映画監督・小林勇貴氏が「原案」として携わっていた今夏公開予定の映画『激怒』をめぐり、4月25日、同作のプロデューサー・森田一人氏が「小林氏のクレジットを外す」と発表した。
映画監督や俳優による暴力行為が次々に取り沙汰されている昨今、ネット上では、小林氏の監督作『ヘドローバ』(2017年公開)における子役への暴力シーンに注目が集まり、「児童虐待では?」と批判が続出。炎上状態になった。今回のクレジット削除は、『激怒』制作側が小林氏の『ヘドローバ』での過剰な演出に異を唱えた結果のようで、業界関係者の間では「子役スクールを主宰するタレント・坂上忍にも延焼しそうだ」と懸念されているという。
『ヘドローバ』は、暴力や詐欺などが横行する団地を舞台にしたオリジナル映画。配給元の「VICE」が17年にYouTube上で公開したメイキング映像には、出演者の元格闘家が子役を殴りつけるシーンや、カットがかかった後に子役が嘔吐する場面も映し出され、小林氏は笑顔で「児童虐待、撮りました」などとコメントを寄せていた。
この動画は4月20日頃から一部ネットユーザーによってSNS上を中心に拡散され、「これは芝居とは言わない」「ただの児童虐待」「子役がトラウマになっていないか心配」などと物議を醸し、ほどなくして、当該動画は非公開となった。
「同騒動を受け、『激怒』のプロデューサー・森田氏は25日、自身のインスタグラム上で声明文を発表。小林氏の問題演出について『まったくもって言語道断であり、容認できようはずもありません』と非難した上で、『我々は事態を重く見ており、小林氏のクレジットを「激怒」から外すことを決定いたしました』と報告しました」(芸能ライター)
それから3日後の28日には、小林氏もインスタグラム上に謝罪文を掲載。作中で暴行を受けた俳優や関係者にお詫びしながら、「メイキング映像に出てくる吐しゃ物はダミーの作り物であり、撮影時に住川さん(編注:子役の名前)が実際に吐いたり、大きな怪我をしたりすることはありませんでした」と説明。
一方で、当時未成年だった俳優に対して「心の傷を残すことになったことは間違いございません」「今回のアクションシーンを正当化し美化するような軽率な言動を行ったことについても謝罪いたします」と述べつつ、これまできちんと謝罪をしてこなかったことへの反省もつづっている。
とはいえ、ネット上では「俎上に載せられたから謝ってるだけにしか見えない」という批判の声はやまず、「周りの大人も同罪」「プロデューサーの西村喜廣氏もコメントを発表すべきでは?」と、その他スタッフへの責任も問われている状況だ。映画界では榊英雄氏や園子温氏など、監督による“性加害”報道が相次いでいたが、「今後は児童虐待も議論に上がるだろう」とスポーツ紙記者は話す。
「“スパルタ指導”で子役を追い詰めてリアルな演技を引き出すという手法は、子役育成ではままあること。例えば、自身も子役出身の坂上は、今から10年ほど前、経営する子役スクールの密着番組で、子役に対して『もっと泣けよ! オラ!』などと怒鳴りつけている様子がオンエアされました。当時は視聴者に『熱い指導』と受け止められていたものの、現代社会においては虐待とみなされる可能性があります。“時代の違い”はあっても、過去のハラスメントがなかったことになるという話ではありませんから、今後発掘される可能性もあるでしょう」
坂上自身も子役出身で、16年出版の著書『スジ論』(新潮新書)の中では、まだ14歳だった頃、師匠と仰ぐ相米慎二監督にストリップ劇場へと連れて行かれるなど、常識外のことをされていたと明かしている。この体験も現代では議論を呼ぶ対象になるだろうが、坂上はどう受け止めているだろうか。映像業界の意識は、今後さらなる変革が必要かもしれない。