【サイゾーオンラインより】
芸能界を引退した元タレントの中居正広氏の性暴力に端を発したフジテレビの問題を巡り、発生当時にフジの専務だった関西テレビの大多亮社長が4月4日付で辞任を表明した。
大阪市の同局で行われた辞任会見には関西放送記者クラブ加盟社以外にも関西の準キー局など全21社43人が出席し、大多氏は約1時間20分にわたり立ったまま取材に応じた。
大多氏は23年8月にフジの編成制作局長(当時)から報告を受け、港浩一社長(当時)に共有するも3人は「プライベートな男女間のトラブル」と即断していた。
だが、今月公表された第三者委員会の報告書では港氏、大多氏らの認識が「対応を誤る大きな要因となった」とし、「中居氏への事実確認も行わず、番組(『まつもtoなかい』)出演を継続したのは経営判断の体をなしていない」などと厳しく指摘している。
この日の会見で大多氏は辞任を決断した理由を、「(被害女性に)寄り添えなかった。関西テレビに営業的損失が出ており、これ以上迷惑はかけられない。責任を取らなければとずっと思っていた」と釈明。
被害者の女性に対しては「辞めた後も謝罪を続けるので逃げたという認識はない。彼女が会ってくれればという話ですが、それは続けたい」と直接謝罪する意向も表明した。
また、問題を隠蔽する意思はなかったことを明かし、中居氏に対しては「1月の会見では怒りが『相当ある』と答えたが、今となってはコメントもない」と口にしている。
スポーツ紙の放送担当記者は会見を振り返る。
「3月31日のフジの清水賢治社長の会見では、記者から大多氏の責任追及の可能性に関する質問も飛んでいただけに、このまま関西テレビの社長に居座ることは難しかったのでしょう。会見で大多氏は、今後、『フジサンケイグループ』の他の企業から報酬をもらうオファーがあった場合について聞かれ、『まったくないし、打診があっても断る』と断言。同グループへの決別宣言だと思われます」
大多氏の辞任を受け、6月の株主総会までは福井澄郎会長が関西テレビの社長を兼任。
しかし、フジの取締役相談役を退任した日枝久氏は同局の取締役に留任しており、その件に関して問われた大多氏は「これからに関しては福井会長が日枝氏と話をすると思う」とした。
大多氏といえば、1981年にフジに入社し、同局の人気“月9”ドラマ『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』などを手掛けたことで知られているが、芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「大多さんは早稲田大学を卒業後、フジに入社して報道局や広報局などを経て、現在のドラマ制作センターへ異動。報道局時代には警視庁担当もしていました。ドラマ制作に携わってからは29歳にして『君の瞳をタイホする!』の副プロデューサーに抜擢され、その後も『抱きしめたい!』や『101回目のプロポーズ』、『東京ラブストーリー』、『愛という名のもとに』など手掛けた作品を次々とヒットに導き、“トレンディードラマ”というジャンルを確立させた名プロデューサーでもあります。他方、私生活では『東京ラブストーリー』や『愛という名のもとに』に出演していた鈴木保奈美さんとの不倫疑惑が写真週刊誌で報じられたこともあり当時は話題になりましたね」
フジにとってはドラマ黄金時代を築いた功労者でもあったわけだが、今回の関西テレビ社長の辞任が世間の耳目を集める一方、古巣の局内ではある噂が囁かれているという。
フジの局員は声を潜めてこう明かす。
「フジの黄金期、港さんは『とんねるずのみなさんのおかげです』などのバラエティー、大多さんはドラマを次々とヒットさせたことで若くして将来の社長候補と目されていました。実際、港さんは15年6月に共同テレビの社長に就任、大多さんは12年6月にウチの常務に就任していますが、フジの社長の本命は大多さんの方でした。
ところが、“ドン”である日枝さんと懇意の芸能プロダクション社長への女子アナ接待などで、せっせとポイントを稼いだ港さんが22年6月にウチの社長の座をゲット。その際には大多さんは荒れまくっていたと聞きます。
こうした因縁もあって、以前から『今回の中居氏の問題を週刊誌にリークしたのは、もしや……』といった噂が局内では流れていたんです。すでに大多さんは関西テレビの社長に就任し、ウチとは距離もありましたから。もっとも、被害者女性はフジの先輩社員らに相談していたという報道もあり、無論、真相は藪の中ですけどね」
さすがに大多氏がマスコミにリークしたとは到底考え難いが、こうした噂が局内で流れているという時点でフジの混乱ぶりや迷走が伝わってくる。
新たに社長に就任した清水氏は「企業風土の刷新」を掲げているが、果たしてフジは再生と改革を果たすことができるのだろうか。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)