今年も8月27日から日本テレビの恒例チャリティ番組『24時間テレビ 愛は地球を救う』が放送される。メインパーソナリティはジャニーズの4名。YouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」のメンバーで、嵐・二宮和也、KAT-TUN・中丸雄一、Hey!Say!JUMP・山田涼介、Sexy Zone・菊池風磨という顔ぶれだ。
告知されている企画は、浅野忠信主演のスペシャルドラマ『無言館』、多数のアーティストが歌唱パフォーマンスを披露する「24時間もヒッパレ!あの名曲に会いたい!」などがあり、恒例のチャリティーマラソンではEXIT・兼近大樹がランナーを務める。
しかし、数ある企画の中で同番組一番のウリは、障害者がチャレンジする内容だろう。今回も、胸から下が麻痺し、車いすでの生活を送っている女性が出産に臨む姿や、100万人に1人の病と言われる「毛様細胞性星細胞腫」によって手足が動かなくなった少女が「パラデル漫画」の制作に励む様子、また車いすの少年がメインパーソナリティや、車いすダンサーチームなどとフォーメーションダンスを披露する姿が放送されるという。
さまざまな切り口から障害者を企画に起用してきた同番組だが、実は番組で決して取り上げられない障害者もいるようだ。サイゾーウーマンでは2017年に、『24時間テレビ』に「精神障害や発達障害はなぜいない?」として、日本テレビや当事者に取材を行った。今年も番組の放送に合わせて、あらためて再掲したい。
(初出:2022年8月27日)
8月26~27日に放送される『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)。同番組の定番企画として、足の不自由な障害者が登山をしたり、知的障害者の子どもたちがコンサートをしたりといった「障害者が何かにチャレンジする」というコーナーがある。
これらが「募金目当ての感動ポルノだ」という視聴者からの批判が出るのも夏の風物詩のようなものだが、不思議なのは、同番組で取り上げられる障害者が身体障害者および知的障害者ばかりなことだ。
そこには、うつ病・パニック障害等の精神障害者、ADHD(注意欠陥・多動性障害)・ASD(自閉症スペクトラム)等の発達障害者は出てこない。それはいったいなぜなのだろうか?
日本テレビに電話でコメントを求めたところ、担当者不在で話を聞くことはできなかった。そこで、精神障害や発達障害の当事者の声を聞いてみた。
筆者がTwitter上で「#もしも24時間TVに出てくる障害者が全員ADHDだったら」というハッシュタグを作って拡散したところ、「募金が集まらない」「障害者に見えないと苦情が入る」といった自虐的な意見が散見された。もはや彼らは『24時間テレビ』に自分たちが取り上げられることを諦めているのだ。
精神障害、発達障害のような“見えない障害”というものは地味でわかりづらい。たとえば、うつ病は気分障害の一種で、気分が落ち込み、思考に歪みが生じる。
「物事を楽しく思うことが難しくなり、好きだった趣味などからも興味を失ってしまいます。寝込みがちになって体力が落ちる・不眠等の二次的な障害が発生すると、近場への外出や、上体を起こしているだけでもひどく疲弊してしまうことがあるんです」(うつ病のAさん)
うつ病患者が『24時間テレビ』で何かにチャレンジするならば、行きたかったという場所へ旅行に行くのはどうだろう? 「うつ病になる前の夢だったんだ」と当人が言うのであれば、夢を叶えてみせてもいいだろう。
「うつ病患者は、調子の良い状態から急に体調が悪化することがよくあり、何度も途中下車を強いられるかもしれません。そうすると、申し訳なくて途中下車のたびにスタッフに何度も謝罪することになると思います」(Aさん)
うつ病と併発しやすい病気に「パニック障害」がある。突然激しい動悸や焦燥感に襲われるパニック発作が起こり、「同じ発作が起きるのではないか」という不安で、発作を起こした場所に行けなくなってしまう人も多い。
それならば、『24時間テレビ』のチャレンジコーナーで、パニックを起こした場所を克服する企画があってもいいだろう。
「いつパニック発作を起こすかはわからないので、もし発作を起こしたら、その場所への恐怖はより一層大きなものとなってしまいます。確かにトレーニングを積めば、そこへ近づけるようになると思いますが、もしそれができたとしたら、一見 “普通の人”が目的地まで行けた、という映像にしかならないでしょう」(パニック障害のBさん)
発達障害だとどうだろうか? ADHDの当事者は、著しく注意力が欠如しており、一般的に整理整頓や片付けが苦手で、定型発達者(発達障害ではない人)の何倍もの労力が必要である。ならば、克服企画として、自分の汚部屋を片付けることにチャレンジしたら……?
「ものすごく苦労して片付け、息を切らして掃除機をかけても、やっと一般家庭の“ちょっときれいな状態”になるくらいだと思います」(ADHDのCさん)
このように、“見えない障害”の当事者が『24時間テレビ』で障害を克服する企画に挑戦したとしても、足に障害のある少年少女が登山をする映像と比べると、インパクトの弱いものになってしまうだろう。
とはいえ、それが精神障害者・発達障害者の実態であるならば、ありのままの姿を伝えることで、わかりづらい障害への理解を深めることにつながるのではないだろうか?
ありのままの姿を伝えられないのならば、彼らをほかの障害者と同様に扱っており、昨年の『24時間テレビ』のパロディが障害者たちに好評だった裏番組の『バリバラ』(NHK)に、その役目を期待したほうがいいのかもしれない。
(Cyndi)
※2017年8月26日初出の記事に編集、加筆しています。