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盲目の漫談家・濱田祐太郎『R-1』への思いは「審査員として出たい」

サイゾーオンラインより】

 2018年の『R-1ぐらんぷり』を制した盲目の漫談家・濱田祐太郎が本を出した。『迷ったら笑っといてください』(太田出版)というタイトルは、当時濱田が漫談の冒頭で使っていた定番フレーズだった。

令和ロマン・くるまインタビュー

『R-1』でもツカミとして笑いを誘ったこのフレーズを、濱田は「この数年は舞台で言わなくなってます」と記している。

<だんだんとあれが「面白い」じゃなく「いい言葉やな」って、“感心”の方向でとらえられるようになってきたのが鬱陶しくて>

 芸人として、障害者として、率直で明快な語り口でその思いを記した本を片手に、濱田祐太郎に会いに行った。

「自己啓発的な内容のものが多かったので」

──『R-1』で優勝して以降、こうした書籍の出版オファーもあったと思いますが。

濱田 あったのはあったらしいんですけど、自己啓発的な内容のものが多かったりしたので、俺は興味がないので断っていた感じです。1回断ってからは、俺のところまで話は来なかったですね。

──今回、オファーを受けたきっかけというのは。

濱田 それはやっぱり印税への憧れですよね。やりたいこととそうじゃないことのせめぎ合いですけど、今回担当してもらった方に去年「Quick Japan」で記事を書いていただいて、すごくがんばってやって下さる方々だったのでお願いしてみようかなと。

──昨今、芸人本ブームでいろいろな方が本を出していますが、読んでいますか?

濱田 いやまったく、本どころか芸人のSNSにもまったく興味がないので、一切追いかけていないです。

──言いたいことは言えたという感触はありますか?

濱田 今回、インタビュー形式で俺が答えたことを文章にまとめてもらってるんで、全部しゃべろうと思ってたんですけど、東京と大阪でリモートとはいえ対面している状態なので、下ネタは言いにくいなっていうのはありましたね。

──本編とは別で、下ネタが大量に入ったミニコラムも掲載されています。

濱田 そこは「濱田さんひとりで文章を書いてみますか」となったので、いっぱい入れようと思って発散したわけです。

──帯には爆笑問題・太田光さんの「濱田、気づいてないだろうけど、俺はいつもすぐそばでお前を見てるからな」という素敵なコメントが寄せられています。太田さんとの関係性を教えてください。

濱田 太田さんとは一度しかお会いしたことないんですが、『R-1』で優勝した直後に特番で1対1で対談させていただきました。もう7年くらい前ですね。「テレビにしろ何にしろ、自分の言いたいことをバーっと言えばいい」「それで俺もさんざん怒られてきてるけど、別に気にしなくていいんじゃない?」と言っていただいて。

──その言葉通りやってきた?

濱田 いきなりポンとはできないですけど、少しずつ、今はだいぶできるようになったと感じます。

──その太田さんが「ずっと見てる」そうです。気づいていましたか?

濱田 まったく気づいてなかったですね。俺を見てなかったら、後輩のオンラインカジノは止められてたかもしれないですね。

『ブラリ』の不謹慎は「いつも通り」

──本の中にも出てきますが、昨年ABCで放送された『濱田祐太郎のブラリモウドク』という番組が大きな話題を呼びました。濱田さんの目が見えないことそのものをネタにして「ホンマは見えてるやろ!」とツッコんだり、射的やクライミングに挑戦させたり、かなりムチャ振りというか、不謹慎という受け取られ方をする恐れもあったと思いますが。

濱田 俺としては、いつも劇場でやっていることをやっただけという感じですね。受け止められ方に関しては、障害に限らずどんなネタでも気にしてたらやってられないというか、自分たちが面白いと思うことをやってるだけですね。

──第1回の冒頭で、目の見えない濱田さんにカンペが出されたことがうれしかったと本の中で語っています。

濱田 スタッフも無意識のうちに出してたということだったらしいんですけど。

──そのカンペをトキさん(藤崎マーケット)がイジったことで、番組の方向性が定まったように見えました。全4回、濱田さんにしかできないお笑いが詰まっていたと思うんですが、どうして『ブラリ』のスタッフにはできて、ほかのテレビマンにはあれができなかったのでしょうか。

濱田 これは自分のYouTubeでもよく言うんですけど、キャスティングする側がもっと慣れていくべきじゃないのかなというのは思いますよね。あとは、新しいことにチャレンジしようという気持ちがあるかどうかじゃないですか。

──あの番組はローカルでしたが、TVerの配信もあって全国に見られました。何かアピールできたと感じる点はありますか?

濱田 最近、民放連のテレビ審査会で近畿地区のバラエティ部門で1位になったので、関西でいちばんいいバラエティだったって評価されたんだなというのは思いますね。

漫談家としての「才能」の話

──NSC入学前の『R-1』2012にアマチュアとして出場して、準決勝に残っています。本の中では「話題性半分で上げたのかなと複雑な気持ちになった」とありましたが、3,612人エントリーして準決勝は53人、話題性だけで上がれる結果とは思えないのですが、ご自身のお笑いの才能についてはどんなふうに感じていましたか?

濱田 俺はテレビのお笑いとかバラエティ番組は好きでしたけど、劇場に通い詰めるほどのお笑いマニアではなかったので、その価値観というか基準でいうと、1回戦2回戦で落ちてるようなら芸人目指す才能ないんちゃうかなっていう感じで出てて、3回戦くらいまで行けたら、とりあえずNSC入って数年くらいやってみてもいいんちゃうかなくらいに思ってました。それで、3回戦で1回落ちて、追加合格だったんですね。それも「話題性なのかな」って思った原因でもあります。

──その後、17年に『NHK新人お笑い大賞』決勝進出、翌18年には『R-1』初の決勝で優勝するわけですが、このころには才能を自覚していましたか?

濱田 全然そんなこと思ったことないですよ。自分が優秀だとか、周りの芸人がどうかみたいなことには興味がないんで、ずっと『R-1』で優勝したいな、という目標だけでやってきた感じですね。17年に劇場メンバーになってNHKの予選に出られるようになって、出たらたまたま通ったんで、ホントにラッキーくらいの感じですね。

──18年の『R-1』では、ゆりやんレトリィバァ、粗品、せいや、ルシファー吉岡、マツモトクラブ、おいでやす小田など錚々たるメンバーを蹴散らしてしまったわけですが。

濱田 それもたまたま、別にそのときだけですからね。今振り返ってみればすごい人たちだなって思いますけど、優勝したときはシンプルにめっちゃうれしいなっていうだけでしたね。

──優勝から7年、賞レースも増えて毎年新しいスターが生まれています。もう一度世の中にインパクトを与える意味でも、『R-1』への再挑戦を考えたりしますか?

濱田 もう出ることは考えてないですね。今は準決勝のMCもやらせていただいているんで、出るとしたら審査員として出たいかな。そっちのほうがインパクトはすごいし、注目もされるでしょうから。

濱田祐太郎にとっての「見え方」

──『R-1』直後と今現在とでは、視聴者の反応にも変化がありますか?

濱田 基本、自分がしゃべりたいことをしゃべってるんで気にしてないんですけど、たまにエゴサーチすることはあって。『R-1』直後だったら「ただがんばってる障害者」みたいな感じでしたけど、最近は『耳の穴かっぽって聞け』(テレビ朝日系)や『陣内バカリズムの最強ピンネタSP』(フジテレビ系)なんかで「毒舌」と言われることが多くなってますね。そこからYouTubeとかアプリでやってるラジオまで追いかけてくれる人には、時事ネタもしゃべるし下ネタもどんどん言う面白い人と思っていただけてるみたいで、その応援され度合いはちょっと変わってきてるかなというくらいは意識していますね。

──テレビ業界でいえば、コンプラが厳しい時代になったといわれます。この時代の変化というのは、障害者である濱田さんという芸人にとって、有利なのでしょうか、不利なのでしょうか。

濱田 有利不利でいえば、不利じゃないですかね。テレビでバラエティーをやる幅が狭くなったというよりも、本にも書いてますけど、そういう差別的な意識を持っている人が「この人を出さない」ということの隠れ蓑にコンプラを使えるようになってると思います。

──目の見えない芸人である濱田さんが「見られ方」をどう意識しているかについてもうかがいたいのですが、漫談のとき白杖を持っているのは最初からですか?

濱田 最初は持ってたかな。でも、持ってたほうがわかりやすいなと思って。ああ、見えない人なんだなっていうのがひと目でわかるんで。こういう芸風だからフリップみたいなものというか、裸芸の人だったら裸で出てくる、それと一緒で「目が見えてない」ということをネタにしてるんで、それをわかりやすくするために持ってていいかなと。

──それと、これも「見られ方」の話なんですが、これから歳を取って老けていく、もしかしたらハゲるかもしれないという可能性の中で、濱田さんが芸人のルックスというものをどうとらえているかを教えてほしいのですが。

濱田 ルックス……ルックスはそうですね、まあ何にも見えてないんでね、とらえようがないからあんまり考えてないですかね。どんな見た目であれ面白い人は面白いんで。

──ネタについて、濱田さんは『R-1』挑戦時、ほとんど練習をしなかったという話も書かれていました。それは今も変わりませんか? 滑舌もすごくいいですが。

濱田 僕の場合は本当にあったことをしゃべってるだけなんで、やり慣れる必要が特にないっていう形のネタなんで、練習しすぎると「その出来事、本当なの?」という感じになりそうだし、面白さを少し下げてしまう可能性もあるのかなと。滑舌のよさはまったく意識したことがなかったんで、芸人になってから周りに言われるようになって、そうなんや、って自分では全然わかってなかったです。まあ金魚番長と比べればね、いいと思いますけど。

(取材・文・写真=新越谷ノリヲ)

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◎はまだ・ゆうたろう

お笑い芸人。1989年9月8日生まれ、兵庫県神戸市出身。吉本興業所属。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ系)にて優勝。現在は関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。2025年5月には吉本新喜劇とのコラボ舞台で主演を務める。レギュラー番組に『オンスト』(毎週金曜日/YES-fm)。

◎『迷ったら笑っといてください』

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