――日々更新される、芸能人のブログやSNS。毎日無数に更新される投稿の中から、かつて注目を集めたタレントの意外な活動や、ただただ元気そうな姿、ちょっと心配になる近況など、ライター・浦島茂世が「あの人」の「いま」を追いかけます。
今月の思い出しタレント:田中美奈子
「瞳に1億円の保険をかけた」という触れ込みで、1989年に「涙の太陽」で歌手デビューした田中美奈子さん。どういう契約なのか? 積立タイプなのか、掛け捨てタイプなのか? 生命保険なのか? 損害保険なのか? 医療保険なのか? 結局すべて謎のまま、令和に突入してしまいました。
田中さんは、平成初期にトレンディドラマやバラエティなどでも大活躍。稀代の名作であり迷作ともいえる『もう誰も愛さない』(91年、フジテレビ系)では、吉田栄作演じる主人公と共謀し、ヒロイン(山口智子)に銀行の金を横領させた挙げ句、家庭を崩壊するなど非道の限りを尽くす“究極の悪女役”として登場していました(なのに、最終回には“いい人”になっている)。
このインパクトが強かったこともあって、現在も通販番組や旅番組、ドラマなどでコンスタントに活躍しているにもかかわらず、当時のイメージが残ったままの方も多いかと思います。
現在、7歳下の夫で俳優の岡田太郎さん、そして2人の息子と仲良く暮らしている田中さんですが、実は結構ニッチな分野で、“超”のつく売れっ子になっていることは、あまり知られていないかもしれません。
田中美奈子、キャンピングカーをめぐるドラマ
田中さんが日々更新しているブログをさかのぼると、“アウトドア派で大の車好き”との情報がありました。2010年から現在も更新が続いているブログでは、初期の頃からキャンプに行きたいと語り、実際に、プライベートでバーベキューを楽しむ様子も公開しています。
なんでも、田中さんは幼い頃からキャンピングカーに乗って、日本中を旅して回っていたそう。自身の子どもたちにも、この素晴らしい体験をしてもらいたいという思いから、キャンピングカーの購入を決意。16年頃より、「キャンピングカーショー」なる展示会に参加し、物色をスタートさせていました。
しかし、キャンピングカーの専門情報サイトを見ると、500〜1000万円が相場らしく、非常にお高い。ということで、田中さんは18年から19年にかけて、『有名人が情報解禁!千鳥のドッカン!ジブン砲』(フジテレビ系)という番組に出演し、一家でキャンピングカーを買い求める企画に3度も登場。しかし、テレビの力を持ってしても予算が折り合わず、購入はかないませんでした。
ただ、その放送を見ていた「日本RV協会」が、田中さんの並々ならぬキャンピングカー愛に注目。20年、ついに「キャンピングカーアンバサダー」を拝命することとなり、新車のキャンピングカーを貸与してもらえることになったんです。同年1月30日のブログでは、「今から何処へ出掛けようか ワクワクして仕方ありません」と、喜びを爆発させていました。ある意味“計算ずく”なのかもしれませんが、Win-Winな関係なのですから、素晴らしいことです。
ちなみに、コンロとベッドが1つずつといったキャンピングカーも多い中、田中さんが貸与を受けたのは、ガスコンロ2口、ベッドは3カ所という、かなりカスタマイズされたものでした。正規のお値段で買うと、1200万円くらいなのだとか。とてもお高いですが、東京ではガスコンロ1口のワンルームマンションでも1200万円で買うのは難しいですから、同じ値段で購入するなら、キャンピングカーのほうが住環境は優れているかもしれません。
そして、キャンピングカーを貸与してもらってからというもの、田中さんのブログはシンプルな家族ほのぼのブログから、キャンピングカー愛&家族ほのぼのブログとして、劇的なパワーアップを遂げます。
特に驚きなのは、毎年夏に決行される、キャンピングカーでの長距離旅行の様子。20年には20日間かけて九州を一周、翌21年は1カ月かけて北海道を一周、そして今年は、2週間かけて四国を一周と、家族でロングジャーニーを満喫しまくっているのです。
田中さんのすごいところは、この長旅の様子を、数カ月に渡ってレポートとして、ブログに更新し続けているところ。20年夏に行った九州旅行のレポート「完結編」がアップされたのは、なんと翌年の1月24日! 家族で立ち寄った場所や出会った人などが写真付きで丁寧に紹介されており、田中さんの“マメ”な一面を感じさせます。
しかし、21年夏の北海道旅行は、9月までレポートを更新していたものの、途中で飽きてしまったのか中断。なぜかインスタグラムに場所を移し、翌10月までほそぼそとレポートが続いていました。
今年の夏に行った四国レポートは、ブログに戻って現在進行系で更新中。果たして最後まで見ることができるのか、謎の緊張感を抱えながら、更新を楽しみにしているところです。
そして、田中さんの素晴らしいところはもう一つ。キャンピングカーで旅をしていることを強みに、新しい仕事を取ってきているのです。
昨年は北海道旅行中に、アウトドア情報をお届けするラジオに生出演。今年の四国旅行中にも、愛媛県のラジオ局に足を運び、生放送で「キャンピングカー旅の醍醐味やキャンピングカーの魅力」を語るため、番組に出演していました。現地で旅費を稼ぎ、旅を続ける。これはまさに、旅人の憧れパターンではないでしょうか。
田中さんはこの頃、全国各地のキャンピングカー展示会などで、トークショーを積極的に行っています。キャンピングカーは富裕層向けのビジネスといえますし、この分野で成功を収めれば、芸能界でもかなり独特な立ち位置を確立できそうです。
キャンピングカーアンバサダーに就任し、キャンピングカーを貸してもらえ、旅に行くことができ、さらにはキャンピングカーを語るお仕事もやってくる。「好き」を仕事にするとはどういうことか、田中さんに教えてもらったような気がします。
今後、田中さんにはキャンピングカー生活を続けつつ、釣具やモデルガンなど、ニッチながらも結構お金がかかる「好き」をたくさん見つけることを期待しています。そしてそれを仕事に結びつける活動を続けていれば、そのうち「ゴージャス版みうらじゅん」的な称号で、さらに人気者になるはず。そんな日を楽しみにしているところです。
浦島茂世(うらしま・もよ)
美術ライター。1日の大半を芸能人・有名人のSNS閲覧に費やす。著書に『東京のちいさな美術館めぐり』(ジービー)、『猫と藤田嗣治』(エクスナレッジ)など。趣味はドトールコーヒーショップのBGMを曲名検索アプリにかけること。