• 日. 12月 22nd, 2024

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過酷な中学受験はさせたくない! 教育ママに育てられた母が、娘と挑んだ「新タイプ入試」の結末

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 駅の周辺で、中学受験生と思しき小学生を見かけたことがある人は多いのではないだろうか。特にここ最近の首都圏では、中学受験が過熱しており、2022年の私立・国立中学校の受験者総数は5万1100人、受験率は17.30%と、いずれも過去最多・最高を記録(首都圏模試センター調べ)。このように中学受験は、とりわけ珍しくもない受験となっている。

 ただ、中学受験と聞くと「ねじり鉢巻き姿で盆も正月もなく、ひたすら勉強させられている小学生」の姿が思い浮かび、どこか敬遠してしまう人もいるだろう。しかし時代は変わり、今はひたすら勉強をすることが求められる知識重視の受験とは一線を画す「ニューウェイブ受験」が広がりつつあるのだ。

 これは「新タイプ入試」と呼ばれるもので、「自分なりの提案や意見をその場でいかに考え、表現できるか」を問う、思考力・判断力・表現力重視の入試を指す。

 新タイプ入試には、実にさまざまな形態があり、例えば、論述型、自己アピール型、思考力型、アクティブラーニング型、問題解決型、あるいはレゴブロックを使うなどのものづくり型、ワークショップ型、プログラミング型、ビブリオバトル型、プレゼンテーション型など、枚挙にいとまがない。

 なぜこのような入試が広がったかといえば、大学入試が欧米型の総合型選抜入試に変わってきていることが理由の一つ。これは、自分の力を社会でどう生かすのか、そのために何を学ぶのかを意識し、それを自分の言葉で語る力を重んじるという選抜方法で、中学入試でもその力を問うようになっているのだ。

 もう一つは、少子化が進む中、中学受験生の裾野を広げたいという各校の思惑があるからといわれている。新タイプ入試が広まったことで、結果的に、「小学生のうちから勉強漬けにさせるのは嫌だ」という層が、新たに中学受験へ参入するようになっているのである。

 年子の姉妹を育てる主婦・留美さん(仮名)は、今年、長女の絵美里さん(仮名)を、新タイプ入試である私立中高一貫校に入学させた。

「私自身も中学受験経験者なんです。でも、実は中学受験にはいい思い出がまったくなくて、今でも思い出すたびに、つらい気持ちになります」

 留美さんの母親はいわゆる“教育ママ”で、中学受験も母親の一方的な命令で始まったという。

「私はあまり勉強が得意なタイプではないんです。でも、母は長時間勉強すれば、誰でもが御三家クラスの学校に行けると信じ込んでいたようなふしがありまして、塾から帰って来てからも、その日出された宿題が終わらなければ寝かせてもらえないという日々でした。基礎問題を間違えようものなら、定規で叩かれるということも頻繁にありましたね」

 そんな過去がありながらも、なぜ留美さんは、娘の絵美里さんを中学受験させたのだろうか。

「結局、私は御三家ではないものの、母が満足できるラインの学校に運良く受かりました。そこでの6年間はとても楽しく、この学校に入れてよかったと、心から思っています。ただ、中高一貫校の教育には素晴らしいものがあるとは思う一方で、中学受験のための拘束生活には、どうにも反対なんです。娘には私のような思いはしてほしくない、でも、一貫校の教育は受けさせたいという相反する気持ちがありました。そんな時です、新タイプ入試という制度があるというのを知ったのは!」

 留美さんが見つけたのは「自己アピール型入試」と呼ばれている選抜方法である。これは習い事やスポーツ、趣味など、自分が打ち込んできたことを、受験生自身がプレゼンテーションする試験で、たいていは、これにプラスして、教科の基礎的な試験や作文などを組み合わせて合否が出る仕組みだ。その学科試験も「小学校の授業を真面目に受けていれば問題ない」というレベルが多いので、留美さんが経験したような過剰な勉強は必要ないといわれている。

「これなら、絵美里が好きで続けている習い事も辞めずに済みますし、なにより、私自身が母のような教育ママという名を借りた虐待ママにならずに済む! と思ったんです。もし普通に中学受験塾に絵美里を通わせていたら、私も母と同じことをしてしまうのでは? という恐怖がありましたから……」

 絵美里さんは幼い頃から生き物が好きで、自宅でもさまざまな小動物を飼い、そのお世話を積極的にしているそう。入試では「動物との愛ある日常」をプレゼンし、見事、合格を勝ち得たという。

「絵美里の動物好きは、学校でも周知されていて、先生とペット談義に花を咲かせることもあるそうです。もちろん部活は、生物部に入ったのですが、本当に毎日、楽しくて仕方ないみたい。親としては、そこが一番うれしいですね」

 絵美里さんの年子の妹さんも、充実した学校生活を送るお姉さんの姿を見て、「自分も同じ学校に入る!」と、小学校の授業も真面目に取り組むようになったそうだ。

 このように、今はいろいろなタイプの入試がある。もちろん、学校には校風があるので、そこが我が子のタイプに合うことが絶対条件ではあるが、もし、あまりに過酷な受験勉強に疑問を持っているのであれば、こういう入試方法を実施しているかどうかを、受験校選びの参考にしてもよいということをお伝えしておきたい。

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