昨今SNSを中心に、ダイエット漢方として“バズッて”いる「防風通聖散」。インフルエンサーがこぞってオススメしていることもあり人気に火がついたようだが、防風通聖散には、“落とし穴”があると話題になっている。
というのも、一部の医療関係者から、防風通聖散の“副作用”の危険性を訴える声がネットに上がりだし、中には、副作用の影響で、病院を受診する人が増加しているとの報告も見られるのだ。
体のためを思って漢方薬を服用しているのに、逆に健康に支障をきたしてしまっては元の木阿弥。今回、薬剤師・中田早苗氏に、防風通聖散の気をつけるべき怖い副作用や、服用する際の注意点を聞いた。
――防風通聖散とは、どういった漢方薬なのでしょうか? 効果・効能をお教えください。
中田早苗氏(以下、中田) 高血圧や肥満に伴う、動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘に効果があります。便通を良くしたり、排尿、発汗を促すことにより、体内の老廃物を排出する働きがあり、腹部に脂肪が多い方の肥満体質、また蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)といった症状の改善が期待できるんです。
――「防風通聖散」が向くという人は、どのようなタイプでしょうか?
中田 体力があり、がっちりタイプ。おなかに皮下脂肪が多く太鼓腹、便秘がちな方に向いている漢方薬です。
――「防風通聖散」がブームになったことにより、重篤な副作用を訴える人が増えているといいます。重篤な副作用にはどのようなものが挙げられますか?
中田 「間質性肺炎」「偽アルドステロン症」「肝機能障害」「腸間膜静脈硬化症」などが挙げられます。
「間質性肺炎」の症状としては、階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れしたり、息苦しくなる、乾いたような咳が出る、発熱など。「偽アルドステロン症」は、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に強くなります。
「肝機能障害」は、発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振など、「腸間膜静脈硬化症」では、長期服用により、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返し現れます。
――なぜそのような重篤な副作用が起こるのでしょうか?
中田 まず、「間質性肺炎」や「肝機能障害」について。アレルギー症状といえば、かゆみや湿疹といった皮膚症状が挙げられますが、稀にアレルギーにより、肺や肝臓の障害を起こすことがあり、これが「間質性肺炎」や「肝機能障害」の原因と考えられているんです。服用開始後、数週間で現れる場合もあれば、長期服用で現れる可能性もあります。
また「偽アルドステロン症」は、防風通聖散に含まれる「甘草(カンゾウ)」という生薬により、血圧を上げる働きのあるアルドステロンが血中に増加していないにもかかわらず、まるでアルドステロンが高い時のように、血圧が高くなったり、むくみが生じたり、血中のカリウムが失われるといった症状が出てしまうんです。
ちなみに「偽アルドステロン症」が起こりやすくなる原因として、甘草の摂りすぎ、長期の服用、併用薬との飲み合わせなどがあります。どれくらいの甘草量で起こりやすくなるかは、人によって異なりますが、女性、小柄な方や高齢者の方は特に気をつけたほうがいいですね。また、「甘草」は漢方薬だけでなく、サプリメント、食品などに幅広く含まれるため、気づかないうちに摂りすぎている場合があるので、注意が必要です。
そして「腸間膜静脈硬化症」は、「山梔子(サンシシ)」という生薬の成分が原因の一つと考えられ、多くは5年以上の長期で服用している方に起こりやすいとされています。
――一般的に見ると痩せている小柄の女性が、「もっと痩せたい」と防風通聖散を大量に服用するなどした場合は、偽アルドステロンが起こりやすくなるのかもしれませんね。
中田 ドラッグストアなどで手軽に購入できる漢方薬は、「一般用医薬品」に分類されます。一般用医薬品の漢方薬は、処方ごとに配合できる生薬の量の限度が、基準(※)で定められているんです。その最大量が配合された漢方薬を満量処方といいます。
一般用医薬品の漢方薬の場合、満量処方のほかに、安全性を考慮して1日の服用量を調節した3/5処方、1/2処方といった商品があるのですが、これは、症状が少し気になり始めたという方や、まずは体に合うかどうか試してみたいという方、小柄な方、ご高齢の方などにオススメです。
※一般用漢方製剤製造販売承認基準
――服用する際の注意点はありますか?
中田 用法・用量を守り、食前もしくは食間に服用してください。飲み忘れた場合は、気がついた時に飲んでかまいません。ただ、次の服用時間が2時間以内の場合は飛ばして、次回に飲んでください。副作用が起こりやすくなるため、2回分を一度に飲まないようにしましょう。
――漢方薬全般において、重篤な副作用を起こさないために、気をつけるべきことをお教えください。
中田 繰り返しになりますが、用法・用量は必ず守って服用してください。重篤な副作用かもしれない症状に気づいたら、早めに医師や薬剤師または登録販売者に相談することも大切。服用を中止して、早めに適切な処置を受ければ、順調に回復する場合がほとんどだからです。また、相談する際には、服用量、服用期間、他に医薬品やサプリメントなど服用しているものがあれば、一緒に伝えてほしいですね。
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師・中田 早苗
お薬最適化薬剤師。認定運動支援薬剤師。就実大学薬学部卒業。病院薬剤師として約7年間勤務後、漢方薬局で2年間勤務。「生涯健康で楽しく」をスローガンに病気を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。また、「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーにお薬の選び方を広める活動も行っている。