覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
マスコミは不公平?
あえて名前は伏せますが、先日、著名な芸人さんのお兄さんが建造物損壊の疑いで逮捕されましたね。
現役の六代目山口組系組織の組員で、以前も殺人で懲役に行ってるのは有名な話です。正直、「また逮捕されちゃったんだぁ……」とは思いましたが、芸人さんは関係ないですからね。
この件、ネットではそれなりに盛り上がっていますが、テレビ局や新聞、「週刊文春」(文藝春秋)、「週刊新潮」(新潮社)とかはスルーです。野田聖子さんのご主人は「元暴力団員」と大騒ぎやのに……。
もしかすると野田さんは「自分で選んだパートナー」で、芸人さんは「自分で選べない家族」やから、ちゅうことなのかもしれませんけどね。もちろん瑠美は、この芸人さんも叩かれればええとは思てません。芸人さんでも家族はみんなと同じ家族なんですから! マスコミの扱いが不公平ちゃうかなとは思いますが。
家族が犯罪者なら一家離散も
瑠美の場合は、本人が何回も懲役に行ってますから、家族にはめちゃくちゃ迷惑をかけました。でも、家族はそんな瑠美でも大事にしてくれてます。息子たちは、「オカンはオカンやし、俺は俺。オカンが今は頑張ってるのもわかってるから」と。こしょばい(くすぐったい)けど、ほんまにありがたいことです。
もちろんケンカもしますけど、息子たちとは今もよく一緒にごはんを食べますし、いつの間にか9人に増えている孫たちともよく遊んでます。仲良しの秘訣は……。うーん、なんでしょうかね、お互いに包み隠さずになんでもしゃべるからですかね。あとは、自分の子どもだからって自分の考えを押しつけないようにしています。子どもだって1人の人間ですからね。ようしゃべる大阪人の中でも、ようしゃべってます。我が家は(笑)。
まあ瑠美は覚醒剤事件で、「被害者」がいてないから家族関係も大丈夫やったのかもしれません。殺人や性犯罪やと、家族にも迷惑がかかりますよね。まず事件を起こした段階で、高確率で家族から縁を切られますし、一家離散も、珍しいことではないです。
でも、よくよく考えてみると、うちの場合は家族が「被害者」だったんだと思います。悲しい思いをたくさんさせました。やっぱり家族は「世間様に申し訳ない」「恥ずかしい」「犯罪者の家族と世間から見られる」「もう家族やない」とか思いますよね。
家族に縁を切られると、ムショで差し入れも面会もしてもらえませんから、けっこう悲惨です。出所しても誰も迎えに来なくて、行くところもなければ、ムショに戻るしかないです。
行き場のないムショ帰りを受け入れる更生保護施設もあるにはありますが、毎日就職活動をするのが前提で、生活指導は施設にもよりますが厳しいし、長くても半年くらいしかいられません。そもそもムショ帰りを雇ってくれるところは、まずないですからね。
ちなみに瑠美は知らなかったのですが、先日亡くなった作家の西村賢太さんは、小学生の時にお父さんが強盗強姦事件を起こしているんですね。
日本テレビ系の『テレビ三面記事 ウィークエンダー』で、実名で事件をおもしろおかしく紹介されたそうで、そこから不登校になったそうです。
それはなりますよね。オトンがレイプ事件起こしてテレビに出たら、最悪です。10代やと特にツラいと思います。親の離婚や引っ越しもあって、高校には進学しないで独り暮らしで日雇いのバイトをしながら安いアパートを転々として、趣味は読書だけ。
そこから作家さんになったんですね。家族が事件→一家離散→不登校→中卒→非正規雇用……まではありがちですが、そこから芥川賞はすごいです。
玉袋筋太郎さんと飲んでケンカしたりと、レアなエピソードも多いですが、死ぬには若すぎましたね。寂しさや自分のイヤなところをちゃんと作品に出せたのは、ただの飲兵衛やないですね。ご冥福をお祈りいたします。