「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
ママ同士の付き合いの中でも、価値観の違いが出るのが、贈り物や手土産ではないだろうか。コロナ禍の影響で、人の出入りが限られる自宅でのママ友ランチ会が増えている中、今回は、ママ友の集いにおける手土産に不満を抱いたというお母さんの話を取り上げる。
地域センターで知り合ったママ友とLINE交換、家へ遊びに行くことに
首都圏に住む美奈さん(仮名・32歳)は、今年1月に女児を出産したばかり。育児休暇中だが、普段は紅茶やコーヒーなどの食料品を輸入する商社に勤務している。
「昨年、夫と相談してマンションを購入しました。リモートワークが増えたこともあり、都心から1時間くらいかかるものの、広めの新築マンションに引っ越したんです。周りには私たちと同じように、ここ最近引っ越してきた若い夫婦が多いと聞いてきたので、ママ友ができるかなと期待していたんです」
美奈さんは子どもが5カ月になった頃から、地元の「地域センター」と呼ばれる乳幼児が集まる施設に足を運ぶようになった。同じくらいの月齢の赤ちゃんを育てているママ友とは、そこで知り合ったという。
「育児雑誌を見て、ママが乳幼児を連れて行ける支援センターや地域センターの存在を知ったんです。まだ子ども乗せられる自転車を持っていなかったので、ベビーカーで行ける距離にあった地域センターに、最初は行ってみることにしました」
地域センターは、日によって保育士や地域の児童指導員などが在中しており、乳幼児親子向けのイベントも開催されていたり、育児の悩みを相談することもできる。入場料は無料だ。
「私は最初、保育士さんに娘の発達相談をするために通い始めました。そうしたら、次第に顔見知りのママが増え、LINEを交換するようになったんです」
美奈さんは地域センターで、綾子さん(仮名・37歳)と知り合いになった。綾子さんは、美奈さんと1カ月違いの男児を育児中だった。
「赤ちゃんをあやすことに慣れているなって思ったら、2人目だったんですよ。美奈さんの長女は3歳で、日中は幼稚園に預けているとか。家で赤ちゃんと2人きりだと、息が詰まるそうで、毎日、公園や地域センターに連れて行っていると言っていました」
美奈さんにとっては育児の先輩ママでもある綾子さん。家も近所のマンションだとわかり、遊びに行くことになった。
「知り合ったばかりの相手の家に行くのは躊躇しましたが、もう一人、地域センターで知り合った佳代子さん(34歳・仮名)も『一緒に行く』というので、お宅にお邪魔することにしたんです」
輸入食品などを扱う仕事をしている美奈さんは、仕事柄、手土産にはこだわりがあったそうだ。
「普段はデパートの地下街に行っていたのですが、子どもがいると、都心に出るのも大変なので、近くのショッピングモールで選ぶことに。カルディで、ママ用にデカフェの紅茶とクッキーを購入しました」
手土産を携え、綾子さんの自宅に遊びに行くと、上の娘と一緒にホットケーキを作っていたそうだ。
「娘さんはまだ3歳とあって、あちらこちらを手で触るんですよ。美奈子さんが『混ぜて』と言って渡したボールの中の生地も、手で直接グチャグチャと触っていて……普段は手作りのものもおいしくいただくんですが、なんとなく抵抗がありました」
なお、佳代子さんは手土産にシャトレーゼのロールケーキを持ってきていたという。
「こちらはお宅にお邪魔しているので文句は言えませんが、私たちの手土産と比較すると、どうしても『おもてなしのおやつが、手作りのホットケーキってのは、正直ないな……』と思ってしまったんですよね。あまりにも値段が不釣り合いというか……お茶も結局、私が持って行った紅茶を飲みました」
綾子さん宅への訪問に続き、今度は美奈さんの家に綾子さんと佳代子さんが子連れで遊びに来ることになったそうだ。
「綾子さんが家に呼んでくれたのは、最初からうちに遊びに来たかったからみたいです。向こうが住んでいるマンションよりも、うちのマンションが新しかったので、中が気になっていたんだとか」
今度はもてなす側となった美奈さん。少し遠いが、ベビーカーを押して20分ほどの場所にある店でスイーツを買って、おやつを用意していた。
「こちらはちゃんと、子ども用のプリンと大人用のケーキを準備していたんです。2人とも『おいしい』と喜んでくれたのでよかったですが、佳代子さんは手土産を持ってきてくれたものの、綾子さんからは何もなかったんですよね。エコバッグに入っていたスーパーで買ったらしき菓子は、自宅用みたいでした。独身時代も、友達の家に遊びに行くときには、ちょっとした手土産を持参していたので、綾子さんみたいな人は人生で初めて会いましたよ」
子連れでママ友の家に遊びに行く場合、「子どもが飲み物や食べ物をこぼしたりして、相手の家を汚してしまうことがある」と美奈さん。
「そういった“相手のお宅に迷惑をかける可能性”を踏まえて、やっぱり手土産は必須なのかなって。逆に家に招く際は、手土産を持ってきてくれることを前提に、それなりのおやつを用意すべきだと思っています。佳代子さんも同じ考えみたいですし、これってママ友付き合いの暗黙のルールなんじゃないでしょうか?」
ママの中には、生活スペースを見られるのが嫌なため、「ママ友を招かない」という主義の人もいるだろう。しかし、子どもが赤ちゃんの場合、ママ友の集まりは「大声で泣かれても大丈夫」な自宅で行われることが多い。
子どもは友達の家でも好き勝手遊ぶものだが、大人はやはり「人の家に行く=相手のパーソナルスペースに入る」という意識を持ち、節度ある行動をする必要がある。
また美奈さんも言っていたように、赤ちゃんや子どもは飲み物や食べ物をこぼしがちだし、棚に置いてあるものを触ったり、時に壊してしまうなど、予期せぬ行動が多い。ママ友の自宅に子連れで遊びに行く際は、やはり迷惑をかけることを見越して、手土産を持参していくべきだろう。
綾子さんは、子どもがママ友の家で迷惑をかけるのは、“お互い様”と思っているのかもしれないが、知り合って間もない美奈さんとその感覚を共有するのは難しいように思う。“お互い様”の感覚は一度取り払い、そもそも「自宅を使わせてもらっている」ということへの感謝も含め、相手が気兼ねしないような手土産を持っていくのがいいのではないだろうか。手土産を交わし合ううちに、招く側として用意すべきおやつの相場も見えてくる気がする。
当然、ママ友との関係性によりけりではあるが、「ママ友の自宅に遊びに行くときは手ぶらNG」は、暗黙のママ友ルールと捉えていたほうが、円滑な付き合いができると思う。