俳優アレック・ボールドウィン(63)が主演映画の撮影現場でスタッフ2人を死傷させた銃暴発事故後、初めてニュース番組のインタビューに応じ、「自分は銃の引き金を引いていない」「銃には入っているはずのない実弾が装填されていた」と主張した。
事故は現地時間10月21日に、米ニューメキシコ州で行われていた西部劇映画『Rust』のリハーサル中に発生。アレックが、助監督から、銃は空である「コールドガン(空の銃)」だと手渡された銃で演習をしていたところ暴発し、至近距離でカメラを構えていた撮影監督ハリーナ・ハッチンズ(享年42)の胸に銃弾が貫通し、死亡。ハリーナの後方にいたジョエル・ソウザ監督(48)も負傷した。
アレックは翌22日、Twitter で「悲劇的な事故で、ショックと悲しみで言葉を失っている」「捜査に全面協力する」とコメント。30日には車でつけ回してくるパパラッチに怒りを抑えながら、「捜査中だから事故については何も発言できない」「撮影では偶発的な事故は起きるが、今回のような事故はめったにない」「(撮影で)本物の銃を使うべきなのかどうなのか、見直すべきだと思う」とコメントする姿を、米ニュースサイト「TMZ」が動画付きで伝えている。
そんなアレックが、米ABCニュース番組の単独インタビューに応じた。同局は12月1日に予告編を公開し、アレックが嗚咽しながら「ハリーナは誰からも好かれる人だった。尊敬もされていた」と話す姿、「いまだに信じられない。現実のものと思えない」と憔悴しきった顔で声を絞り出すシーン、また「台本には引き金を引くとは書いてなかったはずですよね」と質問され、「引き金はひかれていない。私は引き金を引いていないんだ」「ノーノーノーノー。私は人に銃を向けて、引き金を引くなんてことは絶対にしない」と真剣な顔で主張するシーンを流した。
げっそりとやつれたアレックは、「被害者面はしない」と明言したが、「自分の身に起きた最悪のこと」だと語り、実弾はどのようにして撮影現場に持ち込まれたかについては、「検討もつかない。でも誰かが、持ち込んではいけない実弾を銃に装填したんだ」と説明。今なお混乱している様子だった。
インタビューを行ったベテランニュースキャスターのジョージ・ステファノプロスは、同局の朝の報道バラエティ番組『グッド・モーニング・アメリカ』で、今回のインタビューについて、「ABCでこの20年間、何千ものインタビューを行ってきたが、こんなに緊迫したインタビューは初めてだった」「アレックはとても率直に質問に答えてくれた。(亡くなった)ハリーナ・ハッチンズについても語ってくれた。事故についてもね。正直、驚きました」と語り、ぜひ本編を見てほしいと訴えていた。
11月、俳優ジョージ・クルーニーは出演したポッドキャストで、事故の原因について「予算削減のために未経験の武器担当者を雇ったことにある」と批判。さらに、「自分は銃を手渡されるたびに必ず中身を確認する。銃口を向ける相手や周囲のスタッフにも中身を見せ、確認した上で撮影を行う」と語っていたが、今回のアレックのインタビューではジョージの一連の発言についても触れられていた。
ハリーナの父親は、「娘の死の責任はアレックにはない。小道具である銃を管理する人間に責任があると思う」と断言しているが、事故直後ハリーナを介抱したスタッフはアレックや武器担当者、助監督、プロダクションらを相手どり「精神的苦痛に悩ませられるようになり仕事ができなくなった」と訴訟を起こしている。
アレックへのインタビューは、日本時間3日に放送される予定。警察の捜査が続く中でどこまで事故について語るのか、特に引き金を引かずにどのように銃が暴発したのかについて、遺族や関係者が納得のいく説明をするのか、注目が集まっている。