• 金. 1月 3rd, 2025

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『私は私のままで生きることにした』がアイドルファンに沁みるワケ――BTS・ジョングク効果で167万部の大ヒット

――アイドル好きのブックライター・保田と編集部員・B子が、タレントたちの“愛読書”を片手に、人となりを妄想中!? 「サイジョの本棚」前で、おしゃべりが始まります!

◎ブックライター・保田 アラフォーのライター。「サイジョの本棚」担当 で、一度本屋に入ったら数時間は出てこない。海外文学からマンガまで読む雑食派。趣味(アイドルオタク)にも本気。

◎編集部員・B子 猫と暮らすアラサー。芥川賞、直木賞、本屋大賞あたりを一通りチェックしたい、ミーハーな本好き。最近はノンフィクションばかり読んでいる。趣味(ジャニーズオタク)にも本気。

BTS・ジョングクが読んだと話題の本『私は私のままで生きることにした』

編集・B子 このまえ、行きつけの本屋さんに立ち寄ったら、韓国文学のコーナーが新しくできててビックリ。今まで読んだことなかったんだけど、人気K-POPアイドルグループ「BTS」のジョングクも読んだらしいと話題になったエッセイ『私は私のままで生きることにした』(ワニブックス)が置いてあって、思わず買っちゃったよ。

ライター・保田 さすがミーハー(笑)。今も出版業界で続く、“韓国エッセイ本ブーム”の火付け役にもなった1冊だよね。BTSが出演したテレビ番組で、ジョングクのそばにこの本が映り込んだことで話題になり、日本と韓国あわせて累計発行167万部(2022年8月現在)のヒットになったそうだよ。

編集・B子 BTSの人気ぶり、影響力もすごいけど、それだけ売れてるってことは、そもそもこのエッセイが多くの人に刺さったってことだよね。

ライター・保田 「装丁がかわいくてプレゼントしやすい」とか、ヒットの理由はいろいろ分析されていたけど、実際に読んでみると「“旧来の普通”を生きる困難さ」に寄り添う内容が、現代を生きる人々、特に若い世代にマッチしたんだと思うなあ。

編集・B子 私も買ってからすぐ読んでみたけど、社会学者や哲学者の知見や言葉を引用しつつ、SNSの発達で加速した「他人や自分を数字で格付けする」危うさや、虚しさを悟らせるエッセイだよね。「これは自分のことかもしれない」って感じるぐらい、リアルな話題の連続。

ライター・保田 中産階級が崩壊して、一部の成功者を除いて社会階層が固定化されつつあるという点は、日本もほとんど同じだよね。不条理な世界で「みじめになりたくない、けど冷酷にもなりたくない」という著者のスタンスだったり、「世間の基準や評価に関係なく、自分を尊重する心を育て」る方法を説く点が、読者に響くんじゃないかな。

編集・B子 SNSなどではっきり人気が数値化されたり、若いうちから厳しい批判にさらされやすいアイドルにとっては、他人からの「不合理な採点に屈してはいけない」という点も深く刺さりそう。ジョングクやK-POPアイドルだけでなく、日本のアイドルにも読んでほしいと思ったよ。

ライター・保田 アイドル本人もそうだし、私たちのようなアイドルファンにも沁みる1冊かもね。……推しにプレゼントしたいな(笑)。

編集・B子 さて、『私は私のままで生きることにした』を読んだジョングクに、“次の本”としておすすめしたい1冊はある? 韓国のエッセイは一通り知っていそうだから、できれば別のジャンルがよさそうかな。

ライター・保田 じゃあ意外なところで、コミックエッセイ『プリンセスお母さん』(KADOKAWA)はどう? 作者の母「ママ子さん」を中心に、父や姉弟も含めた家族の面白エピソードを描いたコミックエッセイだよ。

編集・B子 『私は私のままで生きることにした』とは、全然内容が違くない? 絵柄的にも、かなりギャグっぽいけど……。

ライター・保田 そうそう、基本的には笑えるコミックエッセイだよ。でも、実は『私は私のままで〜』に通じるところがあると思う。というのも、ママ子さんのおふざけは、どれも「他人を貶めず自虐もしないで人生を楽しむ」っていう考えが徹底してるの。

 作中にママ子さんの「いろんな不条理のなかでも生きていかなければいけない(略)自分の心だけは誰にも支配されない」っていう言葉があるんだけど、これって『私は私のままで〜』のまんまでしょ? こっちだって、200万部くらい売れていいと思う!

編集・B子 なんか、今回はすごい熱量で勧めてくるね(笑)。

ライター・保田 ママ子さんは子どもの頃に家族関係でつらい思いをしてて、深く傷ついた時期があるの。そんな過去を経て、親子や夫婦であっても人間関係は不確かなものだと思っているんだよね。このバックグラウンドを踏まえると、ママ子さんの面白エピソードにも、「人に何かを求めて行動するよりも自分がなりたい自分に近いと思う行動をしていく」(3巻より)というポリシーが貫かれているんだなって気づかされるよ。

編集・B子 普通のギャグ漫画だと思ってたのに、そんな奥深い話だとは……!

ライター・保田 もちろん、ほのぼのと笑えるエピソードがほとんどだから、楽しく読み終えるのが一番いいと思う。でも、もし人生に迷ったり、人と比べて悩んだりしてしまう人が読んだら、真摯な考えにユーモアをまぶして昇華されているこの作品が、きっと心に響くんじゃないかな。

『私は私のままで生きることにした』(ワニブックス、著:キム・スヒョン/訳:吉川南)

 私たちはみんな、ヒーローになること、特別な何者かになることを夢見ていた。だけど今では、世界どころか自分を救うことに必死な大人になってしまった。中途半端な年齢、中途半端な経歴、中途半端な実力をもつ、中途半端な大人になった私たちは、誰もが大人のふりをしながら生きている。本書には、今を生きる普通の人へのいたわりと応援を詰め込んだ。何が正解なのかわからない世の中で、誰のまねもせず、誰もうらやまず、自分を認めて愛する方法を伝えたい。

『プリンセスお母さん』1〜3巻(KADOKAWA、著:並庭マチコ)

 豪華なホテルに泊まると「私の城へようこそ」ともてなし、醤油さしをしゃべらせ、推しのポールをこよなく愛する母・並庭“カトリーヌ”ママ子。彼女の自由奔放な行動が今日も波乱を呼ぶ! 抱腹絶倒、だけど家族愛に満ち溢れた並庭家の日常! 娘が語る、ちょっと(?)不思議な母と家族の爆笑実録ギャグコメディ!

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