年3月19日公開の記事を再編集しています。
※価格はすべて税込み。
※店舗によって取り扱い商品や価格が異なります。
※2024年3月16日の情報です。
目次
・スーパーマーケットチェーン・カスミとは?
・カスミのイメージは?
・カスミの売り場をチェック
・「肉が高い」というイメージはない
カスミとは?
茨城県に本社を構え、関東を中心に195店舗を運営するスーパーマーケットチェーン「カスミ」。一口にカスミといっても、輸入食品なども豊富に取り揃える「フードスクエアカスミ」、標準店である「フードマーケットカスミ」、低価格路線の「フードオフストッカー」の3業態を展開しています。
流通・小売・メーカーのニュースサイト「流通ニュース」によると、全国主要スーパーマーケット大手10社の24年1月の営業概況は、ライフやヤオコーなど大手8社が前年同月比で増収するなか、カスミだけが減収、一人負け状態となっているようです。
また24年6月度の既存店における販売実績は、売上高4.0%減、客数5.0%減。3月〜6月は全月において売上高、客数ともに前年比割れを起こし、売上減少ループに陥っている様子。
なお、一部経済メディアによると、客足が落ち込んだ理由には“販促の切り替え”があったとか。昨年7月に紙のクーポンを廃止し、カード・アプリ会員向けの販促に切り替えたものの、このシステムの浸透に時間がかかっているといいます。
カスミのイメージは「質は良いけど少し高い」?
カスミに行く前に、長年カスミに通い続けている知人にフードスクエアカスミに抱いているイメージを聞いたところ、以下のような答えが返ってきました。
・生鮮食品の質は良いが、少し高い
・特にお肉はおいしい
・品揃えが良い
・週2回の割引券の配布や、スタンプを貯める紙のチケットが廃止されてしまって悲しい
・魚は近所のヨークベニマルのほうが充実しているため、そちらで買っている
店舗によって品揃えも違うでしょうから、すべてのフードスクエアカスミに当てはまるわけではないでしょう。ただ、ネット上でも「肉の質が良い」「ちょっと高い」「前の割引券がよかった」などと似たような声が散見されたので、同じような印象を持っている人は多いのかもしれません。
というわけで、肉コーナーはしっかり見ていくことにします。
フードスクエアカスミの売り場をチェック! 深夜0時まで営業
筆者が訪れたフードスクエアカスミの営業時間は午前9時~深夜0時まで。この地域は共働き世帯が多いので、遅い時間帯の営業は需要がありそうです。
まず入って気になったのが、店内の明かりの暗さ。ほかのカスミはわかりませんが、普段、店内が煌々と照らされているロピア、ベルク、角上魚類をホームとしている筆者は、控えめな蛍光灯の明かりに少々困惑してしまいました。
商品を品定めする分には十分な明かりではあるものの、まず目に入ったのがお供え物コーナーだったこともあり、入店早々、なんだか暗い気持ちに……。
ちなみに、お供え物が充実しているのは、徒歩5分ほどの場所に霊園があるからかもしれません。
青果売り場をチェック
気を取り直して、青果売り場へ。隙間なく陳列されているせいか、果物も野菜もおいしそうに見えました。
値段的には、周辺スーパーと大差ない印象。小分けパックのいちごが200円台で販売されているのは、気が利いています。
いたるところに「日常の暮らしに必要な商品をお安くしました!」と書かれたポップがあるのですが、実際、卵や豆腐、ヨーグルトなど、常備しておきたい食品がお手頃価格で売られていました。
鮮魚売り場をチェック
続いて、生魚売り場をチェック。すべてパックで販売されており、切り身などが一通りそろっていました。どれもきれいにパックされ、新鮮に見えます。
お刺身が少ないな……と思いましたが、ガラス越しの調理場で1人の店員さんが刺身パックを作っていたので、これから並ぶのでしょう。
鮮魚以上に目を引いていたのが、広くとられた冷凍シーフードの売り場。
真空パックされた魚の切り身や、大きな冷凍エビのパックが平置きされており、「傷みやすい鮮魚以上に、日持ちする商品に力を入れているのかな?」という印象を受けました。
精肉売り場をチェック
続いて、精肉売り場をチェック。かなり広い肉売り場です。驚くほど安いというわけではありませんが、お買い得品が多く、前出の知人が言っていたような「高い」というイメージは受けませんでした。
ただ、「品質が良い」という意見は納得。見るからに新鮮そうなお肉が並んでいます。
そして思わず「えー!?」と声を上げてしまったのが、スーパーの敷地に対して明らかに広すぎるウインナー、ハム、ベーコンのコーナー。
特にウインナーはよく売れるのか、陳列された商品の多さに驚いてしまいました。
さらに、冷凍肉コーナーも充実しています。中でも、冷凍馬刺しの真空パックが大量に平置きされていたのは意外でした。
割高な商品も
また、冷凍おかずやアイスの売り場も広くとられ、品揃えは抜群。ただ、ハーゲンダッツがメーカーの希望小売価格で売られているなど、「安くない」と感じる商品もちらほらありました。
フードスクエアカスミはディスカウントを押し出しているスーパーではないので、こういうところにフードオフストッカーとの違いを感じます。
プライベートブランド「MiiL」
プライベートブランド「MiiL」を展開しているカスミですが、売り場のいたるところにトップバリュの商品は見当たるものの、「MiiL」はなかなか見つけられず……。しかし、生餃子や小籠包を見つけることができました。
価格は「肉汁あふれるお肉屋さんの生餃子」(6個入り)が537円、「お肉屋さんの小籠包」(6個入り)が429円。トップバリュの安価な餃子と比べると容易には手が出せない価格ですが、食卓をレベルアップさせたい時にはぜひ試してみたい本格的な商品です。
「MiiL」の公式サイトによると、ほかにもお惣菜、ヨーグルト、おかしなど、広く展開しているそう。
惣菜&ベーカリーをチェック
惣菜コーナーでは、助六寿司や巻きずし、コロッケなどの揚げ物のほか、おはぎが充実していました。大きなおはぎが3つ入った「三色おはぎ」が目を引きます。
多くのカスミには、焼き立てパンを提供する「パン工房 エミーノ」が入っています。ただ、開店から1時間ほどたった午前10時頃に覗いたところ、商品がまだほんの一部しか並んでいない状態でした。
製造スタッフのシフトの都合上、おそらく開店早々に商品を並べるのは難しいのでしょう。ここのパンをゲットしたい人は、もっと遅い時間に行くことをおすすめします。
【カスミ】「高い」イメージを払拭しようと頑張っている最中?
フードスクエアカスミは、特に青果と精肉売り場が魅力的で、常備したい食品やお肉がお買い得価格で販売されていました。特段「肉が高い」という印象はなく、十分普段使いできるスーパーだと感じます。
おそらく一部の消費者から「品質は良いが少し高い」というイメージを持たれていることはカスミ側も把握しているでしょう。肉のお買い得商品の多さや、いたるところにある「日常の暮らしに必要な商品をお安くしました!」というポップから推測するに、今まさに「高い」というイメージを払拭しようと頑張っている最中なのではないでしょうか。
さらに、今回訪れた店舗はお供え物やおはぎが充実しており、「高齢者の利用が多いのかな?」とプロファイリングせずにはいられませんでした。ちょっと暗めの店内も、落ち着いた雰囲気で買い物がしたいという高齢者にはむしろプラスといえます。
また、品質や品揃えが良い点や、PB「MiiL」の価格設定などから、「もともと高級志向寄りのスーパーだったのかな……」と思わせる部分も随所に残っていて、カスミの歴史を感じた次第です。
ただ、トップバリュの商品が多いこともあって、安い商品とそうでない商品が売り場でひしめき合っており、どっちつかずな印象も受けました。「すべてを安く買いたい!」と願う消費者にとっては、「気が抜けないスーパー」といえるかもしれません。
今は苦境に立たされているカスミですが、今後の動向を見守っていきたいと思います。