最近、寝付きが悪かったり、夜中に起きてしまったり、「睡眠」についてお悩みではありませんか? 実は、春になると「睡眠の質」が低下しやすいのだとか。そこで今回は、睡眠の質が下がってしまう原因と、その解決方法を薬剤師・竹田由子氏が解説します。
1.ストレスの多い春……「睡眠の質」が下がる原因とは?
寒い冬からだんだんと気温が上昇し春を迎えますが、この「気候の変化」が睡眠の質を下げる原因になります。さらに、春は新生活のスタートや、それに伴う生活リズムの変動など、「社会的・心理的な変化」を経験する人が多い季節です。
こうしたさまざまな変化を、心と体が一度に受けるとストレスとなり、心身の不調が起こりやすくなります。これが入眠障害や中途覚醒、熟眠障害のような「睡眠の質の低下」につながる人も少なくありません。
では、春に受けやすいストレスとは、具体的にどのようなものなのでしょうか? 春に睡眠の質が下がる主な原因を3つ挙げていきます。
1-1.「寒暖差」に体が追いつかない
朝晩や日によって寒暖差が大きくなる春は、風邪や頭痛、皮膚トラブルなど体の不調を起こしやすくなり、なかなか眠れなくなることも。また、どんなに寝ても疲れが十分に取れないという不調も起こりやすいです。
1-2.「環境の変化」で生活のペースが乱れる
春は部署異動や進級、進学、転勤など、環境や人間関係が変化する季節。体が新しい生活のペースをつかめないと、質のよい睡眠が取れません。また、慣れない環境での緊張や不安、気疲れで、就寝時に布団に入ってからもスムーズに寝つけないことが考えられます。
1-3.「気持ちの高ぶり」で体と心が興奮状態に
春は気候や生活がめまぐるしく変化するため、なかなか心が落ち着かず、気持ちが高ぶっている状態が続きやすいです。体にも興奮状態が伝わるので、疲れているのに眠れなくなったり、熟睡できなくなったりしてしまいます。
では、睡眠の質を上げるには、どのような対策をすればいいのでしょうか? 原因別に見ていきましょう。
2-1.「寒暖差」には外気から体を守る
・衣類で調整する
春のファッションは薄着になりがちですが、ストールや腹巻など、首元やおなかを温めるだけでも、春の冷えや風から体を守ることができます。
2-2.「環境の変化」には心と体を整える
・旬の野菜と、適度な甘味を取り入れる
旬の野菜(春菊、菜の花など)はエネルギーに、適度な甘味は疲れた心と体の回復の助けとなります。逆に、不安や緊張の強い方は、収れん作用のある酸味の摂取は控えめにするとよいでしょう。
2-3.「気持ちの高ぶり」には心と体を休める
・アロマの香りで気分転換する
ネロリやローズの香りには、心を穏やかにする効果があります。精油をたらしたお湯に布を浸して絞り、おなかを温める温湿布法は、気分転換におすすめ。緊張を緩め、安心感をもたらしてくれますよ。
このような方法でも睡眠の質が改善しない方には、不眠症や睡眠専門の外来などで使われている、自然由来の漢方薬もおすすめです。
漢方薬は、ストレスや疲れなどが原因となる「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などのトラブルを根本から改善することによって、熟睡できる体をつくっていきます。睡眠導入剤のように眠気を誘うのではなく、眠りの妨げである原因を解決していくのです。
それでは、それぞれの原因にどのような漢方薬が使われるのか見てみましょう。
3-1.「寒暖差」から体を守るには?
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう):元気がなく、疲れやすい方に
・香蘇散(こうそさん):体力が虚弱で気分がすぐれない方、風邪の初期症状がある方に
3-2.「環境の変化」にも負けない心と体に!
・酸棗仁湯(さんそうにんとう):体力中程度以下で、心身の疲れや不安がある方に
・加味帰脾湯(かみきひとう):体力中程度以下で、心身が疲れ、血色が悪い方に
3-3.「気持ちの高ぶり」をおさえて、落ち着いた心と体を手に入れる
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):体力中程度以上で、動悸や便秘などを伴う方に
・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ):体力中等度を目安として、イライラしやすい方に
このように、漢方薬は症状の原因や体質に合わせたものを選びます。ご自身に合ったものでないと効果が十分に感じられないばかりでなく、副作用が生じることも。たくさんの漢方薬の中からどれが一番合っているか見極めるには、プロの力を借りるのがおすすめです。
最近は、オンラインで相談するだけで専門家が最適な漢方薬を選んでくれるサービスがあります。リーズナブルで、かつ自宅に郵送もしてくれるので、まずは気軽に相談してみるのもいいですね。
4.春は質のよい睡眠で、気持ちのよいスタートを!
春に経験するさまざまな変化はストレスとなり、睡眠の質の低下をもたらします。不眠の原因がわかったら、今回ご紹介した方法や、プロの選んだ漢方薬で、睡眠の質アップを目指しましょう。朝までぐっすりと眠り、万全の心と体で春から気持ちのよいスタートを切ってください!
薬剤師・竹田由子
元漢方・生薬認定薬剤師。大学院で臨床薬学を専攻、日米で病院研修を受ける。病院薬剤師として10年間入院患者を担当しながら、化学療法・医薬品情報担当としても活動する。患者さんから「本音を話しやすい」と言われ関わるうちに、日常のセルフケアの大切さを痛感。転居後は薬局に勤務する傍ら、ライターとしても活動する。病院時代の上司が漢方好きで、漢方の凄さを体感し魅了され「日常の不調はまず漢方」と生活している。現在は、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選びお手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」でも情報発信をしている。