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「婦人公論」の“ポジティブ論”は、結構暗い!? 東ちづるも池上季実子も……シニア世代の幅広い「幸せ」

 「婦人公論」(中央公論新社)の7月13日号が発売になりました。今回の特集は「長生き時代、幸せのカギは『ポジティブ』にあり」です。「不安なときこそ『ポジティブに!』で乗り切る。そのコツを達人たちが伝授します」とのことで、内館牧子(72)、中尾ミエ(75)、東ちづる(61)、池上季実子(62)、渋沢栄一の孫である鮫島純子さん(98)など“ポジティブ・シニア”が多数登場する中身、さっそく詳しく見ていきましょう!

<トピックス>
◎とことん悩めばいい。それが新しい扉への第一歩 東ちづる×池上季実子
◎物忘れが増えても、幸福度は下がらない 増本康平
◎“川柳”で笑い飛ばせ

意外と暗い東ちづる×池上季実子

 特集「長生き時代、幸せのカギは『ポジティブ』にあり」のインタビュー企画が充実しています。朝5時から運動することを日課とし、「体を動かせばクヨクヨ気分も晴れやかに」と説く体育会系な中尾ミエから、「身近にある小さな幸せに感謝」し、ネガティブな気持ちが湧いたときは「世界の平和を祈ります」という達観系の鮫島純子さんまで、幅広いポジティブが網羅されている印象です。

 中でも、東ちづる×池上季実子の対談「とことん悩めばいい。それが新しい扉への第一歩」は共感を呼びそう。明るいイメージの二人ですが、対談ではネガティブな一面を明かし、東は「『ポジティブ』という言葉に縛られすぎてしまうのは、ちょっと怖い気がするの。人間は振り子のように、前向きと後ろ向きの間で気持ちが揺れるもの」と提言。池上も「とことん悩んで、落ちていいと思うの。(中略)悩んだ先にポジティブはある」と語っています。酸いも甘いも知った「婦人公論」読者世代だからこその説得力があるポジティブの形だと感じました。

 個人的にこれまでは、ポジティブという単語から思い浮かべていたのは「ラブ、ドリーム、ハピネス」を信条に掲げるEXILE系若人や、怪しい自己啓発セミナーにハマる系若人、SNSに「#出会いに感謝」と書き込みがちな自己肯定感あふれるパリピ若人などでした。そんな自分の視野の狭さに気づかせてくれた「婦人公論」との出会いに感謝です。

脳トレよりスマホいじりが効く!?

 次は、読み物「老いへの偏見に縛られていませんか 物忘れが増えても、幸福度は下がらない」。神戸大学大学院准教授の増本康平氏が、老いに関するネガティブなイメージを「高齢者心理学」などの研究結果から、変えてくれます。

 まず、年を取ると物忘れが激しくなるというイメージについて。増本氏は「最も記憶力がいいとされる20歳前後の若者でも、ごくあたりまえに物忘れをしている」と言い、「過度に不安を抱く必要もありません」とホッとさせてくれます。また脳トレは「あまり意味がないトレーニング」との見解を述べ、スマホをいじって外の情報に触れることのほうが「脳トレに励むより、よほど記憶力の衰えをカバーできると思います」としています。

 一方、物忘れの域を超えた認知症については「平均寿命まで生きる女性の2人に1人は認知症になると考えられる」との研究結果もあると紹介し、認知症は努力が足りなかったからなるものではなく自然なものだと説明。「前向きに受け入れ、対処することが、幸福な老いにつながる」と締めくくっています。“ありのままに受け入れる=うまく諦める”というポジティブの形。勉強になります。

 最後に見ていくのは、心を和ませてくれる「“川柳”で笑い飛ばせ」のコーナー。ポジティブをテーマに募集した川柳の優秀作が紹介されています。

 「この時代 過ごしたことが 糧になる」(しらたまさん)といった標語型から、「変異株 成長の速さ 見習いたい」(しゃちほこさん)、「『効いてきた』 接種後の腕 見せる父」(ともこ1967さん)といった時事ネタ型、「体重が 増えて念願 Dカップ」(かえるやぎさん)などのシニアあるある型まで、名作が生まれています。

 今号は、特集以外の企画も、いじめ関連(林真理子×斉藤慎二『いじめを受けた私たちが伝えたいこと』)、コロナワクチン関連(夏川草介×坂本史衣『ワクチン接種が、“出口”への切符になる』)、照ノ富士関連(佐藤祥子『照ノ富士よ、さあ綱取りだ。大相撲七月場所は見どころ満載』)など、なんとなく茶化してはならぬ雰囲気の記事が多かった印象。この川柳コーナーや、鈴木保奈美の連載エッセイといったリラックスして読めるページはオアシスでした。

 ちなみに今回の保奈美エッセイは、「小学二年生まで住んでいた街」にあったというおもちゃ屋さんについて、ノスタルジーに浸りきって描いています。五・七・五にも負けないくらいにブレない、トレンディーなホナミ節。閉塞感ある今だからこそ求められているのかもしれないと気づけました。

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