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『ザ・ノンフィクション』暗い世相にまばゆいバブル世代の華やかさ「もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月13日の放送は「もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~」。

あらすじ

 都内屈指のラーメン激戦区、東京・荻窪。35歳のえつ子は、コロナ禍で最初の緊急事態宣言があけた直後の2020年6月、この地で「旨辛麺 かつくに」をオープンさせる。荻窪では少ない、辛みそを売りにしたラーメンだ。

 コロナ収束の見通しが全く立たない難しい時期にあえて開業を選んだのには理由がある。えつ子の父、裕也は埼玉県でキャバクラや飲食店を6店舗運営しており、コロナ前は年商10億円を目標に掲げ4億円は稼いでいたが、売り上げは10分の1に下がってしまったと話す。

 主力の川越にある海鮮居酒屋では夜の時短営業対策でランチを始めるも、客は1日に数人程度、そもそも川越の街に人がいないという。裕也の店であり、えつ子がかつて働いていた狭山のキャバクラは無期限休業中だ。ラーメン店ならばとその可能性に賭けての出店だったのだ。

 かつくにの、7人しか入らないカウンターの店で、えつ子と、元キャバクラの黒服だった菊池は懸命に働くも、テレワークの影響もあり、荻窪の街を歩く人が夜は格段に減ってしまい、店を開けても閉めても赤字の状態が続いてしまう。

 21年5月、えつ子は店頭に「もう限界かもしれません。売る物も(私物)無くなり このままではお店も1カ月もちません。もう限界です。皆様 お客様 どうかお助け下さい  店主えつ子(一部のみ抜粋)」と張り紙を出す。

 えつ子の訴えに、ネット上では同情商法はやめろ、協力金はもらうくせに、などの心無い声も見られたが、店には応援すると客が何人も訪ねていた。

 それでも赤字は続き、えつ子は閉店を決心。しかし、菊池が裕也とえつ子に店の継続を土下座して懇願、10日間の猶予を与えられた。それでも、店を営業するための目標金額の半分に及ばず、かつくには休業となった。

 えつ子は、応援してくれた常連に送る手紙とともに、冷凍ラーメンをセットで送るなど、通販という新たな活路を見いだそうとする姿も伝えられていた。

6店舗のうち5つをたたむ

 えつ子の父、裕也は、屋台から一代で事業を伸ばしたやり手の実業家だ。番組の最後では6店舗あった店舗のうちの5つを閉店や休業状態にする厳しい決断を下す。

 そのうちの一つ、西東京市の海鮮居酒屋の最後の日は、裕也も接客を行い、閉店後は人がいなくなった店に戻っていく背中が映されていた。まったく自分の落ち度ではないコロナという要因で、手塩にかけてきた店をたたまないといけない無念、悔しさを思う。

 番組ではコロナ前、会社が絶好調のころの自社パーティー(裕也50歳の誕生祭)が紹介されていたが、裕也は銀白色の袴姿で、リオのカーニバル風のダンサーたちを大勢従え登場するなど、今の日本からはほとんど失われたように思われた「バブリー」を地で行っていた。そして、これが見ていて爽快なのだ。

 社長室の壁には、家の玄関ドアほどある大きな馬の絵画が飾られ(馬主になりたいと話していた)、部屋にはえつ子の身長くらいありそうな陶磁器のツボ、円形の屏風、金色を基調とした縁起物があった。

 バブル世代は金銭感覚と美的感覚がおかしいと煙たがられることもあるが、一方で、バブル世代には華がある。華やかさ、派手さが、今の先の見えない暗い世相だからこそよりまばゆい。そしその圧倒的な華やかさが、新宿歌舞伎町ではなく、狭山から噴き出していたというのもたまらない。

 裕也の社名「インフィニティ78」の78は七転び八起きが由来だという。先の見えない苦難の中かと思うが、“狭山の帝王”の再起を願う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~」。和歌山県の山奥で、「働きたくない」20~30代の若者がシェアハウスで共同生活を送っている。そんな理想郷に、現実の象徴でもある「赤ちゃん」がやってきて……。

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