コンサートや観劇の際に欠かせない「双眼鏡」。特に、ジャニーズアイドルのコンサートでは、デジタルチケットシステムが導入されて以降、入場時まで座席が判明しないことから、ステージから遠い座席を引いた時でも十分に“推し”の姿を見られるよう、あらかじめ双眼鏡を持参する人が増えているようだ。
そこで今回は、ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店カメラ専門チームマーケット・イノベーターの川上朋孝さんに、双眼鏡選びのポイントについて話を聞いた。
ジャニーズコンサートや舞台観劇には、8~10倍が最適! 「12倍以上はおすすめしない」ワケ
――双眼鏡には、大きく分けてノーマルな双眼鏡と防振双眼鏡の2種類があると思いますが、違いについて教えてください。
川上朋孝さん(以下、川上) 防振双眼鏡は、手ブレ補正機能がついているので、遠くの対象物をくっきり見ることができ、動きのあるものも目で追いやすいという特徴があります。高性能な分、双眼鏡よりボディが大きく重量があり、価格も高く設定されていますが、「よりストレスなく推しを見たい」という方であれば、防振タイプがおすすめですね。
――双眼鏡を選ぶ際のポイントはありますか?
川上 まずは、双眼鏡のスペックを見てください。商品名の後ろのほうに「●×●」と数字が2つ書いてあり、1つ目の数字が倍率、2つ目の数字が対物レンズの大きさを表します。対物レンズが大きいほど視界が広くなるため、その分光量も多くなり、目に負担をかけずに明るく、肉眼で見ているような感覚でステージを見ることができます。最近ですと、42mmのレンズの機種がジャニーズファンのみなさんに人気ですね。
また、使用する会場に合った倍率の機種を選ぶことも重要です。
――店内に、主要会場ごとにステージまでの距離やおすすめの倍率が掲示されているので、とても参考になります。
川上 東京ドームやさいたまスーパーアリーナで使用をおすすめしている12倍以上の双眼鏡は、そんなに種類が多くありません。倍率を上げると、その分視界が狭くなりますし、ピントを合わせるのも非常に難しくなるので、実はあまりおすすめしていないんです。12倍以上の双眼鏡は、船の上から遠くのものを見たり、海外旅行に行って、サバンナで野生の動物を見たりなど、自然観察に適しています。
――コンサートや舞台で使用するには、8~10倍が最適ということですね。
川上 そうですね。例えば、現在Snow Manが『滝沢歌舞伎ZERO 2022』を上演している新橋演舞場は、そこまで大きい会場ではないため、10倍の双眼鏡だとアップになりすぎてしまいます。会場が大きくない舞台公演などは、8倍ないし、もう一つ下の6倍のものをお選びいただいたほうがいいでしょう。
逆に、東京ドームやさいたまスーパーアリーナなど、ドームやアリーナクラスで行われるコンサートであれば、ベースとして10倍のモデルを選んでいただき、「もう少し視界を広げたい」というお客様には、8倍の機種をご案内させていただいています。
なお、双眼鏡には1万円以下で買えるものから数万円するものまでさまざまありますが、例えば、同じ10倍の双眼鏡でも、ケンコーの「10×20MC HG」(3,310円、写真上)と、ビクセンの「アトレックII HR10×32WP」(2万6,400円、写真下)では、対物レンズに12mmの差があり、接眼レンズの大きさもこのように変わってきます。
比べてみると、その差は歴然ですよね。接眼レンズが小さいと、視界が狭い分ずっと目を凝らした状態で使用することになりますから、次第に目が疲れてきてしまう。レンズが大きければ楽に使用できますし、手ブレも目立ちづらいというメリットもあります。
――倍率が高ければいいというわけではないんですね。ちなみに、メーカーごとの特徴はありますか?
川上 使っているボディの材質が多少異なってきます。例えば、ケンコーの「ウルトラビューM 10×25FMC」(9,590円)という低価格のシリーズは、プラスチックのボディで重さは250gと、比較的軽量のモデルになっています。
同じくリーズナブルなシリーズで、ビクセンの「アリーナスポーツMP8×25」(1万4,030円)というモデルがあるのですが、この機種はボディの一部に金属を使っていて、見るところの高さ調整が非常にしやすいことが特徴。高さの調整幅が広いと、まつげなどが被らずより見やすくなります。また、このモデルはレンズに特殊なオーロラのコーティングがされているので、ステージの照明で白っぽく見えがちな視界をクリアに見せてくれます。
――ちなみに、秋葉原店で一番の売れ筋商品は?
川上 4月16~18日に東京ドームで行われたKing&Prince(以下、キンプリ)のコンサートに行くというお客様がよく買われていたのが、先ほど紹介したビクセンの「アリーナスポーツMP8×25」でした。ややお値段が高めとなると、ビクセン「アトレックII HR10×32WP」(2万6,400円)ですね。この東京ドーム公演に際しては、双眼鏡が3日間で350本ほど売れました。
昨年末に日向坂46が幕張メッセで行ったコンサートは2日間の開催ではありましたが、約400本売れています。新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し、イベントの人数制限が緩和された影響で、双眼鏡の市場もだいぶ活気が戻ってきた感覚がありますね。
――やはり秋葉原という立地柄、アイドルファンのお客様が多いのでしょうか?
川上 そうですね。男女比でいうと、男性が4割、女性が6割といったところ。コンサートやイベントだけでなく、野鳥観察や天体観測を目的に買いに来られる方もいるので、10代後半くらいから60代くらいまで、非常に幅広いお客様に起こしいただいています。
「●●のライブに行くんですけど~」と相談されることも多いので、東京ドームのイベントスケジュールをチェックしたり、人気アイドルのコンサート情報は事前に把握しておいて、弊社本部とも連携を取りながら、十分な商品在庫を確保しています。
――昔と比べると、市場全体は広がっていますか?
川上 私は入社12年目で、もともとは新宿西口店で双眼鏡売り場を担当していたんですが、当時から毎年大みそかに行われている『ジャニーズカウントダウン』などに向けて、高単価のもの、それこそ防振双眼鏡を目当てに買いに来られる方がいました。今はジャニーズグループ自体の数が増えましたし、若年層のファンがさらに増えてきた印象がありますから、お店に買いに来られる方はどんどん増加しているように思います。
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インタビュー後編では、引き続き川上さんに、ホールクラス、アリーナクラス、ドームクラスの3つの会場別に、それぞれ適した双眼鏡をご紹介いただく。
(取材・文=編集部)