コーヒーブランド・ジョージアのCM「ジャパン クラフトマン 広瀬アリス TVCM『念願の仕事』篇」が、声優ファンの間で話題になっている。CM制作会社に勤務するアニメ好きのOL・広瀬アリスが「(声優は)梅原裕一郎!?」と歓喜し、がぜん張り切って上司に山積みの企画書を提出するというストーリーだ。同CMでは実際に、梅原自身もナレーションで出演している。
甘いルックスのイケメンで女性ファンから人気を集め、国立の名古屋大学出身という高学歴声優としても知られる梅原だが、代表作として挙がるのは『あんさんぶるスターズ!』蓮巳敬人役や『アイドルマスター SideM』鷹城恭二役など、ソーシャルゲームがほとんど。アニメ作品にも数多く出演しているが、近頃でいう『鬼滅の刃』(TOKYO MXほか)や『呪術廻戦』(TBS系)などのいわゆる“覇権アニメ”の主要人気キャラクターはまだ演じていない。
「まずは人気アニメで主要キャラを演じ、そこからアーティスト活動を行ったり、イベントを開催するというのが『正統派声優』としての慣例でした。一方で梅原は、最近の20〜30代半の若手層に多い『ソシャゲ出身声優』に分類されます。昨今のアプリゲームは、ほとんどが“フルボイス実装”のため、各声優事務所へ『安価でスケジュールが空いている若手声優を』といったオファーが届く。マネジャーはそこへ売り出したい無名若手声優を当て込み、ゲームの人気が出れば一躍有名になれます。梅原の場合、『アイドルマスター SideM』に起用され、関連イベントで役として幕張メッセなどの大きなステージに立ちながらファンを獲得していきました。これまでとは全く異なる、新たなパターンの“売れ方”ではないでしょうか」(声優業界関係者)
話題のアニメに出演せずとも一級の人気を手にした梅原だが、過去には、プライベート用のTwitterアカウントの流出疑惑が浮上したことも。当該アカウントは先輩声優の遊佐浩二や寺島拓篤らへの悪口を発しており、アカウント主が特定できる内容がつぶやかれていたことなどから、「梅原の裏垢では?」とネット上でうわさが広まった。また、2018年12月放送のラジオ番組『宏太朗と裕一郎 ひょろっと男子』(文化放送)で、「ファン心理がわからない」「ファンサービスは(スタッフに)言われてるからやってるだけ」などと発言し、ネット上で炎上騒動を巻き起こしている。
これら疑惑や騒動によって、「炎上声優」としても知られるようになったが、業界内では梅原と同じようにソシャゲ出身声優は増加傾向にある。では、彼らの「声優としての技術」はどうなのだろうか。
「正統派声優たちと比べると、演技力は劣ってしまい、無個性といえる。アプリゲームは、キャラクター同士の掛け合いのシーンが少ないため、収録の際は、たった1人でブースに入り、膨大なセリフ量をこなしていきます。対してアニメの現場は、コロナ以前だとスタジオ内に15人前後の全キャストが揃い、ベテランも若手も同時にマイク前で収録をしていました。若手声優はそこでベテランの芝居を見て学ぶことができたのですが、ゲーム収録の現場ではそれが叶わなかった。また、今はアニメ収録の場合も、コロナ禍の状況を考慮して、キャラクターのセリフを個別に抜き出して声優ごとに収録する『抜き録り』がほとんど。複数人での収録は最大3人までが限界です。先輩の技術を盗む現場に立ち会えない状況下で、彼らのような『ソシャゲ出身』の芝居が無個性になってしまうのは仕方がないことかもしれません。“声優”という職業のかたちも、時代とともに変化してきています」(同)
技術以上に「ルックス」も強く求められるようになった声優業界。今後は「実力派」と「それ以外」にくっきりと棲み分けがなされるようになるのかもしれない。