「本日限り」「特売」といった魅力的なチラシの言葉。オトクに買い物するためには見逃せないフレーズだが、実は消費者の知らないトリックがあるとか。小林久氏に話を聞いた。
目次
・【ロピア】「8月30日限り79円」のはずが翌日も?
・本気の目玉商品なら「先着300袋限り」「売り切れゴメン」
・景品表示法違反にあたるが「黙認」
【ロピア】「8月30日限り79円」のはずが翌日も同価格?
物価高が続く昨今、1円でも安く買い物をしたいと思うのは至極当然。「今日の特売品」「本日限り」といった言葉をチラシや店頭で見つけると、ついカゴに入れてしまう人もいるのでは?
しかし、実はこれらフレーズには消費者の知らないトリックがあるとか。『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらった。
大人気の食品スーパー「食生活♡♡ロピア」(読み:しょくせいかつラブラブロピア、以下ロピア)某店のチラシで「8月30日限り79円(税抜き)」として紹介されたえのき茸。店頭でも、「広告の品!見逃し厳禁です!えのき茸税抜79円」とアピールされていた。
しかし翌日に同店を訪れると、えのき茸の価格は前日と変わらず。さらに、1週間後には「9月5日〜6日 2日間連続でお買い得!」として、「えのき茸79円(税抜き)」が再びチラシに登場。つまり、「8月30日限り」だったはずの価格が頻発しているのだ。
創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で、著書に『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』を持つ小林氏によれば、こうした価格訴求のやり口は「スーパーではよくあること」だという。
本気の目玉商品なら「先着300袋限り」「売り切れゴメン」
「『えのき茸 税抜き79円』は、よくある特売価格。問屋との商談で話がつく価格ですから、ロピアに損害が出るほどの激安ではありません。一方、販売価格が原価割れするような本気の『目玉商品』なら、『先着300袋限り』とか『売り切れゴメン』と、売り切れ時のリスクをあらかじめヘッジしておきます。ある種の逃げ口上ですね」
ではなぜ、翌日も特売価格で販売したのだろうか?
「ロピアが翌日も同価格で販売した理由として、広告の一日だけでは予定販売数が消化できなかったことが考えられます。青果の仕入れ担当者(または本部からの送り込み)の見込みが外れたり、天候が悪く客足が鈍かったりすると、どうしても余ってしまう。そこで、『店が損するわけじゃないから、明日もチラシ価格で販売して、早く在庫を掃け!』との意向が本部または部門責任者からあったのだと思います。中には、店舗の在庫を近隣の売れる店に回して売り切ることもありますね」
景品表示法違反にあたるが「黙認」
しかし「本日限り」と銘打ったのに、翌日も同額で販売するのは「景品表示法違反」にあたるのではないだろうか?
「確かに『景品表示法違反』ではありますが、この場合、消費者に不利益がないため黙認でしょう。私が担当者なら『ご好評につき昨日のチラシ価格で販売中!』とポップに書いて売ります(笑)」
知られざるセール価格のカラクリ。1円でも安い商品を探して日々チラシチェックに励む人にとっては、なんだかがっかりしてしまう話だ。
「蛇足ですが、この広告の品のえのき茸は前日の29日に入荷していると思われます。その日は、1袋税抜き88円または98円で売っていたのでは? えのき茸は、今の時期から鍋物や炒め物で使用頻度が上がる商品ですから、どこのスーパーでも毎回チラシに入れます。ロピアでは、目玉商品としてえのき茸を特売する時は、『1袋税抜き58円』まで値段を下げて売っていたと思いますよ」
どのスーパーでも見かけるえのき茸。今秋は、その底値を知ったうえで賢い買い物ができそうだ。