今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
六代目引退、七代目襲名の「デマ」
「司忍組長は、もう80歳なんですね。びっくりしました」
編集者さんから言われました。たしかに司六代目には「80歳のおじいさん」のイメージはないですよね。
年明けに「六代目山口組・司忍組長は1月25日、80歳の誕生日に引退を表明、七代目は高山清司若頭が襲名」という「チェーンメール」ならぬ「チェーンLINE」が拡散されたことがニュースになりました。
ニュースでは、「ヤクザの世界でもネットやSNSを使った『情報戦』は今や常識になっていますが、まさにその一端というところでしょう」という「警察幹部」氏のコメントを掲載していますが、いや「情報戦」でなく単なるデマですよ。
日頃アウトローニュースを見ている人なら、すぐデマとわかると思いますけどね。六代目はお元気そうですし、今は「特定抗争指定暴力団」に指定されているので事務所も使えず、執行部が集まるのも難しいので、重要な決定はなかなかできないでしょう。
まあこういうウワサが出回るのは、やはり「六代目もカシラ(若頭)も後期高齢者だし、これからどうなるのかな?」と考える人が、組関係者だけでなく、警察やマスコミの中にも少なからずいるからですかね。最近は、分裂や過剰な暴力団排除で「いい話」はまったくないですし、おめでたい継承を待っているのかもしれません。
今回の「代替わり」騒動は、「とりあえずニュースを出して、ヤクザ業界の反応を見たのでは?」という説もありました。政治家さんとかが、たまにやってますよね。
七代目が高山若頭ですと、「また弘道会か!」となって、再分裂する可能性も指摘されているからです。今となっては、主に経済的な理由で再分裂はないと思いますが、一部の組員の気持ちが離れる可能性はゼロではないでしょうね。
ちなみにタテマエとしては、代替わりでは「先代の盃は呑んだが、今回はムリ」と拒否ることはできます。生命を預ける相手を選ぶ権利はあるということです。実際にはいろんな人間関係があるので、簡単ではないのですが。
親分は死ぬまで親分
ざっと山口組の継承の歴史を見てみますと、ご存命のうちに代替わりが行われたのは、山口春吉初代と渡邉芳則五代目だけです。春吉初代はもともと港湾荷役業のビジネスのために地元の親分の盃を受けただけで、博奕には興味がなかったといわれています。これに対して息子さんの登二代目はイケイケだったとか。
渡邉五代目は病気が理由ですが、突然だったので「クーデター説」もありました。五代目は一部の幹部によって強引に引退させられたというんですね。すでに五代目も亡くなられたので検証できませんが、ほかの登二代目、田岡一雄三代目、竹中正久四代目は亡くなるまで当代でした。
二代目は、「浅草で抗争相手に刺されたケガが元で亡くなった説」が有力ですが、作家の正延哲士さんは親族に直接取材して「死因は脳溢血」と書かれています。刺されてから2年くらいして亡くなってますし、もともと高血圧だったそうですよ。数えで42歳、男の厄年でした。
三代目は68歳と当時としては長生きな気もしますが、入院生活も長かったですね。お嬢さんが引退を勧めたら、「子分に裏切られるから」という理由で引退しなかったと、宮崎学さんとの対談で明かしています。これってすごいニュースだと思うんですけど、あんまり話題にならないですね。
ぶっちゃけヤクザの世界は裏切りがデフォルトなんですが、三代目のような大親分ですら、そう思っておられたとは……。
そして、四代目は51歳で射殺されています。
思えば昔は射殺も珍しくはなかったですね。すごい時代ですが、戦後しばらくは一般社会でも戦争で使われた銃が出回っていて、人殺しも年間3,000件くらいありました。1954年が3,081件とピークだそうで、2013年には初めて1,000件を切ったことが話題になっています。
最近はワイセツ事件が増えているそうですが、これはめくれた(発覚した)だけの気がします。昔は今よりもっと泣き寝入りしてますよね。
話がそれましたが、カタギさんまで代替わりに注目しているのは、人気者の証拠でもあります。いつ、どういう形で継承されるのか? 「Xデー」は、そんなに遠くない気もします。