ジョニー・デップ(58)が、元妻アンバー・ハード(36)を相手取り起こした名誉毀損裁判で勝訴した。
バージニア州の郡裁判所の陪審団は6月1日、「2018年にアンバーが自らのようなDV被害者への支援を訴える記事を米紙ワシントン・ポストに寄稿したことが原因で、DV男のレッテルが貼られ、ハリウッドから干され、名声を失った」と提訴したジョニーの主張をほぼ認める評決を下した。
アンバーも反訴していたが、ジョニーの弁護団の一員だったアダム・ウォルドマン弁護士による「アンバーはDVをでっち上げた」という発言が名誉毀損に当たるという主張のみが認められた。ちなみに、この弁護士は昨年、機密文書をメディアにリークしたとしてジョニーの弁護団からは解雇されている。
2年前にジョニーが英タブロイド紙を相手取り行った名誉毀損裁判で、ロンドンの高等法院は、アンバーがジョニーからDV被害を受けていたという報道内容は「ほぼ真実」だと認定。裁判のやり直しを求めたジョニーの訴えも退けた。
イギリスでは「ジョニーからDVを受けていたことは事実」だと認められていたアンバーが、なぜ今回は負けたのか?欧米メディアの報道、アンバーの弁護士の発言、ネット上の反応を見ると、敗因は主に5つあるようだ。
アンバーが負けた理由1:信ぴょう性に問題があった
米ビジネスメディア「Insider」の取材を受けた、法律事務所「West Coast Trial Lawyers」のニマ・ラフマーニー社長は、「アンバーの敗因は、ズバリ信ぴょう性に問題があったから」と分析。うそにうそを重ねて「不必要なうそもついた」ことから、彼女の証言は信用できないと陪審員に思われたのだろうと推測した。
証言台に立ったアンバーは、「ジョニーに殺されると思った」「数えきれないほど蹴られた」と嗚咽しながら訴えたが、それほどまでの暴行を受けたはずなのに、翌日は腫れていないきれいな顔でテレビに生出演した映像や、ノーメイクに近いのにあざがない顔で外出している写真などが存在するため、信頼性に欠けたようだ。
離婚時にジョニーからもらう慰謝料を人権団体などに寄付するとしていた件についても、全額は寄付していないことが判明。また、彼女自身が大手ゴシップサイト「TMZ」に、自身の立場が有利になるような情報をタレ込んだ可能性がとても高いという証言も、同サイトのスタッフから飛び出た。
行きすぎたうそ、大げさなうそは、陪審員に悪い印象を与えてしまう。真実であるかもしれない証言も、すべてがうそだと見なされる。不必要なうそで、アンバー自身が自分の首を絞める結果になったと推測されている。
ロサンゼルスを拠点とする法律事務所「Taylor & Ring」の共同経営者デビッド・リングは、「ジョニーはアンバーと比べて格違いのビッグスター。法廷ではしばしば、このようなスターパワーが重要な鍵を握ることがある」と分析。
同氏によると、陪審員裁判において「彼のようなビッグスターが勝訴することは多い」そうで、「ジョニー・デップはカリスマ性のある人物だから、なおさらだ。陪審員は彼がスターであることから、彼の欠陥やひどい言動などを見落としがちだ」と説明。陪審員は、無意識的に「ビッグスターを勝たせてあげたいという心理になってしまう傾向がある」と語った。
また、デビッドは「アンバーはジョニーと比べて好感度が低い」という見解を示し、陪審員だけでなく、世間的にもSNSの世界でも、ジョニーと比べて人気が劣ったことが、裁判に負けた原因だといえると述べた。
アンバーが負けた理由3:弁護士との相性が悪そうだった
法廷で弁護団と仲良い姿を見せていたジョニー。原告席で時間潰しに描いた絵を隣に座る弁護士に見せてほほ笑み合ったり、おやつとして持参したグミをシェアするシーンが話題になったが、裁判中も目配せで意思疎通することが多く、しっかりした信頼関係を築いていると世間に受け止められた。
一方のアンバーは、ジョニーとは対照的で弁護団と仲が良いようには見えなかった。良く言えばビジネスライクな関係を築いているようだが、ジョニーのように打ち解けているようには見えず、信頼関係が築かれているような様子もなかった。
証言台でのアンバーは、陪審員に訴えるように感情的に語った。つらそうな表情を浮かべ、時には声を荒げ嗚咽。しかし、被告席では別人かと思うほど冷静で、感情を表すことも表情を変えることもなかった。ジョニーの弁護団が招いた証人に、自分の主張が嘘だと言われても、無表情のまま。また、アンバーは弁護団の仕事ぶりに不満そうで、被告席に漂う空気は見るからにピリピリしていた。
そんな弁護士の一人、エレイン・ブレッドホフトは、証言台に立ったアンバーの再尋問をうまく進めることができず、アンバーがいら立った様子を見せたのも話題になった。エレインは判決後、裁判所のトイレで泣いていたと報じられており、「アンバーの弁護士なんて引き受けるから……」と同情する声がネット上で集まっている。
このように、弁護団とのチームワークがイマイチだったことが敗訴の原因なのではないかという説が、SNSで数多くつぶやかれている。
前出のエレイン・ブレッドホフト弁護士は、判決の翌朝、米NBC局の『Today』に出演。「アンバーがTwitterやインスタグラム、TikTokで叩かれたことが裁判に影響したか?」という問いに、「確実に影響を与えた」と断言した。
さらに「陪審員は毎晩、家族がいる家に帰宅する。家族はSNSをやっている。SNSでアンバーが中傷されまくっていたことは知っていただろうし、あれだけ叩かれていて影響されないわけがない。本当にひどいバッシングだったから」と、不満そうに語った。
エレインは、「自分は法廷に(生中継する)カメラを置くことには反対だった。この裁判は繊細な内容だから」「でも反対意見は受け入れられず、結果、法廷は動物園化してしまった」と断言。
さらに、アンバーの診療記録の提出が認められなかったりと、十分な証拠が出せなかったことを明かし、この判決には不服だと述べた。そして、「アンバーは控訴するつもり」だとも明かした。
今回の裁判で、ジョニーは自分のほうがアンバーからDVを受けてきたのだと主張。2015年に夫婦関係を改善しようと話し合いをした際に録音されたという、アンバーが「叩いたけど殴ってはいない」と認める音声も提出された。
ジョニーの顔にあざがある写真も提出され、ジョニーが指先を切断する大けがもアンバーから投げつけられた瓶が原因だと証言。その時の様子を生々しく証言し、「ジョニーのほうが真のDV被害者なのだ」と、話題騒然となった。
アンバーは、ジョニーは酒や薬を摂取すると、とんでもないDV男に変貌し、暴力や性的暴行まで受けたと繰り返し主張したが、荒れた部屋やだらしなく寝ているジョニーの写真などを出すだけで、DVを受けたという決定的証拠は提示できなかった。
裁判の途中から、女性のDV被害者たちが「アンバーのせいで、私たちも男に復讐するために嘘をついていると思われる」と困惑するようになり、「せっかく巻き起こった#MeToo運動の揺り戻しが起こるのではないか」と懸念する声も上がりだした。
判決後、アンバーは、「証拠は山ほどあるのに、権力のある元夫に打ち砕かれた。すべての女性にとってガッカリする結果になった」という声明を出したが、ネット上では「女性を武器にするような発言は、もうやめてほしい」「あなた自身の問題」という冷ややかな声が上がっている。
評決により、アンバーはジョニーに1035万ドル(約13億円)の損害賠償金を、ジョニーはアンバーに200万ドル(約2億6,000万円)の損害賠償金を支払うよう命じられた。シングルマザーであるアンバーには、莫大な資産はない。自己破産するのではないか、子どもの生物学的父親だとうわさされるイーロン・マスクに泣きつくのではないかと、ネット上は盛り上がっている。
果たしてアンバーは控訴するのか?今後の彼女の動きを注視したい。