• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』日本を出て中国・深圳で生きる原動力「この町で人生を変えたくて ~結婚とお金と生きがいと~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月19日の放送は「この町で人生を変えたくて ~結婚とお金と生きがいと~」。

あらすじ

 真新しい超高層ビルが立ち並ぶ中国のハイテク都市・深圳。住民の平均年齢は33歳で、街全体が活気にあふれている。開発スピードもめまぐるしく、番組のナレーションでは「シリコンバレーの1カ月は深圳の1週間」と伝えられていた。

 こちらでバー「モザイク」を営む35歳のゆきは、今年の2月に前のオーナーからこの店を引き継ぐ。SNSで流れてきた譲渡の情報がきっかけで、わずか3秒の即決だったという。ゆきは子どものころから日本の生活に息苦しさを覚えていたと話し、教師になるもその後世界中を旅し、深圳にたどりつく。「モザイク」は日本人駐在員たちで連日にぎわっている。

 即決のゆきは結婚も早く、日本の婚活はふるわなかったというが、中国で婚活を始めて最初に出会ったリャンと早々に結婚する。しかしゆきは中国語を話せず、リャンは日本語を話せないため、2人の会話は英語だ。

 リャンが同僚をモザイクに連れてきたとき、わからない中国語の会話の輪に自分が呼ばれたことや、営業時間を過ぎても帰らないことにゆきは不機嫌そうだった。新婚のワンルーム生活もゆきにはストレスだったようで、ゆきは自分用の部屋を別に借りる。

 モザイクの客である26歳の鈴木は深圳3年目。投資会社で働き、新米ながら数億円の運用を任されている。日本について「お金持ちになりたいというと汚いと思われる」「資本主義の犬め、みたいな」と話し、鈴木も日本社会に窮屈さを感じていたようだ。鈴木はモザイクで出会った中国人女性をデートに誘い、中国で生活を根付かせていきたいようだった。

 同じくモザイクの客で47歳の高須は、世界中から深圳に集まってくる最先端技術を世界へ発信し、日本企業と最新技術の橋渡し役を行っている。大規模会場で毎月のように行われる展示会に足を運び、新しい技術を前に楽しそうな様子だった。世界最先端の情報を発信している高須のSNSには、世界中から1万2,000人を超えるフォロワーがいるという。

 番組の最後では、ゆきが中国語の勉強をはじめ、夫婦でゆきの誕生日を祝っていた。

夫のやることなすこと気に食わないのは、無自覚な要求の多さゆえ?

 モザイクの店主のゆきは、異国でにぎわう店を切り盛りしており、人生を1人で切り拓いていける行動力の持ち主だが、それゆえに我もかなり強そうだった。夫のリャンは国際結婚に憧れがあったのか、「日本人女性は~」となにかと連発するが、ゆきは主語を大きくするなと怒っていた。

 そんなリャンは基本的に悪気がなくおだやかだが、ゆきはリャンの一挙手一投足にイラついているように見えた。夫のやることなすこと気に食わないという妻は多いが、これは妻自身の無自覚な要求の多さにも問題があるように思う。

 しかし、番組の最後でゆきは「(リャンに対し)私と一緒にいてくれることがすごいなぁって思います」と話していて、結婚生活はゆきを少し大人にしたのだろう。

 ゆきと鈴木は「日本社会がどうにも合わず、世界中を旅し深圳にたどり着く」という経緯が似ている。特に鈴木は「日本って『お金持ちになりたい』というと汚いと思われるじゃないですか」「資本主義の犬め、みたいな」と話していた。しかし、実際に鈴木に口頭でここまで言った人は本当にいたのだろうか。鈴木の話を聞いていた番組スタッフも「そうかなぁ」と同意しかねていた。

 実際のところは、なんとなく雰囲気でそう感じたとか、ネットの書き込みを見た、あたりなのではないだろうか。ネットは大げさなものほど目を引く世界なので、リアルとは異なる。もし実際に日本で、鈴木の夢に対し対面でこのように言う人がいたのだとしたら、それは日本社会が悪いというより、話す相手のチョイスを間違えたようにも思う。

 一方で、「過去を(実態よりも)くさして、それをこれからの生きるためのバネにする」という感覚は、鈴木ほどではないものの、私も上京してきた立場なのでわかるところもある。国や地域でなくとも「自分を振った相手、うまくいかなかった勤め先を悪者にして奮起する」「あいつを見返してやる」などまで含めれば、心当たりのある人も少なくない感覚に思える。

 その人がよりよく生きるためのバネになるのならこのやり方もアリだとは思うが、何かをくさして奮起するというのは、実態以上に過去や故郷や人などを嫌悪するなどの副作用もあるのではないかと思ってしまった。しかし鈴木は26歳であり、「若さゆえ」とも言える。

 一方、3人目の登場人物である47歳の高須は大人だった。年季の入った技術オタクでありビジネスマンの高須は、展示会を巡り新技術に食いつき、スタートアップの企業を自転車で回り商談してと、愛する最新技術に世界で一番触れられる場所で、いきいきと暮らしていた。

 また高須はゆきや鈴木のように「自分は日本が合わない」といった発言はなく、むしろ中国の最新技術を日本に伝えていきたいと話していた。高須のように過去へのネガティブな気持ちを原動力にしなくとも、健康的に、自然に頑張れる人もいるのだ。

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